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サバイバーズ・ギルト&シェイム

@紀伊國屋ホール 161126

そんなに行くつもりなかったんですが、知人が片桐仁トークショーつき回を観に行った、とブログに書いてて、急にやっぱ行くか、という気になり、当日券で行ってきました。

紀伊國屋ホールじたいが久しぶりすぎて、こんなに狭かったっけ?と思ってしまった。中高生時代には早稲田のテントとかで学生演劇をみまくってたので、当時の私にとっての紀伊國屋ホールは、下北のスズナリやら本多からさらに一歩メジャーに進んだ劇団が公演をうつ、「でっかい劇場」だったのです。横アリとかドームのライブに慣れてしまうと驚くほど小さい…。でも階段上がっていく感じは懐かしかった。

当日券予約システムなるものがあり、並ばなくてもスマホひとつで券が予約できるの便利。開演3時間前まで使えます。

残念ながら鴻上尚史もヤキがまわったのだろうか、というのが最初の感想でした。ここまで懇切丁寧にわかりやすくやらないと、もう小劇場演劇というのは成り立たないのか。いやいやそんなこともあるまいに。

もちろん俳優さんは頑張ってたし、流石に物語は破綻なく手堅くまとまっていて、小劇場らしいお約束も多数散りばめられ、ラーメンズ本公演のない中、片桐仁をナマで見られた、ということにある程度満足はしたけれど、もう二度と遊◎機械全自動シアターとか3◯◯とか秘宝零番館とか青い鳥とか、あんなようなものは見られないんだな…とついセンチな気分になってしまった。適応力の失せた中高年の典型的な反応です。

観劇後にキャストのプロフィールをみて、ある程度は納得した。これはおそらく美男美女揃いの若手俳優さんを目当てに、生まれて初めて(または2.5次元ミュージカル以外では初めて)小劇場演劇を観ます、という感じの客層を想定した舞台なのだろう。まずは若いお客さんに「感動」と「また来たい」という思いを、ということなんだろうなぁ。その割にはチケット高いが(学割はあります)。

第三舞台が現役だった時代も、ハコがデカくなるにつれ、なんにでも笑いシリアスなパートの切り替えにも気づけない客が増えて、芝居もどんどん生温くなっていったけど、あれは「すでに死んだものだけが大衆化される」というフェーズの物足りなさであって、そもそもターゲット層が違うんですね…というのとは少しニュアンスが違う。

とにかく演劇どころかお笑いや落語のような娯楽もテレビでしか見たことない、という若い観客にリピートしてもらえるようでないと、今後の小劇場は成り立たない。そのためには演劇的なものを捨てテレビ的表現に頼ってでも、ビギナーに「感動」してもらわねばならない。「ついてこられる奴だけついてこい」というスピードではもう走れない、ということなのだろうな。厳しい時代ではある。

ただまあその分、生まれて初めて舞台をみるお客さんにもとっつきやすく、かつ小劇場的な雰囲気も味わえ、適度に現代的な問題も妊みつつ論争にはさせない、バランスのよい舞台ではあったと思います。

にしても、メジャーな俳優を使いながらもずっと第一線にいる野田秀樹は偉いと思ってしまったのも正直なところではあります。かつての第三舞台ファンとしては残念だけど、野田秀樹と鴻上尚史ではやはり格が違う。東大と早稲田の差なのか。んなことはないと思うが…

私にとっての小劇場演劇体験は、シティボーイズの最終公演と共に終わったのだろう。「ついてこられる奴だけついて来い」的なものを必死で追いかけた頃のように、必死で背伸びして食らいつかねばならないような演劇は、もう長いこと見ていない。過去数年、自分がエンタメとして完成している大規模な舞台とか、伝統芸能にばかり走っているのはそのせいなんだろうな。

つまるところ、私はおばさんになったのだな、と思う。私が中高生の頃に夢中になっていた小劇場演劇だって、その前の蜷川幸雄とか唐十郎とかがバーンと出てきた時代を経験した人たちにとっては生温いの極みだったろうし。

客席は若者とかつての第三舞台ファンであろう私のようなオッさんおばさん半々くらい。これに8500円は高すぎだよと思ったが、我々年寄りが貢いで学割の子たちが半額で見られるなら演劇の神様へのお布施のようなもの、と考えることにします。客が育たなければエッジィな舞台もやる場所を失うばかりだし。

あれこれ言いましたが、南沢奈央ちゃんはたいへんいい女優さんでした。彼女は舞台どんどんやるといい気がする。小林涼介くんはもう少し体幹とか鍛えたほうがいいかな…頑張ってたけど。伊礼彼方くんはイケメンすぎて役柄的に損をするタチだと思うが、ミュージカルの洋モノもはまるだろうし、ガチガチのストレートプレイで見てみたいなと思いました。大高・長野の旧第三舞台組は流石の芸達者で、この2人がメリハリつけることで学芸会にならずに済んでいた。

そして破壊神、片桐仁はとにかく好き。大好き。ラーメンズの本公演、もうないのかなぁ。小林賢太郎もすっかりされおつなマイマーになっちゃって、なんだか一人舞台も始めた頃の衝撃はなくなっちゃったしなぁ。とまたセンチになる四十路なのだった。そのうちクドカンのプロデュースものでも、頑張ってチケットとってみるかな。

#演劇 #サバイバーズギルトアンドシェイム #第三舞台 #紀伊國屋ホール #片桐仁 #長野里美 #大高洋夫 #鴻上尚史 #舞台

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