見出し画像

ロックダウン中のシドニーで暮らす

僕が暮らすシドニーのロックダウン(都市封鎖)が始まり、早くも1カ月半。ゆるい行動範囲の制限から、ゆっくりと、しかし確実に制限は厳しくなりつつある。というのも、ロックダウンを継続しているにも関わらず、新型コロナウイルスの感染は縮小どころかじわりじわりと拡大しているからだ。

ロックダウンでも増える感染者数

始めは新規感染者数が10人前後の日が続き、それがあっという間に30、50、気づけば100、200、そして数日前に300人を超えた。シドニーを州都とするニューサウスウェールズ(NSW)州の話だ。今、他州では3桁の感染者を記録しているところはない。

シドニーの僕が住むエリアのロックダウンでは、現在はエッセンシャル(食品の買い出し、医療、運動など)の外出のみが許可され、しかも買い出しは1日1回、家庭から1人だけ、所定の距離までという条件つきで、オフィスワーカーは在宅勤務、子供はもちろんオンライン学習という状況だ。そして、外食産業や小売はしばし閉店(持ち帰りの食べ物は販売可)、建設業者もワクチン完了までは休止。収入に影響を受けた労働者はオーストリア政府からの給付金を受けて自宅待機をしている。この状況で尚、感染数が増え続けている。

東京で1日4000人が感染、という数字の大きさと比較すると、シドニーの感染数は大したことではないように見える。けれども、東京の「自粛」よりかなり厳しいロックダウンで人々の行動を制限した上での結果が300人超えと考えると、そして更に増えるであろうと予想されることを踏まえると、今回のロックダウンが長引きそうな気はしている。

地域ごとに異なる制限

上に挙げたロックダウン中の行動制限は、NSW州の中でも僕が暮らすエリア(市に相当)に適用されているものだ。このエリアでは、エッセンシャルの外出はエリア内、または自宅から10キロ圏内と決められている。感染が増えている別のエリアでは、5キロ圏内という更に厳しい制限が適用されている。

ちなみに、外出制限などのルールは、しょっちゅう変わる。初めは10キロ制限もなかった。感染拡大の状況を見ながら、シドニーを州都とするニューサウスウェールズ(NSW)州が決め、「●日●時から、このエリアの制限はこう変わります」といったようにアナウンスする。住民はニュースや地域のお知らせをマメにチェックし、情報をアップデートしておく必要がある。でないと、知らないうちにルール違反で罰金をくらう可能性もあるのだ。

NSW州の首相は毎日午前11時から会見を行い、州の保健大臣と共に、最新の感染数やクラスターについて、ワクチン情報、ロックダウンのルール変更、見通しなどを伝えるのがコロナ禍での恒例となっている。

罰金刑でも絶えないルール違反

この会見には、NSW州の警察署長も参加。ロックダウンのルールを破って罰金を受けた人や、逮捕されたケースについての報告もある。必要とされる場所でマスクの着用を拒否した、人の家の訪問禁止ルールを破ってパーティーを開いていた、など色々だ。

最近では、ルールを無視してシドニーから車で8時間以上の距離まで不動産物件を見るために出かけた男性が、実は新型コロナ陽性者で、しかもあちらこちらの町に立ち寄って感染を広げていたことがわかり、逮捕された。彼は「コロナの存在を信じない」と言っていると報道されている。

生活はどう変わったか?

細かいルールは他にもたくさんあるが、一番大きな変化は、人に会わなくなったことだ。

まず、自宅以外の家を訪問すること、公共の場所で集まることが禁止されている。カフェやレストラン、パブ(バー)で飲み食いもできない。となると、家族以外の人と会うことがないのだ。

在宅勤務でも、同僚やクライアントに会うのは画面越し。会議でもなければビデオ通話もせずに、もくもくと仕事をするのみだ。仕事が休みになってしまった人も、休みだからといって遊びに出かけられるわけでもない。

健康維持のための運動は許可されているが、一緒に運動できるのは2人まで(エリアによる)。とはいえ外出には距離の制限があるから、誰でも好きな人を呼んで一緒に汗を流せるというわけでもない。スポーツをしない人や、僕のように団体スポーツに縁がない人は、せっかくの2人ルールも生かせない。

介護や介助がないと生活できない人は、もちろん必要なサービスや家族によるケアを受けることができる。学校は全てオンラインだが、チャイルドケア(保育園)は幸いまだ閉鎖されていないので、生まれてすぐにコロナ禍の世界に突入してしまった子供たちが友達と遊べないことはない。ただし、僕はいずれにも当てはまらない。

最近新たに導入された「シングル・バブル」というルールでは、ひとり暮らしの人に限り、特定のひとりの人と会うことができる、ということになった。人と接触しないことによるメンタルヘルスへの悪影響が考慮されたためだ。例えば、離れて暮らす恋人同士や、介護が必要ない独居高齢者、単身の学生などが当てはまりそうだ。僕は家族がいるので、これにも当てはまらない。

ランニングやウォーキング、犬の散歩中に、同エリア内の友人とばったり会う、これはあり得ることだ。しかし、積もりに積もった話を延々とできるかというと、やはり感染を避け、感染させることを避けるためには長時間の接触は良くないし、「公共の場所で集まるのは禁止」のルールもあるから、道の反対側から挨拶だけして「後でメッセンジャーで連絡するよ!」などと言うにとどまる。

そんなわけで、人にはとんと会わなくなった。ゴミ捨てや運動に出る際に、隣人と挨拶やごく短い会話を交わすことはある。もちろんそれも、距離を取りながらだし、込み入った話はしにくい。

……長くなったので、この辺りで。そのうちまた、ロックダウン中の生活のことや、ルールと違反、感染状況の変化のことなどを書こうと思う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?