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2020年夏:Netflixで面白かったドキュメンタリー3本。

アメリカに住んで10年。2020年11月の大統領選が近づいてきた今、見てよかった、と思うNetflixの3本のドキュメンタリーをご紹介したい。アメリカのBlackLivesMatterや、民主党優勢で進んでいる2020年の大統領選挙などの背景となるストーリー、いずれも、キーワードは「マイノリティ」「女性」「パワー」。


数日前の民主党大会では、ジョー・バイデン大統領候補が副大統領候補に、カマラ・ハリスさん(お母さんはインド系、お父さんはジャマイカ系の移民)を指名した。初の女性副大統領が生まれるかもしれない2020年。

いずれも作られたのは数年前なのだが、ああ、これが今につながっているのかと思う内容の力作ばかりです!


1 「13th 憲法修正第13条」

2016年に作られた、「13th 憲法修正第13条」。
Black Lives Matter特集でフィーチャーされなおした1本。
アメリカの憲法13条は、奴隷制の廃止を定めたが、そこには例外がある。
それがCriminal (犯罪者)。アフリカから奴隷として連れた来られた黒人たちが、今なお形を変えて搾取され続けている実態を掘り下げた一本。

黒人=怖い、犯罪者、というイメージがいかに長きにわたってアメリカ国内で意図的に作られ、黒人をターゲットとした「大量投獄」が行われているか。そして大規模な民間刑務所ビジネス、受刑者を安い労働力として搾取する大企業、その大企業からの献金を受ける歴代の大統領や政治家たち、という構造が描かれている。Black Lives Matter運動の際に語られた「Systemic discrimination構造的差別」「Systemic Racism 構造的人種差別」という言葉の意味を私はよくわかっていなかった。この1本を見たから分かるということではないけど、見ることが出来て、知ることが出来て良かった。

ちなみにアメリカの人口は全世界5%だが、世界の受刑者のうち25%がアメリカにいる。
一生のうちに投獄される可能性は白人男性の17人に1人、黒人男性は3人に1人。
アメリカの人口に占める黒人男性比率は6.5%だが、受刑者のうち40%を黒人男性が占める。

みたら暗澹たる気持ちになる一本なので、心と体力に余裕のある日に見てください。


2 「Knock Down the House レボリューション、米国議会に挑んだ女性たち」


2018年制作。「Knock Down the House レボリューション、米国議会に挑んだ女性たち。」2018年の米国議員選挙に出馬した529人の女性候補者のうちの、4人を追いかけたドキュメンタリー。別々の州で、それぞれの理由で政治家を目指し、長年その地区で選出されてきた大物政治家に挑む。

もっともハイライトされるのは、NY14区から出馬したアレキサンドラ・オカシオ・コルテス。29歳、最年少で14年対抗馬のいなかった議員を破って、初当選した。SNSを駆使し、大企業献金を受けとらない草の根運動で、勝ったワーキングクラスの若き政治家。

そのほかの3人の女性も、安定した仕事をなげうったり、娘を無くした痛みを抱えたりしながら、「使命感」だけで、パワフルな現役議員たちに挑む。

普通にまじめに働くだけでは、まともな暮らしができないという不満。安心して健康に暮らすことすらままならない不安。それに対して世界多発的に起きている動き。2018年のこのドキュメンタリーから2年。2020年、さらに大きい変化が今年はあるに違いない。


3 「Becoming マイ・ストーリー」

前ファーストレディー、ミシェル・オバマの自叙伝「Becoming」のプロモーションツアーに密着したドキュメンタリー。彼女も典型的なワーキングクラスからハーバードロースクールを出て、弁護士や医療機関の理事などで成功を収めていた超優秀な人。

とにかく、ミシェルの人柄、チャーム、聡明さ、そして若い世代や女性やマイノリティに対して、「自分を信じて、あなたならやれる」とエンパワーする姿に、勇気をもらえる一作。本のプロモーション密着ドキュメンタリーをみて、まんまとKindleで本も買ってしまった。

冒頭に書いた2020年の民主党大会の初日でも印象的なスピーチをしたミシェル。

オバマ大統領が目指したもの、そしてオバマ大統領時代の副大統領であったジョー・バイデンが今回大統領になったら、引き続き目指すもの。それは公共性や公平性が高く、広く人々を支える政府。
バイデン氏は、すでに富裕層への増税(トランプ政権で引き下げた富裕層への21%の税率を28%に引き上げること)を公約に盛り込み、これにより財源を確保するとしている。

すでにCOVID19対策で、220兆円を超える支援策を実施しているアメリカ政府。だれがなっても、ものすごくここからの数年は大変になるのが明白。


二極化、対立が進む中で、高い理想を掲げていても、主流とアンチ、推進派と反対派が延々やり合って物事が進まない。日本を見ても、アメリカをみても、そんな風に見える。けど、人間ってそんなにあほなんだろうか。

既得権益まみれの世代が引退するころには、今のアレキサンドラ・オカシオ・コルテス世代が真ん中に出てきて、もっとバランスの取れた、無駄のない世界をつくれるようになりたい。


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