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小説シリーズ

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2020年11月の記事一覧

いつかの、(翠雨)

いつかの、(翠雨)

 バスを降りると、いちめんのみどり。アスファルトから立ちこめてくるペトリコール。マイナスイオンって何だったっけ。ふたりはすぐにジャケットのフードを被り、歩き出す。ルートは決まっていた。山頂の東南東、ちょうど学校から見える面を登る。つまり、わたしたちが登るにつれて、開けた視界にはあの街並みが映るということだ。わたしが日々を燻らせるあの街。

 父親と登ったルートは北東からのもので、他に六つ、合わせて

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