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枯れ専向けヤクザ映画:アウトレイジ最終章みてきた。

このことろ、無茶なスケジュールの仕事が入らないお陰で、観たい映画を着々と消化しています。先週公開したたけしのコレを観てきました。

なんじゃこの「なりきりアウトレイジキャンペーン」って。

個人的に思っている『3部作の法則』というのがあって、パート1が売れ、ちょっぴりツウ向け(暗め)のパート2が出た後に作られるパート3というのは、総じて駄作率が高い、というものですが(ゴッドファーザーしかり、スター・ウォーズしかり)、その予測にもかかわらず劇場まで観に行ったのは、わりと好きな大森南朋とピエール瀧が出るからでした。

※以下ネタバレあり注意※

が、蓋を開けてみると、基本的にひたすら塩見三省と西田敏行を愛でる枯れ専向けヤクザ映画でした。やっぱり基本的な演技力の差は大きい…

大森南朋もピエール瀧も、雰囲気のある役者さんなんですが、引き出しの量がぜんぜん違った。西田敏行も脂っ気が抜けてよくなりましたね。私は塩見三省のヤクザなら2時間観てても飽きない(なんなら終始無言でもいい)ので、そういう意味ではとても満足したのですが。

でも「たけしの映画」としてみた場合には、なんかぬるかったな…というのが正直な感想です。

まず、撮影する人が変わったのかな?と思うぐらい絵が普通だった。思わずあとで確認しちゃったけど、これまでと撮影監督変わってないんだよなぁ…デジタル率も低いっていうし。撮影期間がタイトだったのかな?とも思いましたが、どうも「部分的にみただけで、色味とか構図でたけし映画っぽいとわかる」ような感じがあまり感じられなくて、逆に驚くほどだった。

絵面だけじゃなく、演出も。私はたけしの映画だと「3-4×10月」とかが好きなんですが(あれのガダルカナルタカはすごく良かった)、初期のたけし映画って、暴力シーンの間合いに独特なものがあって、それだけでも「あ、たけしの映画だ」とすぐにわかるような部分がありました。

あの夏、いちばん静かな海」とか「キッズリターン」あたりが典型的な気がしますが、唐突で「え、今のは?」ってなるような暴力。それと、どの映画においても、物語とか、ある映像シークエンスの一番のクライマックスをはぐらかすようなところがあって、そのズラし方が好きだったんだけど、今回の映画って驚くほどその「居心地の悪さ」がなかった。話の筋もめちゃくちゃわかりやすいし(しかも過去の2作見てなくても、単体で見られる)。

それはそれで「初めて観る人にも優しい」映画ということで、これ見て一作目二作目に興味持つ人が出てもいいんだし、そういう点では観客フレンドリーな上に続き物としても楽しめる手堅い作品ではあると思うのですが、逆に言えば、かなりサラッと見れてしまって、引っかかるところがない普通の映画だった。

あ、これたけしっぽいな、っていうのは、強いて言えば茶髪の鉄砲玉の子のシーンぐらい。それもそれほどくっきりした印象は残らなかった。

大杉漣やピエール瀧の殺されるシーンも、ウェットというか、ちゃんと盛り上がってて普通だったなぁ…昔のたけしだったら、大杉漣をホワイトアウトさせる感じで撮ったりしたろうか?ラストも予想ついちゃって、置いてきぼりにされるとこがなくて。「私をもっと置いてきぼりにしてよ!」っていうのも変な要求かも知れないんですが…

私がヤクザ映画に求めてるのって、基本的にゴッドファーザーのパート2だと思うんですよね。あれのフレドが消されるシーンが至高だと思ってて、あれ初めて見たときの衝撃をまた味わってみたいのですが、なかなかいい出会いがないです。

あと残念だったのは、旧作の加瀬亮クラスの演技力ある若手や中堅のバイプレイヤー、印象深い新人の起用が目立たなかったこと。中堅は前作までで目ぼしい俳優さんをだいたい(役柄上)殺しちゃった、という話もありますが…(汗)

でもまだまだ、クセのあるいい役者はいると思うけどなぁ。舞台方面とか。個人的に津田寛治好きだから、もっと出番欲しかったー。せっかく済州島ロケしてるんだし、日本ではあまり知られてない韓国の俳優さんとかをもうちょい大きく使えば、もっと面白かったかも。あっちはアクションものの映画多いから動ける役者さんも多いだろうし。

たけしに限らないけど、ある程度ネームバリューで稼げる映画監督は、あれ、誰だろ?って後から調べて青田買いしたくなるような新人をもっと使おうよ…と思うのです。是枝組なんかも同じ役者ばかり使ってるし。

娯楽系の作品でも、新人若手枠をエグザイルやジャニーズだけで埋めてたら、撮れるもの制限されちゃうじゃないですか。化ける子もいるので、一概にアイドルがダメとは言いませんが、「誰も知らない」の柳楽優弥とか「キッズリターン」の安藤政信みたいに無名の子をブレイクさせる気合いが欲しいな。

ついつい注文ばかり並べてしまいましたが、お爺さん連中はいいです。岸部一徳の食えないタヌキっぷりは相変わらずだし、白竜も気づけば高齢枠か…。『大友』もたけし自身も年取ったよね。「俺だって考えてるんだよ」なんていう台詞が出てくるんだもん。私が何となくモヤってる部分も、監督としてのたけしが老けたという一言に尽きるのかも知れない。“大御所”や“老兵”になるには、ちと早すぎる気はしますが。

役職名とはいえ「若頭」が西田敏行っていうあたり、現実社会のヤクザや暴走族の高齢化問題も反映している現代的な映画とも言えそう。たけしの映画の中ではとっつきやすい作品なので、特に枯れ専の方にオススメです。血糊に免疫ある方は是非劇場でご覧ください。本職の方が見にいらしてることもあるようですが、私が観に行った日はレディースデーということもあってか、周りはみんなカタギの人みたいでした(^_^;)

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