【読書感想文#3-1】人生を豊かにしたい人のための世界遺産を読んで~前編~
皆様いかがお過ごしでしょうか?
世界遺産検定の試験が終わってから、暫く経っておりました。
細く長く世界遺産についての見識を身に着け続けるために、
面白い本がないが探していたら、こんな本を見つけたので
皆様に紹介したいと思います。
NPO法人世界遺産アカデミー主任研究員宮澤光さんが書いた『人生を豊かにしたい人のための世界遺産』という本です。
前書きは昨今の新型コロナウィルス感染の社会情勢で目にしてきたことと似たようなことが昔もあったのだと、今世界遺産に登録されているスポットを引き合いに出して説明しております。
ここではドブロブニクのラザレットが例に出ておりますが、感染症と世界遺産という切り口だと、日本では有名な奈良の東大寺の大仏を思い浮かべるのではないでしょうか?
奈良時代、当時の聖武天皇が奈良の東大寺と盧舎那仏(奈良の大仏)を建立した背景には、そのころに日本で大流行した天然痘の影響によるものです。(修学旅行等で聞いたことがある人もいるでしょう)
735年から737年にかけて大流行した天然痘によって、当時の日本の人口の4分の1が亡くなり、社会が混乱し、人々が不安に襲われておりました。
その人々の不安を収めるために、人々が寺社へ寄進するなどでにより、人々の拠り所となる盧舎那仏(奈良の大仏)を作ったといわれております。
ただ大仏を作っただけで病は収まることがなく、私財や労力を盧舎那仏(大仏)建立に捧げたことで、天然痘の被害から立ち直っていなかった農民たちは貧しさを増してしまいます。また当時聖武天皇が始めた墾田永年私財法も、その後の荘園を生み出すきっかけとなり、開墾された土地が増えて農作物の生産量が増えた一方で、人々の貧富の差が大きくなったということで良い面も悪い面もあります。
本の後半で登場するバンベルクの旧市街は新型コロナウィルスに感染した人を非難していた場面と、ペストが流行し閉塞した社会で起きた魔女狩りを重ねて語っています。(詳しい内容は本を読んでみてください)
社会が閉塞的になり、人々が不安になると、神仏にすがろうとすることや、弱い立場にいる人を社会から排除しようとすることは、形を変えて今でもみられることでしょう。世界遺産はこうした今の我々に向けたメッセージを持っているのだと思うのです。
今目の前に起きている事柄や社会事象は、形は違えど過去にも似たようなことがあって、それを昔の人々が乗り越えてきたことで今の自分たちがいるのだと思います。例に出ていたドブロブニクのラザレットや奈良の大仏、バンベルクの旧市街のように今も残っている建造物・及びその歴史的経緯が今の問題を解くときの参考になることや今の我々に向けた教訓があるのだと教えてくれているのです。
世界遺産は過去から現在・未来へ向けたメッセージを持っているのだと思うことを改めて認識しました。
これから様々な世界遺産を目にする機会があるときに、どのようなことを今の我々に伝えようとしているのだろうという目で見てみるのもさらに深く世界遺産を知ることができるのは思います。
自分もそんな見方で、これから訪れる世界遺産を見ていきたいと思います。
本日も読んでいただきありがとうございました。後編では本で取り上げてきた「多様性・お金・脅威」について感じたことを書いていこうと思います。
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