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偽情報と表現の自由

デマ・フェイクニュース・偽情報に表現の自由を認めるか、という論点がある。それらに対し社会としてどのように対応すべきか、記事や投稿の強制的な削除・アカウントの凍結等を行うべきか、ペナルティのあり方は……などなど。
これについて、自分としてはかなり表現の自由寄りで考えている。

それが「偽情報」であることを誰がどうやって担保するのか、という。その圧倒的な権力は果たして政府や特定の企業などが持っていいものなのだろうか?
事後的に削除等をするのならいわゆる「検閲」には該当しないだろうが、それでも表現の自由との関係でかなり危ういと思う。

やっていることは「気に入らない表現を潰す」と紙一重……というか本質的に変わらない。潰す表現が本当に偽情報(ある意味「社会にとって都合の悪い表現」)ならまだしも、それがそのうち「監視する側の政府や企業などにとって都合が悪い表現(偽情報ではない)」に向かわないとも限らない。

これは政府や企業などを信用するしないの問題ではなく、制度やシステムとしての問題である。そのようなことが「できてしまう」状態がよろしくない。

偽情報を表現の自由の範囲外としてしまうと、様々なものが「偽情報」として容易に表現規制できてしまう。そういう意味で、自分は偽情報も表現の自由の範疇と考える。その上で各者の利害を調整すればよい。
そして、社会全体の偽情報対策としては次の2点を中心に行うとよいのではないかと考えている。

  • それが偽情報と考えられる旨を表示させる

  • 偽情報を発信するインセンティブを下げる


それが偽情報と考えられる旨を表示させる

偽情報については、見てすぐ分かるような形、当該偽情報と同時に目に入るような形で、それが偽情報と考えられる旨を表示させるとよいのではないか。

例えば、「この記事は科学的に誤っている」「この投稿は報道された内容とは異なる」などと大きく表示することで、表現の自由との共存を模索したい(その情報自体を書き換えてしまうのはNG)。

政府や企業などの一方的なプロパガンダにならないよう、根拠も付けて情報を受け取る側が判断できるようにするとなおよい。また、政府や特定の企業のみが行う必要もなく、いわゆる集合知ということでまあ誰がやってもいい。場合によっては政府が「やられる側」になることもあり得る。

まさに今のX(旧Twitter)におけるコミュニティノートの仕組みはこれに非常に近く、ひとつの解答となり得るのではないかと思う。
削除&再投稿のような回避策があり、いたちごっこにしかならないかもしれないが、それでも拡散されたことによる被害や拡散自体を抑える効果は見込めるはず。

なお、削除・凍結の方向だったとしても、投稿し直す、アカウントを作り直す(規約違反ということになっていたりするようだが) など色々とやりようがあってしまい、その点は同じこと。


偽情報を発信するインセンティブを下げる

偽情報を発信する自由は認めた上で、インセンティブを下げることにより偽情報を減らしていくことができるのではないか。

すなわち、偽情報の発信で得た収益の没収や収益化自体の停止、発信した偽情報によって実害が生じた場合にそれを賠償させるなどにより責任を取らせるといった方向性。
まあこれまでも行われているだろうが、それを徹底しつつもその枠からはみ出さないイメージ。

偽情報を発信して生活していた者は、他の仕事をするなり生活保護を受けるなりした上で、(賠償金もなんとかしつつ)やりたければこれからも偽情報を発信すればいい。その権利は失われない。

ただ、この辺りは人様の財布にかなり直接的に手を突っ込むこととなるだけに、それなりに厳格かつ恣意性を廃した客観的な手続・仕組みが必要だとは思う。
裁判での事実認定を経て……みたいなのが望ましいが、それが悠長すぎるということなら専用の制度を設けるのもありかもしれない。

なお、インセンティブを下げるだけだといわゆる「無敵の人」や金持ちに対抗できないので、これ単独ではなく上記1つ目の対策も併用する必要がありそう。


最後に

上記対策はどちらも必ずしも即応性がなく、まわりくどいし手間もかかる。どこかしらでお金もかかるだろう。
ただ、それらは言論の自由、表現の自由……自由な社会の代償・コストとして仕方がないものともいえる。

偽情報により何か被害があってからでは遅いかもしれないが、容易に表現規制がなされる環境だってそうなってからでは遅い。

社会として(ともすれば我々各個人が)代償・コストを払ってでも、「偽情報」であったとしても(最初の方に言及した内容に関連して、個人的にはむしろ偽情報「だからこそ」に近いレベルで重要なラインと考えているが)ある意味では「守る」必要があるのだと思う。それだけ表現の自由は重い。

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