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メキシコ生活記録⑫ ーインタナショナルスクールの教育方針

ちょうど先週の金曜に「Student Led Conference」があったので、その時に担任と話したうちのインターナショナルスクールの教育方針について、今回は書いていこうと思う。
ちなみに、表紙中央の「Open a BOOK and open your MIND」は、実際に2号の教室に貼られている担任お手製のポスター。私はこれが好き。で、右下は、1号のクラスに貼られているBiology(生物学)のグループで学生たちがまとめた学習ポスター。なかなかのクオリティ。右上は、廊下の壁に書かれた質問。学生はポストイットに自分の考えを書いて勝手に貼る。これもいい。

はじめに
うちの子たちが通うインターはとにかく行事というかイベントが多い。1年目の私たちにとってはすべてのイベントが初見なので分からないことだらけなのだが、学校からの事前説明もあまりないので、とにかくすべて手探りでやっている。
今回は親も学校へ行く必要があるというので夫婦そろって参加したが、私たちは現着するまで何をするのかよく分かっていなかった。

「Student Led Conference」とは?
具体的な内容が推測できないイベントが、学校から配布された年間予定カレンダーにはいくつか記されている。SLCもそのひとつ。どうやら、読んで字のごとく、学生主導で親と何かをするイベントらしい。何するの?と2号に聞いたら「一緒に何かするらしい」という、まっすぐに小4な感じの返答をもらう。それくらい分かるわ。ただ、直前になると謎の英文を暗唱しだしたので、私たちの前で何か言うんだろうなと思っていた。
1号はというと、必死にプレゼン資料を作っていた。プレゼンの目的は、自分の学校生活や学習の様子を親に伝えること。そのために盛り込むべきポイントもいくつか設定されており、それに沿った資料を作って前日までに先生へ提出する必要があるらしい。「これ何を書けばいいの?」と1号に聞かれた盛り込みポイントは、直訳すると「あなたの自尊心の源泉は何ですか?」だ。こんな質問、私ももらったことがない。「私はよくやった!すごい!って自分で自分を誇れるのは、こういう時ですって感じのことを書けばいいんじゃない?」と答えた。こんな質問いいよね。
詳細は分からないが、とにかく子どもと何かすることだけは確かだ。

さて当日
1週間前くらいに送られてきたメールに貼り付けられている予定表から、自分たちで予約を取る。でも、子どもと一緒に予約時間に行けばいいのか、子どもたちだけはいつも通りの時間に登校するなのかが分からず、結局What's upのママさんグループで尋ねた。そしたら、親と子どもは予約時間に行って、終わったらそのまま連れて帰ることが判明。便利。
ということで、子どもたちと一緒に学校へ。金曜日だったにもかかわらず、父親の出席率がすごい。「来てよかったな」と夫に伝えた。

まずは、2号の教室へ。
どうやら、教室内用意された4つのセクションを5分ごとに移動しながら、そこに置いてある学習系ゲームのミッションを家族でこなしていくらしい。
子どもたちが前に出て、そう説明してくれた。昨日覚えた英文を、2号も無事に暗唱できた。「オレは何て言うてたん?」と後で聞かれたので、意味も分からずにただ暗記していたことが判明。それはそれですごい。

質問を組み立て、サイコロをふって出た目の答えを書き写す。楽しい。

言語、歴史、科学、最後にアンケート、だったかな。カードゲームもあってけっこう楽しかった。私たちはスペイン語が読めないので、先生が特別に日本語のカードを用意してくれていて感動した。時間が限られているので、親も必死になって謎解きゲームをしてしまった。
で、最後に「達成したいことは何ですか?」などのいくつかのアンケートに答える。で、最初は驚いたんだけど、今回に限らずこの手のアンケートはいつも「そのために教師/親/自分ができることは何ですか?」という項目がワンセットで書かれている。これが地味にすごい。この質問項目が目指しているのは、親から先生への要望などではなく、「目標」と「目的達成のための道筋」を抱き合わせで考えるクセをつけることなのだろう。だから、親も考えさせられる。
日本の学校では最後に「学校へ伝えたいことはありますか?」という項目があるのが関の山だろう。で、何も書かない。でも、それでいい。つまり、日本の学校は、意見を募りますよという態度を親に見せることが目的だからだ。少なくとも私にはそう見えていた。こういうアンケートにはストレスもないが、実りもない。
2号は終始楽しそうでよかった。この前見た、科学の成果発表会のときも思ったが、かなり学校に馴染んできている。学校がはじまったばかりの頃を思えば、すごい成長だ。英語はまだ伸びしろしかないけど、それでももう十分すごいと思う。

続いて1号の発表へ
4家族まで同じ時間帯が取れるんだけど、たまたまこの時間帯は私たち家族だけだった。「今日はあなたがリーダーなんだからどうぞ仕切って」と担任に促された1号は、自分のiPad(中学生以上は1人1台学校から支給される)を私たちに向け、プレゼンをはじめた。教室には、私と夫、それから弟、あと担任と他の先生がもう1人だけ、というイージーな空間なのに、1号はなぜかめちゃくちゃ緊張していた。
スライドをめくりながら自分で(翻訳アプリと一緒に)作った英文を読んでいく。こちらも成長したなぁと、しみじみしながら聞いていた。クラスメイトとのグループディスカッションに参加できるようになってきたことや、フランス語の課題を1人でこなせたことなどを発表してくれた。
インターに通い始めて半年あまり、もっとも伸びた1号の能力は、スライド作成スキルではないだろうか。日本にいたころ、1号は私の作るスライドのアニメーションが好きで、自分でもパワポでスライドを作ったりしていたが、あくまでお遊び。でもこっちは、スライドにまとめて課題提出という機会がめちゃくちゃ多いので、否が応でもちゃんとしたスライドを作らなければならない。おかげさまで、もう私よりうまく作れるんじゃないかな。このスキルは大人になっても必要なので、今から鍛えられてラッキーだった。
英語を話すと何故かささやき声になる1号に、もっと大きな声で話して(笑)!と何度もリクエストし、発表は無事終了。
その後、担任の先生と学校生活のことなどを色々と話した。先生は1号に「あなたは友達とも仲良くやっているし、自己管理もできている。やるべきことがやれているわ」という感じで話していた。それで、面白いのはその後。
「あなたはどう思う?」
先生は、完全に1号本人に聞いている。親の方は見ていない。日本だと親子で「ありがとうございます」って、にっこりして終わるところだよね。だけど、こちらでは続きがある。むしろ、ここからが本番。つまり、先生は自分の意見を伝え終わったので「次はあなたの番」と、バトンを渡してきているのだ。
この「what do you think?バトン」は、けっこうこわい。特に、日本の学校教育に適応してきた人間にとっては、どう答えれば「正解」なのが分からないからだ。予想される選択肢は以下。

①先生は開かれた感じを出しているだけなので、自分の意見を述べてはならない
➡「いえ、特にありません」が正解?
②先生の意図をくみ取って自分の意見を述べるポーズは見せるが、先生の意見に反対はしない
➡「……私もそう思います」が正解?
③先生は自分のことをほめてくれたので、そのお礼を伝えると同時に、決して調子に乗っているわけではないことをアピールするべき
➡「ありがとうございます。でも、まだまだできていないことの方が多いので頑張ります」が正解?
④先生の質問を字義通り受け取る
➡ガチで自分の意見を述べる(先生への反論も含む)、が正解?
⑤何も言わず、先生が話題を変えるのを待つ
➡黙ったままでいる、が正解?

さぁ、どれが正解だと思いますか?
日本だと①~③の選択肢しかそもそもないよね。
でも、こちらは、皆さんお察しの通り、もちろん④なのです。
で、なんで④が難しいかというと、普段から色々考えてないと咄嗟に自分の意見なんか言えないから。そもそも「無い」ものは、咄嗟になんて出てこない。その点、①~③が難しくないのは、思考停止していても答えられるから。
でも、だからといって①~③の選択がイージーなわけでは決してないんだけどね。よく似てる①~③を、日本人は相手や状況によってケース・バイ・ケースで答え分けているんだから、これだってけっこう凄い。私もまだ、この年齢になっても、①or②or③の選択を時々間違えちゃう(笑)
つまり、1号はメキシコへきて、今までの学校生活では求められていなかった④のスキル習得に励んでいるわけなのです。だから、この日も1号は、私をチラ見することなく、詰まりながらも頑張って自分の思いを話していた。彼女が脳内の引き出しを開け閉めする音が、私にも聞こえた気がするくらい必死に話していた。
だって、インターの先生に⑤の選択肢がないから。黙ってると、ずっと待ってくれるんだよね。ないなら「ない」と言う必要がある文化、私はけっこう好き。
日本では、反省してるような顔芸しながら⑤でやり過ごすことがベストなときも多いけどね(笑)

先生は学生の考えていることを本当に知りたいらしい
「彼女はみんなの前で間違えるのがこわいんだと思います」って私が言ったら、担任は「間違えることこそが成長するために必要なんです!」って力説してくれた。私も本当にそう思う。日本の先生方だってみんなそう思っているはずだ。でも、日本の学校では、きっとこんな条件が暗黙に付いている。
「自分の意見は言いなさい(ただし正解に限る)」
学生の間違いは「間違い」以外の何物でもないので、スルーされるか「正されて」しまう。なので、その過程で、学生には「恥をかいた」「言わなければよかった」というマイナスの感情が沸き起こる。これは日本の学校が「知識を正しく覚える」ことに軸足を置いているからなんだと思う。
でも、インターの先生が言っているのは、「自分の意見を言う」という経験の大切さなのだ。クラスメイトどうしで間違いながらも、意見を交わしていく。その結果、実験が失敗しても、彼らは失敗した実験結果を発表するのだ。
2号の科学発表会の参観をしたときもそうだった。グループ内で考えた仮説を実験して検証したよっていう発表だったのだが、なかには「私たちの仮説は立証できなかった」という結論のグループもあったのだ!日本では考えられないことだと思って感動した。
そう、何が言いたいかというと、学校が学校内だけの予定調和を狙っていないのだ。これはつまり、学校で学ぶ知識と実生活とのつながりを、学校が意識しているということでもある。日常生活は、自分の仮説通りにすすむとは限らない。だからこそ、様々な知識をつなげ、活用し、失敗しながらも実践していく、ということが、インターの教育では重視されている気がする。
実際、教科の垣根は日本よりも曖昧にされている気がするし、先生も「一見すると無関係に見えるバラバラな知識をつなげて、頭の中に大きなネットワークをつくってほしい」と言っていた。そのために、「自分の考えを言
う」のだ。だから、グループディスカッションもブレーンストーミングに近いんだと思う。つまり、「間違いを直し、正解をたどりつく」ことがもっとも重要なのではない。
くわえて、先生は学生の考えていることをただ知りたいようだった。
日本の先生だと「学生から思ってることを聞かされる=学生からの要望を聞く=対応を迫らせている」と思って身構えてしまうことも多いのではないだろうか。もっとふつうに、先生と学生が「話す」機会があればいいのにね。

おわりに
今回は、うちの子どもたちが通っているインター校の教育方針のなかで、私がいいなと思ったことを書いた。比較対象になっているのは、日本の地方の公立小学校・中学校なのであしからず。
また、気が向いたらたまに比較記事を書こうかな。

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