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オーストラリアで2時間半待って新型コロナワクチンを接種した話

シドニーで新型コロナワクチンの1回目を受けて数日が経った。僕自身が受けたワクチンの副反応や当日の接種会場の様子などを、忘れないうちに記録しておこうと思う。

副反応はゼロに近かった

新型コロナワクチンを接種すると決めてからも、日程の予約を急ぎたくない気持ちと、シドニーの急速な感染拡大の状況との間で逡巡していた。それでも、順番が回ってくるのを待ってファイザー社のワクチン接種をバタバタと予約し、身近な経験者の話を聞き、副反応に備え、接種当日を迎えた。

ファイザー社製の1回目は副反応が少ないという評判通り、結論からいうとひどい症状は出なかった。

先発の友人や家族に「腕が上がらなくなる人もいるから身支度や用事は早めに済ませるといい」と聞いた通り、接種から帰宅してすぐ、接種部位の痛みが出る前にシャワーを浴びた。

接種したのは夜の時間帯で、シャワー後は夕食を摂って寝るだけの状態だった。接種から数時間後の就寝時刻になるまでに、接種部位に弱い痛みが出てきたが、腕の可動域が狭くなるようなこともなかった。眠る直前、腕を頭より高く上げることもできた。

翌朝、痛みは若干増したが、それでも腕が上がらない・回せないようなこともなく、普段通りに生活できた。その後も痛みがそれ以上大きくなることはなく、やや熱っぽい感じがあったが微熱程度で、仕事や生活に差し支えなかった。

記録用に念のため検温したら、平熱36.5度よりやや高い37度。微熱はこの日の朝夕に出ただけで、接種から24時間以降に熱っぽさを感じることはなかった。

眠気や倦怠感、悪寒、食欲不振などは一切なかったのもよかった。接種から48時間以内には接種部位の痛みも消え、完全に通常の状態に戻った。

1ヶ月以上先だった接種予約を早められた

話は戻ってワクチン接種前。自分の年齢や居住エリアなどの属性が「ワクチン接種対象」になって少したった頃、重い腰を上げてやっとオンラインの専用フォームから予約をした僕だったが、なかなか空きがなく、取れた日程は1ヶ月以上先だった。

それまでの間にも感染は広がり続けるだろうから、気を緩めずに防ぎ続けなければ、と思っていた矢先、知人から「○○という接種会場で、使用期限の近いファイザー社製ワクチンが大量にあり、急に予約枠を開放したらしい」と連絡が。

噂の類いだろうと思ったが、その人も数日後の日程で予約できたというので、半信半疑で予約フォームを覗くと、まだ数日後の枠にいくつもの空きがあった。以前予約したときにはもう埋まっていた日程だ。試しに予約手続きをしてみると、拍子抜けするくらいあっさりと取れた。

先に予約した1ヶ月以上先の日程をキャンセルし、急遽、数日後にワクチン接種を受けることになった。噂の真偽はわからないままだが、時には度肝を抜くようなヘマをやらかすオーストラリアだから、何があっても臨機応変に対応する習慣だけは僕にも備わってきたようだ。

ワクチン接種会場は意外と静かだった

当日、20分ほど早めに着いたが、最終的にワクチン1回目接種の全行程が終わるまでに合計2時間半かかった。同じ会場を利用した家族や友人の誰一人としてそんなに長時間を費やした人はおらず、20分とか、長くても1時間程度だったというので、僕のケースは珍しいのかもしれない。

予約時刻が夕方だったことも、長い待ち時間に影響したのでは、と思っている。ロックダウン中とはいえ仕事をしている人が多い以上、平日夕方以降の予約が混雑するのは仕方ない。予約枠が朝8時頃から21時頃まであったのも、時間が理由で接種できない人を減らすためだろう。

会場は2つのセクションに分かれていた。1つはスクリーニング会場、もう1つは接種会場で、隣接とはいわないまでもすぐ近くにある。

まず、スクリーニング会場という名の整備された野外駐車場で到着順に列に並ぶ。数百人はいただろうか。並んでいる間に、設置されたQRコードをスマートフォンで読み取り、チェックインをする。その後スタッフが回ってきて、チェックイン済みを確認し、「☑️」の印のステッカーを服に貼る。その後、別のスタッフが、既往症の有無など、予約フォームで入力した内容を再確認し、「確認済み」の印として「①」というステッカーを服に貼ってくれた。

夜だったこともあってか、スタッフには少し疲れの色が見えた。1人のスタッフは僕のところに回ってきた時、「一瞬だけ待って」と言って呼吸を整え、それから僕のスクリーニングを始めた。マスクの向こうで彼が笑顔を絶やさなかったのが、逆に心苦しいような気がした。

スクリーニングが終わったからすぐに接種会場へ行けるかというと、そうではない。もちろん接種会場にもキャパシティーがあるので、適切な人数ずつ接種会場に送られる。

結果的に、このスクリーニング会場で2時間近く待った。冬の終わり、春の始めのシドニーとはいえ、日没後の冷たいコンクリートの上。しかしワクチン接種前で少し緊張していたせいか、思いのほか時間は早く過ぎた。

会場はずっと静かで、苛立つような雰囲気もなかった。イライラしても何も変わらないのだからと、こういう時にのんびりした空気があるのは、オーストラリアの良いところかもしれない。大声で話す人も、列を乱すマナーの悪い人もいない。カップルや家族で来ている人が、小声でおしゃべりをしているだけ。列が進むのに合わせて時々前進するが、それ以外は座り込んでいる人、本を読んでいる人、ヘッドフォンで音楽を聴いている人など、さまざまだった。待ち時間への配慮か、希望者向けに無料のコーヒーサービスがあったのは、なんだか場にそぐわず面白かった。

待ち時間の割に接種は「あっという間」だった

総合病院の附帯施設らしき接種会場のほうへ移動したときにはすっかり夜だったが、会場の建物の中は蛍光灯が明るく、そしてそこにも長い列があった。入り口で「ここからあと何分くらいですか?」とスタッフに尋ねていた人がいて、回答は「あと3、40分です」だった。さらに待つのか、という思いはありつつも、時間の目安ができたことで少し気が楽になった。

とはいえ、室内にたくさんの人、人、人。医療関係者はマスクにゴーグルまたはフェイスシールドの出立ちで、僕のような接種参加者も当然マスクはしている。が、本当にこれだけで感染から身を守れるのか、という不安は終始付きまとった。参加者の中には、1.5メートルの距離をしっかり保つ人もいれば、気が急くのか前へ前へと詰めて人と接触しそうになっている人もいる。

接種の順番が回ってくる直前、並んでいると接種中の人の様子がよく見えた。通路を挟んで両脇にデスクが並び、一つおきに医師らしき人たちがパソコンの前に座っている。その隣の椅子に、参加者が座る。何を話しているかまでは聞こえないが、本人確認と問診を行ってからワクチン接種をしているようだった。僕も自分の番が来る前に、メディケア(医療保険)のカードと身分証、そして接種会場で発券された予約票を手元に用意した。

いざ順番が来て、医師の側に左腕がくるように座り、すぐさま手元のカード類を医師に見えるようにデスクに置くと、もの静かな印象の男性医師は小さく「完璧!」と言った。何時から働いているのだろう、シフト制だとしても、感染に気を張りながら働き続けていて疲弊してしまわないだろうか。

予約時にもあった既往症などの確認が行われ、アレルギー持ちであることを告げると、過去に起きた症状を尋ねられた。アナフィラキシーショックというほどではなかったのでその通りに話し、医師はそれをパソコンの画面上に入力した。彼が注射器を用意し始めたので、上着を脱いで、半袖シャツの袖をめくりあげると、あっという間に注射針が刺され、大した痛みもないままに終わった。注射痕の上からパッチを貼られ、別室で15分待ってから帰宅するよう指示を受けると、僕は短くお礼を言って医師のいる部屋を離れた。座ってから、ものの5分というところか。

待機時間の終了後、小型容器に入ったハンドサニタイザーをもらって帰宅した。別の日にワクチン接種をした人の中には、小袋入りのスナック菓子やチョコレート、ペットボトルの水をもらったという人も。サニタイザーは今や「ちょっとした土産物」の仲間入りということかもしれない。

接種会場での感染対策

ソーシャルディスタンスやマスクありの野外とはいえ、数百人と2時間半を共にすることによるウイルス感染のリスクは、終始心配だった。ワクチン接種に行ったせいで新型コロナに感染しました、では洒落にもならないが、実際にそういうケースもあったと過去に報道されていた。

ただ僕の場合、結論からいうと感染はしなかったようだ。会場では一度たりともマスクを外さず、水やコーヒーも飲まずに我慢し、共用トイレにも行かずに済むよう注意した。医師やスタッフとの会話は最小限で済ませた。

もちろん、着けていたサージカルマスクは会場を離れてすぐに捨て、車に乗る前に入念な手指消毒とうがいをした。帰宅後はまっすぐシャワーに向かい、着ていた服は全て洗濯機に放り込んだ。やり過ぎであったとしても、「あの時、こうしていれば」と後悔するよりは良いだろう。

空気感染が可能な変異種がある以上、気をつけ過ぎることはないと考えている。2回目の接種も気を抜かないようにしなくては。



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