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しもまちでつながった縁で、物件を発見。「みなと街ベーカリー」がしもまちでお店をはじめたワケ

香ばしい小麦の匂い。ふわっとパンの香りが立ち込める。

ここは、ふんわりと柔らかな食パンから、昔懐かしいコッペパン、ハード系のパンまで幅広く取り扱う、下町のベーカリー「みなと街ベーカリー」。

2016年12月にお店をオープンし、今はこのお店のパンを求めて県内外から訪れるほどの人気店です。

その理由は、国産小麦や自家培養発酵種を使ってつくられる店主こだわりのパン。各々の特徴に合わせて小麦や発酵種を変えるからこそ、おいしいパンができあがるそうです。

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そんなこだわりを持つ店主の高井さんですが、実は工業高校卒ということもあり、最初のキャリアは建設コンサルタント勤務だったのだとか。

なぜパン屋さんの道を歩むようになったのか。
下町でお店を開いた理由とは。

お話を伺っていくと、高井さん夫妻と下町の関係性、地域の方との関係性をつくる秘訣が見えてきました。

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みなと街ベーカリー店主 高井 淳志さん
1979年、新潟市生まれ。高校を卒業後、建設コンサルタントで橋梁設計に従事。その後新潟市内のベーカリーに転職。以来、約14年ベーカリーの店舗で働く。2016年、「みなと街ベーカリー」をオープンした。


国産小麦や自家培養発酵種を使っておいしいパンを提供する「みなと街ベーカリー」

柳の葉が美しくなびく堀のほとり、木目のかわいらしいお店があらわれます。国産小麦や自家培養発酵種を使ったパンが人気の「みなと街ベーカリー」です。

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店内には、オーソドックスな食パンをはじめ、ハード系のパン、おやつにもいい甘いパンなど、多種多様なパンが並べられています。

それだけこだわってつくられるパンにはファンも多く、新潟市はもちろん、三条市や長岡市、県外からもパンを求めにいらっしゃる方もいるのだとか。長い時間かけても食べたいと思わせる人気の高いベーカリーです。

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いまや連日多くの人が訪れる「みなと街ベーカリー」。店主の高井さんがパン職人を目指したのは、ある小さなきっかけからだったそうです。

パン職人が楽しそうに働く様子に惹かれ、パン屋の門戸を叩く

高井さんは高校を卒業し、建設コンサルタントの会社へ。しかし、しばらくして会社が傾いてしまい、若手社員が一斉解雇されることになりました。何か手に職を付けたいと考えていたそのときに思い出したのが、会社の近くにあった小さなパン屋さんだったといいます。

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「たまに買いに行っていたパン屋が会社の近くにあって。外の小窓から見えたパン職人が働く姿がすごく楽しそうに見えたんです。羨ましいなと思っていた矢先、会社が傾いて一斉解雇となってしまって。そんなとき、そのパン屋に貼ってあった求人を見つけて応募したんです」

偶然の出会いでパン職人の道を歩むことになった高井さん。しかし、超早朝出勤や立ちっぱなしの勤務など、予想以上にパン屋の仕事は過酷。それでも、デニッシュ生地の折り込みや仕込みを教えてもらえるようになると、覚えていく過程が楽しくなり、パン作りにのめり込んでいきました。

当時勤めていたパン屋さんは、食パンやコッペパンなどのソフト系のパンが得意。パン作りの基礎はここで鍛えられました。

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ですが、「この生活を一生続けることは難しいのではないか」とも考えていた高井さんは、土日休みで日勤の仕事を求めて、厨房機器の設計をする企業へ転職。と思いきや、今度はリーマンショックと重なり、内定が取り消しになってしまいました。

そんなときにハローワークで提案されたのは、またもやパン屋さんの求人でした。

「なかなか希望通りの仕事が見つからなくて焦っていたときにハローワークの人に提案されたのが、カーブドッチのベーカリー部門でした。ハード系のパンがメインのベーカリー。以前勤めていたパン屋はソフト系が多かったので、また違う種類のパンが勉強できることが魅力でした」

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こうして再びパン屋で働き始めた高井さん。国産小麦や自家培養発酵種を使ったパンなどを学びながら、技術を身に付けていきました。

そんな風にパンづくりの力が身についてくると、次第に「自分のお店を持ちたい」と考えるように。どこがいいかと漠然と考えながら過ごす日々が続きます。

お店を出せたのは、しもまちで出会った人のおかげ

お店を出すことを考えていると、たまたまパートナーのご実家に行ったときに「ここで出来たら」という場所で出会うことになります。

「下町に実家のある妻と一緒に早川堀通りを歩いていたときに、柳の木がなびくこの通りでお店を出せたらいいなぁと思うようになったんです。周りにお店もないからこそ、可能性もあるように感じました」

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それから下町でお店を持とうと思って、歩いて空き家を探してみるものの、めぼしいところはあまりありません。そんなときにパートナーのお父さんが「下町に詳しい人」として紹介してくれたのが、高取商店の高取サト子さんでした。

「元々、ここは売地で駐車場になっていたのですが、高取さんから地主さんを紹介してもらって。でも、建築費もかかるから、どうしようかと思っていたら、高取さんが『コンテナでも置いてやればいいじゃん』と割と軽めにおっしゃって。それで、吹っ切れたというか『やってみようかな』って。その後はコンテナでお店を出しているぴあ万代に行って、色々見たりして。最終的には愛知の業者さんにお願いしました」

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▲長年、しもまちのまちづくりに携わる高取商店の高取サト子さん

高取さんのおかげで繋がった縁。高取さんが携わる「ウェルカム下町委員会」から、お店の立ち上げを考える若者に。下町のバトンが繋がった瞬間でした。

2つのコンテナを愛知から取り寄せ、高井さん自身の自宅を設計してくれた知人の設計士に「ナチュラルな感じで」とお願いしてできあがったのが、現在のみなと街ベーカリーです。

▼高取さんのインタビュー記事はこちら。
https://note.com/n_shimomachi/n/nc2d714bfeb48

横のつながりがあるしもまちで、お店を続ける

コンテナを使ってお店ができあがると、準備期間を経て、2016年12月にオープン。しもまちの人も地域外の人も多くの人がお店に足を運んでくれるようになりました。

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「始める前は、『下町は曲者が多いから、難しいよ』と言われていましたが、実際にお店を立ち上げてみると、良い人ばかり。県外の方もいらっしゃいますが、地域の人もよく通ってくださるんです」

おじいちゃんやおばあちゃん、子ども連れの家族など、さまざまな年代の方が日常使いで来てくださるそう。オープンして4年ちょっと。すっかりしもまちの一員となりました。

そんな高井さんにしもまちの特徴を聞くと、「横の繋がりが多い地域だと思います」といつもの生活を思い出しながら教えてくれました。

「銭湯に行くと、お客さん達は顔見知りが多く、皆話しているんです。銭湯がコミュニケーションの場になっているのかもしれないですね。そんな光景を見ていると、繋がりが深いまちなのかなと思うことが多いですね」

日常に寄り添えるパン屋として。

人との縁でパン屋を開き、しもまちの人が多く訪れるようになった「みなと街ベーカリー」。高井さんは訪れてくれる人の日常に寄り添えるパン屋になりたいとこれから目指すお店についても教えてくれました。

「毎日いつも通り開店して、普段からみなさんのすぐ近くにいる存在でありたいと思っています。まだ理想のパンにはなっていないし、もっとショーケースをわくわくするラインナップにしたいなど、課題はまだまだ。なので伸びしろもまだあると思っています。みなさんの日常に寄り添いながら、小さくても強いお店にしたいです」

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しもまちの縁でオープンした「みなと街ベーカリー」が、今度は訪れる人の日常を彩るお店へ。しもまちから受け取った縁を生かし、地域の人、そして地域外から訪れる人の日常に寄り添い、ちょっとだけ普段の生活をわくわくさせるお店へとなっていくのです。

みなと街ベーカリー
住所/新潟市中央区赤坂町2-3188-12
電話番号/025-378-3643
営業時間/9:30~(パンが売り切れ次第終了)
休み/日月休
駐車場/3台
Webサイト/http://minatomachi-b.com/


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