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ちゃん

昔、「子連れ狼」という時代劇があった。主人公は浪人で、刺客なのだが、子連れなのである。その子というのが、乳母のようなものに乗っかっているのだが、その子が父の、その浪人のことを、「ちゃん」と呼ぶのである。

我が家の次女は、スポーツをしている。中学から高校にかけて、遠征、大会三昧だった。その時に、チームの色々な大量の荷物を分担して運ぶのだが、私は、自費で荷物用の、折りたたみ式のキャリーを持ち歩いていた。それが、その、乳母車に似ていたのである。

私は、そのキャリーカートに、「ちゃん」と名づけた。

ちゃんは、実によく働いてくれた。重い、大量のチームの荷物を、あちこちの遠征、練習試合、大会、合宿。すべての場面で、私と一緒に運んでくれたのだ。

その、次女と一緒の6年間は、風のように過ぎ去った。ちゃんは、その役目を静かに終えるはずだったが、今でもバリバリ働いている。

長男や次女の引っ越し。普段の買い物。近所のコインランドリーに持っていく洗濯物。そして、家を徐々に片付けつつある中で出てくる、手放すべき物。ありとあらゆる重い、大量のものを、私と一緒に運んでくれる。

ちゃんは、まだまだ動けるし、仕事もあるので、引退は、いずれ、まだまだ先のことだ。私と、家内と共に、これから先も、色々なところに一緒に行くだろう。

これからも、長く、我が家の一員として、我が家のことを見舞っていって欲しいと思う。

ちゃん……これが、私が名づけた、我が家のキャリーカートの名前なのである。

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