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未来詩

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未来考察(妄想)を、ついでに詩にしてみます。 ただの遊びです。
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記事一覧

【詩】機械化

おはようございます。本日の製造数は956個です。昨日は不良品が一つ出てしまったので気を引き締めて業務に当たってください。それでは社是唱和!……!……!……!本日もよろしくお願いします。

俺は会社のロボットだ 周りを見渡すと同じ服装をしたロボットで一杯だ
各々が定位置に着く 白く無駄のない部屋が照明で明るい 我々は夜を克服したと誇らしげだ
目は画面になり頭は指示を遂行する 腕はアームになり物を持ち

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選択代行屋

「お悩みですか?浮かない顔をしていますね。私は選択代行屋。お力になれるかもしれません。」

「選択代行屋?」

「あなたの悩みを代わりに考え尽くして、最適、最良の決断を肩代わりいたします。」

「そうですか。実は斯々然々で…。」

「それでしたらお力になれますよ。弊社は各業界の専門家、学者など、様々な角度からの知見を統合して結論を出しますので、一個人の見識を上回ります。過去の事例も豊富にございます

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【未来詩】完全栄養食

一日3粒飲めば必要な栄養が摂れる錠剤
技術は確立され安価で大量生産が可能だ

「仕事の合間に栄養補給が完了するし
無駄な食事の時間を省ける」
なんて言ってるあいつを見ろよ
液晶に向かって何やら打ち込んでいるが
あれこそ無駄なものだよ
必要のないものを
必要だと思い込んでやがる

技術革新は目紛しいが
恩恵は一部の富裕層が牛耳っている
下位の俺らはあいつらの玩具さ
狭い檻に入れられた鶏みたいだ
人工

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【詩】安楽死

【詩】安楽死

一錠飲んで
いつものよう目を閉じるだけ
そうすれば全てから解放されます
さぁ、心地よい眠りへ
選ぶのはあなたです

顔のない差し出される手は
救いへ誘う天使か
飢えた悪魔か
返事はしないまま、何の変哲もない白い錠剤を受け取る。この手の上に選択が乗った。最初は軽く思えたそれは、凝視めるほど、考えるほど、形容し難い重さを持ち始めた。

生か死か
両天秤はどちらにも傾き得る
夢中の最中に眠りの余地はない

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【物語詩】暴力を禁止された国

【物語詩】暴力を禁止された国

「いいですかみなさん、この国では物理的な暴力は禁止しています。躾と称する平手打ちから、鈍器を使用した強盗まで、種類や大小を問わず厳しく取締ります。罪はとても、とても、重いです。いいですか?再々何度も確認して下さい。罪は、とても、とても、重い
、です。」

「この国で暴力を振るったら厳しく処罰されるそうだ。何も初めから死刑になるわけではない。12歳以下までなら厳しく処置されて、12歳を越えたら3回ま

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未踏の時代

人工知能にも詩は書ける
人間は
未踏の時代に
なにを視て 伝えるのか

生身の人間が
苦しみを 喜びを
無数に記してきた
文字列は川に流される
なにを掬い残すのか

世界が変わる朝に
時代の過渡期に
想うことのできる
幸運に感謝する

詩を書く人間が
いなくなろうと
詩は死なない
核心を必ず
宿す命が生まれる
必ず

思想は人間の領分だ
苦しみ 喜び
歩いてきた果ての
あなたの言葉

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武器よさらば

一度 創られた物は無くならない
執拗な進化を繰り返す
それは破滅を迎えるまで…?

武器は無くならない
テクノロジーは産まれ続ける
ドローン兵器 ロボット兵器
生物兵器 新型爆弾
殺傷力は加速度的に突き上がり
綺麗な花火を咲かせる

好奇心は進化を止めない
見えてしまった可能性を無視できない
時代は戻らない
戻してはならない
世界はよくなっている

人はよくなっている
自由が行き渡

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平等

人間の自由な時間は増えた
多くの人に物は行き渡った
だが、意志の高低は広がった

車の移動時間さえ勉強するもの
ゲラゲラと娯楽に興じるもの
セックスに憑かれたもの
運ばれる明日は同じだ
だが、手にする未来は違うだろう

昔からそうだよ
強者が伸ばす腕に弱者がしがみつく
昔は誰でも労働力になれた
今ではお役御免で
ゲラゲラと笑うものども

遺伝子操作 1

「遺伝子操作された顔なんて、人形みたいでつまらないじゃない」

「みんな見てるのはラベルだけ。わたしの中身なんて、ちっとも見ていない」

退屈そうに語る顔は、たしかに精巧に作られた人形みたいだ。美しさは無機質で冷たい。

だけど僕は、本当の美しさを知っている。
自然なままの心を持つ君。
友達と楽しそうに笑い、苦しみに涙する君。
人形とは程遠い感情をもつ君。
そんな君を、目はつい追ってし

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