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アナログバイリンガル【ショートショートnote杯④】

英吾は、いわゆる帰国子女だった。父が商社マンをしていて。生まれ育ったのはニューヨーク。高校2年生になってから日本に戻り、高校に通っていた。

当然のごとく、英語を自由に操ることができる。

ところがある日、体育の授業中に、ピッチャーの投げた球が、ヘルメットを直撃したのである。

英吾は脳震盪を起こし、担架で保健室に運ばれた。幸いにして、病院の検査で異常なしとなり、帰宅した。


翌日のことだった。英語の時間。テキストが全く読めなくなっていることに気がついた。

読解の担任の、渡辺先生が、英吾を指名した。

「15行目から、読んで、和訳してみてくれ。」

英吾はテキストを持ち、立ち上がった。ふと、首を3度ほど右に傾げた。すると瞬く間に意味が頭の中に入ってきて。スラスラと和訳を終えた。

英吾は、その後、首を3度ほど右に傾げると英語を流暢に操れる。この首の角度は、正確には何度なのかは、今だに確かめられていない。だいたい、3度ほど右、なのである。

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