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人間の証と決断、そして暇と退屈の行く末にある「余白」 "暇と退屈の倫理学5/5"

最後に「決断した」と感じたのはいつですか?

 これまで4回にわたり、暇と退屈の定義、歴史的背景、哲学的視点、現代社会における再評価、消費社会の疎外論、そして人間学的視点から探求してきました。最後となる第5部では、「決断することは人間の証か?」という暇と退屈の倫理学の第6章における問いを通じて、「暇」と「退屈」が私たちの生活にどのように影響を与え、どのようにしてこれらを克服し、豊かな人生を送るための決断を下すことができるかを考察します。一見関係がないように思える「決断」と「暇」そして「退屈」との関係性を知ることができるようになるでしょう。

 第4部での環世界の話は「暇と退屈の倫理学」における一番本質に近い部分に触れている部分だと思いますので、まだ触れていない方は是非ご一読ください…!

決断と人間の本質

 暇と退屈は、人間が直面する日常的な感情ですが、これらをどのように扱うかが私たちの人生の質を大きく左右することは、これまでの中で皆さんも理解してきたと思います。また人生において決断するということは、人間の自由意志と深く関わっており、自己実現への道を切り開く重要な行為です。哲学者ジャン=ポール・サルトルは、自由と選択の重みを強調し、私たちが自分の選択によって自己を形作る存在であると述べました。決断には重みと責任も伴うものです。そして私たちが退屈や暇を感じたとき、その状態をどう利用するかは私たちの決断次第です。

暇と退屈からの決断

 退屈や暇を感じる瞬間は、私たちが自分の人生を見つめ直し、新しい方向性を決定する貴重な機会です。このような時に下す決断は、自己成長や創造性の発揮に繋がることがあります。例えば、アルベルト・アインシュタインが相対性理論の着想を得たのは、特に忙しくない時期でした。また、アイザック・ニュートンも、ペストの流行で大学が閉鎖された時期に万有引力の法則を発見しました。これらの例は、暇や退屈を創造的な決断に変える力を示しています。前回触れたコロナ禍の例においても、皆さん新しい何かを始める、もしくは止めるといった決断を自然としてきた人も多いのではないでしょうか。

暇と退屈の倫理的意義

 暇と退屈は、単なるネガティブな感情ではなく、私たちの存在を深く考えさせる重要な機会です。退屈を感じることで、私たちは自己の存在や生き方について内省し、新たな価値観や目標を見出すことができます。これにより、より豊かで充実した人生を送るための基盤を築くことができます。

決断のプロセス

 暇と退屈を克服し、豊かな人生を送るためには、以下のプロセスが重要です。

  1. 内省と自己理解

    • 自分自身の考えや感情を振り返り、何が本当に重要かを見極める時間を持つことが必要です。これにより、自己理解が深まり、次の選択肢の検討のステップへの準備が整います。

  2. 情報収集と選択肢の検討

    • 異なる選択肢を検討し、それぞれの利点と欠点を理解することで、最良の決断を下すための材料を集めます。これまで登場した哲学者の時代に比べると、現代はこのステップが容易になってきたと言えるでしょう。

  3. 意思決定と行動

    • 十分な情報と自己理解に基づいて、具体的な行動計画を立て、それを実行に移します。このプロセスで重要なのは、完璧な選択を求めるのではなく、柔軟に対応しながら進むことです。

  4. 結果の評価と適応

    • 行動の結果を評価し、必要に応じて軌道修正を行います。これにより、継続的な成長と改善が可能となります。ビジネスでいうところのPDCAのように思えると思いますが、暇と退屈の倫理学においては、ここまでのステップで「決断を下す」という行為それ自体に価値が非常にあると考えられています。

これまでの考察を踏まえて、暇と退屈の倫理学を実践するための具体的な方法とはどのようなものが考えられるでしょうか?凡庸な例を提示してみるので、皆さんそれぞれ考えてみてください。(私はフィルムカメラで環世界を覗き、切り取り、想像することで日々決断の瞬間を感じています。皆さんも具体的な方法があれば是非コメントしてみてください。)

  • デジタルデトックス

    • よく聞く話ではありますが、意図的にデジタルデバイスから離れ、自然の中で過ごす時間を増やすことで、心身のリフレッシュを図り、自己反省の機会を得られます。

  • 新しい趣味やスキルの習得

    • 退屈を感じるときは、新しい趣味やスキルを学ぶ絶好の機会です。これにより、心が刺激され、充実した時間を過ごすことができると言われています。何もできない、悔しいという感情から日々できることが増えるようになる中で、退屈を感じる方が難しいかもしれません。

  • 瞑想やマインドフルネスの実践

    • 瞑想やマインドフルネスを取り入れることで、心を落ち着かせ、現在の瞬間に集中する習慣を身につけます。これらは仕事で退屈を感じている人にこそ有効な方法として、少し前から流行っている手法です。

  • 創造的な活動

    • アート、音楽、執筆などの創作活動に取り組むことで、退屈な時間を有意義に変え、自己成長や創造性を高めます。創造的、というと少しハードルが高く感じるかもしれませんが、まずは何かをつくるということを決断する、というその行為においてこそ意味があります。

\n (yohaku Co., Ltd.)についての紹介

 暇と退屈は、単なるネガティブな感情ではなく、私たちの生活において重要な役割を果たしています。これらの感覚を積極的に活用することで、自己成長や創造性を高め、より豊かな人生を送ることができるでしょう。

決断について、そして暇と退屈の捉え方について。これらを自分一人で考えること、向き合うことは必要でもありますが同時に困難でもあります。その時には誰かと話してみること、こうした誰かのエクリチュールと向き合うこと、そうした機会も必要になるでしょう。今この記事を読むことを「決断」したあなたは、その時点で「退屈」さから脱する人生を歩み始めたと言えるのかもしれません。

 これまでの5部にわたる考察を通じて、暇と退屈の本質とその価値を理解し、日常生活での実践を通じて、より充実した人生を追求していきましょう。その一助となるように、私たちyohakuではコーチングなどのサービスを提供しています。ご興味がある方は是非サイトも覗いてみてください。

 次回はセネカが記した「人生(生)の短さについて」を取り上げていく予定です。ここまで冗長な文に付き合っていただきありがとうございます。こうした時間も「余白」として楽しめる人が増えることを願っています。

次回予告!


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