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夏目漱石の「個人主義」と「功利主義」を人権の観点から分析・考察する

―はじめに―

 キリスト教の「聖書」には、現代の人権思想の起源の多くを見出すことができます。後述します通り人権には四つの本質がありますが、このうちに「個人の権利(個人主義)」の本質が含まれます。その個人主義に対立するのが「全体主義」です。本記事では、夏目漱石の個人主義的思考と功利主義の関連から両者を人権の観点から考察してみます。少し長いですがお付き合いください⛰

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1.夏目漱石の個人主義とは…?

 まず、夏目は、大学卒業後に英語教師として働き、英国に留学するまでの自らの経験から、

自己は、何か一つのきっかけから自らを変えたいと渇望するが、自らそのきっかけを掴もうとはしない矛盾した存在」である

自分の存在価値は、自分ではなく、権威ある他者の評価により決定している」

ことを指摘しました(鋭い指摘)。さらに漱石は、

他者の評価や自分のこだわりに左右される自己は、生涯不愉快かつ不安定なものとなってしまうため、自らの評価と考察により「自分が今後進むべき道(個性)」を自分の手で掴み、伸ばすことが自らの「幸福」につながる

と主張しました。

 しかし同時に、漱石は以下のようにも主張しました。

自分の個性を無制限に伸ばすことは、利己主義に陥り、他者の個性を抑圧することにつながるため、他者の個性も同様に尊重することが必要

自らが有する権力や金力も、本来それぞれ平等な人間を上下関係に組み込む危険性があるため、それらの行使には責任を持つべき

 漱石は、他者の個性を侵害しない範囲で、自分の個性を伸ばす人間としての在り方を「道義上の個人主義」と表現しましたが、戦争など国家を強く意識する時には、人間は本来個人主義と対立する国家主義にもなりうると主張しました。

以上のように、夏目は、個人主義という概念を中心として人間の性質とあるべき姿を考察しました。

2.『人権』から考察する『道義上の個人主義』と『功利主義』

 漱石の「個性の発展が幸福につながる」という主張は、同時期に「功利主義」を提唱したベンサム、ミル(イギリス)の主張と関連すると言えます。

また、「自分と他者の個性の衝突を避ける必要がある」という主張は、生来自由な個人間の「人権」の衝突を調整する「公共の福祉」の考え方に共通点を見出すことができます。

そこで私は、夏目の「道義上の個人主義」とベンサム、ミルの「功利主義」を「人権の本質」という観点から考察してみます。

 ハンス・マイアー(2002)によると、人権の本質は、「包括性」「個人の権利」「前国家的権利」「国家に対する請求権」の四つである。

 まず、ベンサムの量的功利主義は「包括性」を十分に保証している考えではありませんでした。彼は、できる限り多くの関係者の快楽が増大すること(最大多数の最大幸福の法則)を善としましたが、この考えは、多数派の下で人権を侵害され不利益を被る少数派の存在を無視していると言えます。

 それに対して漱石は、「自己の個性の発展を仕遂げようと思うならば、同時に他人の個性も尊重しなければならない(夏目,1978,p.16)」と述べ、ミルは反対に「他者危害の原則」として「他者の利益に悪影響を与えない限り、自由に行動する権利がある」と主張しました。

 したがって、漱石とミルはベンサムの人権の包括性の欠如を批判的に乗り越えたと言えるでしょう。

 次に「個人としての権利」と「前国家的権利」は、功利主義が軽視し、夏目が特に重視した点です。

 いずれの功利主義者も「社会全体」の幸福を量的あるいは質的に実現することを理想としました。つまり、社会を前提とし、人間を個人としてあまり把握していませんでした。

一方、漱石は、

「個人の自由は先刻お話した個性の発展上極めて必要なものであって、その個性の発展がまたあなたがたの幸福に非常な関係を及ぼす」(p.18)

と表現し、人間を個人として最大限尊重していることが分かります。
 「国家への請求権」は逆に功利主義が重視し、夏目は重要視しなかった点と言えるでしょう。

 ベンサム、ミルはそれぞれ普通選挙・秘密投票制、女性や労働者の参政権獲得を目指して運動していました。これらの運動には社会全体の幸福を実現するために、国家に要求を行う功利主義の考え方が見られます。

 その一方で漱石は、「日本は貧乏である上に国が小さいことから不安定な状態であり、いつ危険な状態に陥ってもおかしくない」と述べました。そのため、日本国の存亡に関わる際に国民が自らの自由は投げ捨て、国家のために尽くそうとすることは極めて自然であると主張しました。

 夏目は、緊急事態ではない日常において、国家主義に傾倒する必要はないが、功利主義と比較すると、国民の人権を護るための機関として国家を捉えてはいないことが分かります。

―最後に―

 本記事では、個人の幸福という要素から、夏目が主張する「道義上の個人主義」と「功利主義」の間に関連性を見出し、さらに両者を「人権」という観点から特徴などを考察しました。

 道義上の個人主義は、「包括性」と「前国家的権利」、「個人としての権利」に、功利主義は「国家への請求権」に重きを置いていたことが分かります。いずれも四つの本質を保証しているものとは言えないが、当時の社会を冷静に分析した上で意見を主張していたため、両者の考えに優劣をつけることはできないでしょう。

 しかし、「日本とイギリスは結果的に戦争を行い、人権を侵害した」という事実からは、人権の四つの本質が一つでも保証されていないならば、人権侵害につながってしまうということが実感できます。あらゆる主義・主張を人権の観点から考察すると、新たな知見を得ると同時に、人権の重要性が分かってくるかもしれません。様々な主義・主張を人権の本質という観点から冷静に考察する姿勢は「ワザ」として実践すると社会の見え方も変わってくるかもしれませんね。

最後まで読んで下さりありがとうございました📚
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