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本日のご納棺を担当させていただきます

 誰かに職業を問われた際、「納棺師をしています」と答えるとだいたい8割ぐらいの人には業種を思い浮かべてもらえないのですが、「おくりびと」という言葉を出すとだいたい8割ぐらいの人には「ああ、あれね!映画の…」とふんわりしたご返答がいただけます。
ちなみに私は「おくりびと」という言葉が嫌いです。
そのあたりは後述するとして…
 
 志鶕(しあん)と申します。納棺師をしています。
 
 キャリアはだいたい十年くらい、その間施行した件数(人数)は5000人以上、わりと大きめな都市のかなり忙しい業界大手会社の所属の中堅ポジション、ご遺体保全と処置全般、とくに口閉じと姿勢矯正には定評があり、グリーフ初期対応が得意分野です。自死、事故体など警察案件の修復経験も豊富にあります。

 たぶん私が今後また転職活動をするなら(するのか?)、上記のような内容が面接時の自己紹介になるのではないのと。
在籍期間、実績件数、社内ポジション以外の情報は自分で書いておいてなんですが、わけわからん以上でも以下でもないですね、これ。
ちなみに業界内の転職なら余裕で伝わるけど、自分が採用担当者ならこんなやつ絶対採用しない……絶対素直じゃないしめんどくさそう。
 2022年度の日本国内死亡者数は156万8961人(2022年人口動態統計月報年計(概数)厚生労働省より)でした。そのうち所謂「お葬式」として葬祭業が実績件数としてあげているのがだいたい50万件ぐらい。で、そのうち「湯灌・納棺」をしてるであろう葬儀が、地域差はかなりあるけどだいたい三分の一ぐらいと考えたら年間17万弱件ぐらい?あれ?意外に少ないなと思ったけど所謂「葬儀」に含まれない「直葬」の納棺も行うことがあるから、それを含めたら年間30万件程度の湯灌や納棺を行う人たちが全国に散らばって、「湯灌師・納棺師」という立場で日々ご遺体と向き合う仕事をしています。
かくいう私もその一人であるわけですが。
 ただ、職業人口としてはものすごく少ない上にお身内に不幸がなければまず出会う機会のない職種なので、実際、葬儀の現場で私たちがどんなことをしているかご存じない方のほうが世の中には多いのではないかと。
 正直はぐれメタルに出会う確率のが絶対高そう……

このノートではそんなレアキャラ「納棺師」の仕事の内容や、「葬儀」の現状、人が亡くなると(物理的に)どうなるのか、人が亡くなったとき身内は(葬儀社が来る前に)何をしたらいいのかなどの納棺師から発信できるエンディングケアのヒントの周知、そしてこれまでの経験から今後次世代を担う納棺師のため、また自分自身の整理や後進育成のためのご遺体保全管理、修復処置、メイクや着せ替え特別処置などの実務と知識、グリーフケアに関しての実例を交えたマニュアル(有料記事となります)などをのんびり綴っていけたらいいなと思っています。

 「おくりびと」という言葉が嫌いだと最初に書きました。
あなたは「おくりびと」という言葉にどんなイメージを持ちますか?
大切な人を「送る」のはいったい誰なのでしょう?
変わり果てたご遺体に触れる私たちは、実はほんのちょっぴり「魔法」が使えます。志しを正しく持ち合わせている全国のどの納棺師もその「魔法」を使って「送る」準備を整えるお手伝いをすることができます。
「おくる」のはあくまでもその方の人生を共に歩んできた、その方にとっての大切なあなたなのではないかと。
そういう意味で私たちが「おくりびと」を名乗る違和感を持ちながら、私はこの仕事を続けています。
あくまでお手伝いをする立場、謙虚さを忘れてはいけない立場であるので。
もしこのノートが、誰かが誰かの大切な方を送るときのほんの少しの安心材料になったらいいなと、文字でもほんのちょっぴり「魔法」が効いたらいいなと願っています。 


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