これほどインターネットらしい本はない

Amazonからの荷物。「何注文したっけ?」と思いながら開封すると美しい本が入っていて小躍りした。

塩谷舞さんの初エッセイが届いたのだ。

私が塩谷舞さんを知ったのは、執筆活動を本格化した後だったのだろう。意志を持った投稿に好感を持ったのと、何だか胸をつく文章に惹かれて過去noteや、milieuの文章を読み漁っていた。スマホ時間を減らしているため最近の文章は読んでいなかったが、書籍発売のtweetを見かけて即予約するほどにはファンの自覚がある。

縦組みの文章の読後感

読み始めてまず、内容とは関係ないところでじわじわと嬉しい気持ちがこみ上げた。Webサイトで横書きで読んできた記事、なんならPCでもタブレットでもなく、夜寝る前の布団の中でスマホをスクロールして読んだあの記事が。縦書きの美しい文字組みで私の目の前にある。しかも、ちゃんと読後感は変わらない。

私自身、Webディレクター/ライターとしてWeb上に文章を公開するようになってから10年以上。子供のころから本好きを自認していて、卒論は文学部で梶井基次郎をテーマにまでしてしまった人間。紙とWeb優劣なんてないと思いたいけれど、やっぱり本になって紙に印刷される方が 「ちゃんとしてる」そんな偏った見方が私にもあったのだ。塩谷舞さんの本はそんな思い込みを、喜びを持ってぶち壊してくれた。

Webでも紙でも、良いものはちゃんと良いのだ。


今だから感じられるものがある 

この本には、2017年からニューヨークに移り住んだ塩谷舞さんの今もしっかり綴られている。コロナ禍、アメリカ大統領選の最中にアメリカに住んで塩谷舞さんが見聞きし、感じたことは、日本にいる私たちも今読むからこそ感じることがあると思う。この本のあとがきが執筆されたのは、2021年1月11日。この激動過ぎた歴史に残る一年を振り返り、記憶に残すのにふさわしい。

もし、この記事を読んで塩谷さんの書籍を読んでみたいと思ったなら、ぜひ4月ごろまでには読み終わって欲しい。どんな人にとっても信じられないことの連続だった2020年の記憶がまだ新しいうちに。

この本には「インターネット」という言葉が数多く出てくる。塩谷舞さん自体がインターネットの世界でインフルエンサーとして成功し、苦悩し、生きているから。塩谷舞さんがインターネットに放った言葉は、巡り巡って紙の本になり、私の元に届いた。これは、紙の本だけど、2021年という今を痛いほど描写しているという意味で、これほどインターネットらしい本はないかもしれない。


補足

単行本はカバーをとって読むのが好きなのだけれど、この本はカバーをとっても美しい。ビジネス書ばかり買うことの多かったここ数年。本を読むことの、良質なエッセイを読むことの楽しさ、心の嬉しさを久しぶりに感じた経験になりました。また時々読み返したい。そう思います。




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