"モノの消費の仕方"を見つめ直す[Footwork & Network vol.25]
「こんにちは!長岡ゼミの学生さん?」
昨年の6月、初めて鎌倉にあるエシカル商品のセレクトショップ「えしかる屋」に訪れた際、最初に話したのがえしかる屋のオーナー店長の黒崎さんだった。昨年の4月にゼミに入って、越境をどうしようかと考えていた時期に、ゼミでゲスト講師としてえしかる屋プロデューサーである稲葉さんがお店のことを紹介してくれたことを思い出して、「1回実際に行ってみよう!」と決心したのがきっかけだ。事前に稲葉さんに連絡を取ってアポを取っていたものの、1人で初めての場所に行くことにガチガチに緊張していたのを今でも覚えている。だから、お店に入った瞬間、黒崎さんが温かく迎えてくれて少し緊張がほぐれたのだった。
あれから、あっという間に1年が過ぎていた。振り返ってみると、この1年間を通して、だいぶ自分の考え方が変わったなと感じた。まさか、何となく行ってみようと思った日から、今日まで度々えしかる屋に通いつめるとは、1年前の自分は思ってもいないだろう。だから、今回のF&Nでは黒崎さんについて紹介しようと思う。
(約1年前に稲葉さんについて書いたF&Nはこちら↓)
お店がオープンしているときは、いつお店に行っても黒崎さんが大体レジ付近にいらっしゃるので、お店に入るとまず黒崎さんに会える。そして、お店に行く度、商品について「どこで・どんな人が・どんな想いで作っているか」ということを丁寧に説明してくれる。お店に並んでいる商品も頻繁に変わるので、商品のストーリーが聞きたくて、私も度々えしかる屋通うようになっていた。そして、お店に行く度、お話しするのが楽しくて、何時間も居座ってしまうのであった。
元々、「エシカル」という言葉もろくに知らない自分だったが、この約1年で色んな商品に触れたり、エシカルファッションショーのお手伝いをしたりして、自分の"モノの消費の仕方"を見つめ直す機会が増えた。また、今年はゼミでも"消費行動"について考える機会が増えたように感じる。ゼミの活動の一環として、今年から始まった「ドキュメンタリーを観る会」で、4月に『ザ・トゥルー・コスト』、7月には『フード・インク』を観た。映画で描かれていることは、どちらも"事象"としては何となく知っていることであったが、実際に観てみると目を背けたくなるような映像ばかり。「ホントに自分は、何も考えずモノを消費してきたんだな」と改めて思い知らされた。
「エシカル消費をしたい」と思う自分もいれば、まだ実践できていない自分もいて、そもそも1年前まで何も知らなかった自分に対して恥ずかしい気持ちもあったりして、モヤモヤしながらもえしかる屋を訪れていた。
そうしているうちに、最初の頃は黒崎さんには主に商品の説明をしてもらっていたが、次第に黒崎さん自身のお話を聞くことも増えた。今年の4月に、「エシカルパソコンZERO PC」を作っている会社(&工場)見学に声をかけていただいて、一緒に連れて行ってもらった際に、黒崎さんが以前はテレビ業界で働いていたことを初めて知った。2021年に鎌倉でえしかる屋を開く前は、東京のエシカル商品のお店で働いていたと聞いていたので、過去にテレビ業界で働かれてたと聞いて、結構びっくりした。黒崎さんも、「以前は今と正反対の生活をしていた」と話していた。
エシカル商品に携わるようになったきっかけも、自分が凄くこの分野に関心があったという訳ではなく、娘さんにバイト先として紹介してもらったことがきっかけらしい。しかし、実際にエシカル商品携わってみて、「衝撃を受けた」と言っていた。「何も知らない自分」に対して、そして、「売れるかはわからないけど、より良い社会の実現のために実際に行動を起こしているブランドの方たち」に対して。きっかけは偶然だとしても、今、鎌倉でお店を開いている黒崎さんにとって大きなきっかけだったんだろうなと感じた。
鎌倉でお店を開いてからは、鎌倉で暮らす人々の暮らし方が好きになったそうだ。元々、鎌倉が好きで、以前から足を運んでいたらしいが、お店を構えてみると、地元の人が地元の野菜を使っていたり、自分で植物を育てていたり、観光地でありながらも意外と生活をしている人たちは気にせずのびのび暮らしていることを知ったという。えしかる屋のお客さんで近所に住んでいる方の中には、コットンが好きで、自分で栽培していて、さらには自分で糸を紡いで、服を作る方もいるんだそう。(8/20にえしかる屋で和綿糸紡ぎワークショップ開催予定!)
先日、鎌倉の人々の暮らしについて聞いた後、私がお会計していた際に、黒崎さんがその場で値段を決めながら、「私も鎌倉に染まってきてるわ〜」と言っていて、何だか不思議だなぁと感じた。というのも、私は神奈川県の出身であるけれど、ただの住宅街の中で生まれ育ち、買い物は基本総合スーパーで売られている安いものを買うというのが当たり前だった。安いありきたりのモノを買って、消耗したら買い替えるということに対して何の抵抗感もなかった。もちろん、大量生産・大量消費社会で犠牲になっている人が世界にはたくさんいるということも知らなかった。
しかし、えしかる屋に行くようになって、黒崎さんや稲葉さんと出会ったことで、自分の"モノの消費の仕方"をちゃんと考えてみたくなった。それは、「エシカル消費をしたい!」というよりも、まずはたくさんの素敵なエシカル商品に魅了されたからだ。作っている人の想いが伝わる商品が魅力的だということを知ったし、本当に色んな商品があることを知った。また、エシカル商品の中にはオンリーワンの商品も多い。世の中に一つしかないものだなんて、大切にしたくなるし、思いっきり自慢したくなる。それが、結果として、大量に買ってすぐに捨てるという消費行動を変えられるのではないかと思った。
黒崎さんも、「人が好きで、人の繋がりが見えるエシカル商品が好きだ」と言っていた。想いが込められているから、人に伝えたくなる。実際に私もそれを強く感じたのは、7/9に今年の4月からゼミに入ったいっしーと一緒にお店に行った際に、あまりエシカル商品に触れてこなかったいっしーが楽しそうに商品のことを聞いているのを見て、私も楽しくなった。「めっちゃ良い!!!」という言葉は、色んな場面で聞く言葉ではあるが、いっしーが本心からそう言っているのが伝わってきて、何だか私も嬉しくなった。そこで、「あぁ、もっと色んな人に知ってもらいたいな」と思うと同時に、「自分ももっと知っていきたい」と思った。
だから、「知らなかった自分」をしっかり受け止めて、見て見ぬ振りはしないで、少しずつ行動を変えていきたい。私は、今も実家暮らしで正直に言うと呑気に暮らしてきた。ただ、約半年後には社会人となって、おそらく1人で暮らしていくことになるだろう。そうすると、モノを購入することの選択権が全て"私"になる。今までは、特に食事に関するものだったり、日用品といった買い物はほとんど親に任せっぱなしであった。黒崎さんや稲葉さん、えしかる屋というお店に出会って、今まで特に何も考えずモノを消費してきた分、この先は自分で"モノの消費の仕方”を考えていこうと思った。自分の消費行動で社会が変わるかどうかはわからないけど、私は想いが込められていて、人に紹介したくなるようなモノを選択していきたい。
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