見出し画像

ショートショート:無意味なカテゴリ鑑定士

 突然、人の胸元に小さなバッジが見えるようになった。
 バッジと言えば所属や経歴などの身分証明をするものから、功績を表すものもある。しかし僕の目に見えるバッジは、もっと日常的なものだ。『この人、実はこんなことを考えていたのか』と愛おしくなる性質や秘密を表していた。


『全国三きょうだいの真ん中っ子の寂しさを埋める会』

『いつだってシクシク布団の中で悔し泣き同盟』

『野菜嫌いが一生治らなくていいと開き直りクラブ』

『遅寝遅起きで委員会』

『しゃっくり100回を超えても生き抜いた者が集うギルド』


 さて僕の胸には一体何のバッジが、と確認すると『無意味なカテゴリ鑑定士』『人の秘密を詮索カラス隊』の二つがある。人聞きの悪さにギョッとして、もっといいバッジはないか探すと――

『宝探しが下手な冒険者たち』

 まるで今の僕に向けたようなバッジを見つけて、力なく肩を落としたのだった。


―――――

※みんなのフォトギャラリーから素敵なイラストをお借りしました。ありがとうございます。
※また、ショートショートガーデンにも同じ名義で同じ作品を載せています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?