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国籍なんちゅうのはただの紙きれだー「夢」の哲学、孫正義を中心に(1/3)

「今まで自分が悩んできた国籍だとか人種だとか同じように悩んでいる人達がいっぱいおる。俺は立派な事業家になってみせて孫正義の名前で、みんな人間は一緒だと証明してみせる。」

孫正義はソフトバンクグループの創業者である。彼が何よりも大切にしてきたのは「夢」だった。常に大きな夢を抱き、その実現に向けて果敢にチャレンジし続けることを説いた。

孫氏の「夢」重視の姿勢は、苦しい生い立ちの中から育まれていった。在日韓国人実業家の二男として佐賀県鳥栖市の朝鮮人集落に生まれ、4人兄弟の中で育った。いわゆる通名は「安本正義」。やがて孫氏は韓国出身であることを隠すようになった。大好きだったおばあちゃんのことを、韓国人であるという理由だけで避けるようになった。

しかし、孫氏は「竜馬がゆく」を読み、目からウロコが落ちたという。人種などのつまらないことで悩んでいた自分が情けなく思えたのだという。

アメリカへの留学を決意した孫氏は留学に際し、親戚から反対を受ける。孫氏の父親が病に倒れ入院していたからだ。「お前のエゴのために行くのか」と言われた。しかし孫氏は、家族を支えたいから行くのだと言い返した。そして、自分と同じように国籍や人種で悩んでいる人たちがたくさんいることを伝え、立派な事業家になって「孫正義」の名前で、みんな人間は一緒だと証明してみせると心に誓ったのだ。

国籍なんちゅうのはただの紙きれだ。本当はどんなバックグラウンドであれ、みんな同じ人間だ。みんな1人の人間として尊いんだ。みんな同じ可能性、夢を実現できる可能性を持っているんだ。誰々が優れていて、何々国籍だと劣っている? そんなことはないんだということを、俺は絶対に証明してみせる。自分の人生をかけて証明をしてみせる

どうすれば人々に夢と可能性を与えられるか。それが孫正義の夢になったといえよう。  

1981年、孫はこの夢を実現すべく、ソフトウェア販売の会社を設立する。その後、携帯電話運営会社への転身、ヤフー買収と次々と大きなビジネスに乗り出し、世界的な IT 企業グループを築き上げていった。

孫正義の「夢の哲学」は、「大きな夢を持つ/高い山に登る」と「夢を語る」の2つの要素から成る。

まず「大きな夢を持つ」ことが重要だと説いた。小さな目標なら誰でも立てられる。でも大きな夢は勇気がいる。孫正義は高い志を持つことを常に呼びかけた。

また、その夢を人々に語り続けることも欠かせないと考えた。夢を語ることで新しい可能性が生まれるのだ。彼は熱心にビジョンを伝え続けた。

他の経営者においても「夢」は重要なテーマだった。優れた経営者ほど、高い志と夢を掲げる傾向にあった。

しかし、孫正義の「夢の哲学」が際立つのは、その「夢」の大きさと実現へのこだわりである。現実を超えた大きな夢を持ち、その実現の可能性を熱心に語り続ける姿勢に、他者を力強く鼓舞する力があった。

しかし一方で、孫の「夢」追求のこだわりは、単なる独りよがりな願望ではない。貧しい子供時代の体験から、「多くの人々に夢と可能性を与えたい」という強い使命感に裏付けられている。それが、彼の「夢の哲学」の原点なのだ。  

「自分の持った夢に自分の人生はおおむね比例する」と孫は言う。確かにその通りだ。夢を持つことで、人は常に高みを目指すことができる。そして周囲を夢の渦に巻き込んでいく力さえ生まれる。

競争がグローバル化し、テクノロジーが日進月歩で発達する中、孫正義が説く「夢の哲学」は、今こそ必要とされているのではないだろうか。際限のない夢を抱き、その実現を熱く語り続ける。そこに、真の経営者の資質があると言えるだろう。

夢は語らなければならい  お金は追いかければ逃げていく。夢を追いかけたらお金はついてくる


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