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欠片

帰宅してすぐ、スリッパを履かずに家の中を歩いていると、足の裏にチクリと当たるものがあった。何だと拾い上げてみると、プラスティックの欠片だった。

しばらく見ていると、柄に見覚えがある。

あ、家内のスマホのカバーだ。

いつ、どうして欠けてしまったのだろうか。カバーが欠けてしまうということで不便はないだろうか。時々スマホを手元から落としてしまったりしているが、強度的には大丈夫なのだろうか。ちょっと気になった。

家内も、長男も、長女も次女も、スマホに落下防止のストラップやリングを絶対につけない。格好が悪いらしい。

対して私は、必ずつけている。通勤電車の中で誤って落としてしまったりするとまわりにも迷惑だし、第一、スマホの画面が割れてしまったり故障してしまうなどというとがあっては、取り返しがつかないと思うのである。

言うまでも無く、私以外、みんな、画面を割って、バリバリの画面で使用していた時期が少なからずあった。

ほらほら、そういうことになるでしょ。備えあれば憂い無しですよ。

私は、そういうシーンを見る度に、心の中で言ったものである。だが、暫くすると新しいものへの買い換えを容赦なく強要される。宿命のようなものだ。

今回は、家内のケースが少し欠けているという現象で、このケースは長年使い込んでおり、そろそろ交換しても良い頃だと私は思っていた。

夜、晩御飯を食べながら家内と話をしていて、カバーの件を切り出してみた。そして、そろそろ交換しても良いんじゃない?と提案したのだ。

そうなのよ。随分前に落として欠けてしまったの。

でも、本当に、気に入っているのよ。これが。

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そうか。そんなに気に入っているのか。じゃあ、同じ柄で、新しくするというのも、ありだよと言っては見たが……

このカバーそのものが、気に入っているのよ。

まだ使えるし、今使っている、このカバーそのものに愛着があるらしい。なるほど。

確かに、入手するのに長女と一緒に時間をかけて探し、注文して手に入れて、ずっと使っているのだから思い入れがあっても不思議ではない。

家内は、まだしばらく使うようだ。良いものがあるかどうか、また、探してみたらと追加の提案をして話を終えた。

良いものを長い間使うということは、なかなか良いことだ。でも、足の裏が痛いから、破片は探して捨てておこうね、と、心の中で呟いた。

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