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ランドマーク(129)

 何かをする必要がある。わたしはベッドから転がり出て、レインジャケットをTシャツの上に羽織って、それからマイボトルに水を詰めて、それくらい。自転車で行こう、と思った。電車だと遅すぎる。それに、なんだか居心地が良すぎる気がした。

「おーい!!」コールがまだ切れていなかったことに気付いたのは、ペダルに右脚をかけてからだった。

「海良、一人で行くのか」

「そうだけど」

「行くよ」

「なんで」

「海良だって、分かんないだろ。一緒だよ」

 どうして舘林がそう言い切れるのか分からなかったが、確かにわたしには説明できなかった。眠たいから寝る。転んだから起き上がる。それくらい自然なことのように思えていた。自らの意志で足を動かしているのではなく、わたしがあの山に魅入られているような気がした。

 いつどこで落ち合おうとか、そういった会話はしなかった。正直なところ、わたしは舘林にどう接すればいいのか分からなかった。下山を手伝ってくれたのはあいつだが、下りて生きて返ってきたことが本当に良かったと言えるだろうか。わたし一人が死んだところで、どうせ世界は回るのだ。熱暑にあえぎながら、わたしの気持ちは落ち込むばかり。ぬるい風が上着とシャツの間を抜けていく。ギアをカチリと上げて、わたしは路側帯をひたすらに走った。

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