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メキシコ生活記録⑰ ー床が隆起してきたので修復してもらった話

3月の終わり、金曜日のお茶会の後、日本人のお友達と晩御飯を食べに行き、今から帰るメールをしようと携帯を開くと、夫から不可解なメッセージが届いていた。
以下は実際のやり取り。

とりあえず帰るしか言えない状況

意味が分からない。床って盛り上がるものなのか?
ともかく家路を急いだ。
帰宅すると、3人が「気を付けて!」と口ぐちに注意喚起してくるからびっくりした。
どうやら隆起したのはキッチンの床で、2号が食器を洗っている時、足の下から、ゴゴゴゴという音がしてきて突然、盛り上がってきたらしい。地震かと思ってびっくりしたそうだ。夫は、ガス管が爆発したのかと思ってびびったらしい。でも、一度隆起した後、床は何事のなかったかのように静まり返っている。ただ、盛り上がったタイルの下に隙間ができてしまい、その上を歩くとちょっと危険な音がした。
つまり、我が家のキッチンは、突然ほんのり山形になってしまったのだ。
こんなことある?
もう私は腹をかかえて爆笑してしまった。

さて、いくら「ちっちゃいことは気にしない」ゆってぃ~世代の私であっても、山形のままでいっか!というわけにはいかない。
このキッチンタイルの下がどうなっているのか分からないので、隙間から虫が入って来ても嫌だし、タイルが割れでもしたら怪我をしそうだからだ。しかも、場所が場所だけに、踏まずにそっとしておくことも不可能。
と、なれば修理に来てもらうしかない。
費用は大家持ちだろうと思ったので心配していなかったが、工事のメキシカンガイたちが大勢家の中に入ってくるのか…と思うと、あまり気に進まない展開だった。
でも、そんなことは言ってられない。メキシカン虫が大勢入って来る方が100倍無理だ。
さっそく大家さんに対応してもらえるように、夫が手配してれた。

工事はなかなか始まらない
来週末はセナマ・サンタ(私たちがオールインクルーシブホテルに行った長期休暇@メキシコ生活記録⑮)だし、どうなるかぁと思っていたら、週明けの月曜日に業者の人が来てくれることになった。メキシコ人にしては早い展開だ!と喜んだ。
午前11時に来るということで、私たちは夕方からのスペイン語のレッスンを休んで待機していた。セマナ・サンタが始まるまでにいくらかでも修繕してもらえるなら、それが最優先だ。
私は、翻訳アプリを駆使してスペイン語で文書を作り、業者の人に渡すことにした。
床のついでに、流れなくなったトイレ(2か所)と、風量が調節できないエアコンのリモコンのことも修理してもらうつもりだったので。それを全部スペイン語で説明するなんて、今の私には不可能なので、文書にまとめておいた。
準備万端待っていると、3人の男性がやってきた。大家の執事頭みたいな人と、工事会社の社員っぽい人、現場の職人みたいな人の3人。
私は文書を執事頭に渡し、いよいよ始まる工事に期待していた。
が、結果的に3人は約5分間の滞在で帰っていった。
3人で床をコンコンし、タイルを数え「大家さんに確認するね」と言い残し、帰っていった。なぜ床が隆起したのかも、今後どうする予定なのかも、何も告げずに彼らはアディオスしていった。
スペイン語のレッスン、ぜんっぜん間に合ったね、と子どもたちと顔を見合わせた。
このよく分からない視察は、工事開始まで3回続いた。
毎回タイル枚数を数えては帰っていった。
私たちは隆起したタイルの上で2週間以上を過ごした。

いよいよ工事開始
セマナ・サンタも終わり、子どもたちの春休みも終わった頃、やっと工事が始まることになった。
工事初日、朝8時から工事してもいいかと業者の方から打診されたので、快諾し、私は8時までにすべての家事を済ませて万端待機していた。トイレの修理も9時から来るらしい。メキシコ人は朝早くから働くんだなぁと感心しながら待っていたが、8時を過ぎても誰も来ない。
9時…10時…
あれ?何か事件にでも巻き込まれたの?
メキシカンが南国時間で生きていることは存じ上げておりますが、こんなにも?
それとも私が間違ってたの?と、自分を疑い始め、今日はもう来ないのかも、と諦めかけた午前11時前、やっとインターホンが鳴った!
サプライズしてくるよね。
ドアの前にはメキシカンニキ(アニキの略称)が4人立っていて、笑顔で挨拶。
誰も、一言も、遅刻のことには触れないww
私ももはや遅刻云々より、来てくれてよかったという気持ち。
連絡なしで約3時間の遅刻ですって。日本だったら、詐欺業者だって確定されちゃうのに十分な時間よね。でも、異世界転生中の私のハードルはすでに変形しているので、このくらいでは動じない。
でも、4人で来たのに1人だけ残して帰っていったのには多少驚いた。

その後は、メキシカンニキと2人きりの空間に。
見ず知らずのニキをすぐ信用するわけにはいかないので、わたしはリビングでパソコンを触ったり、本を読んだりしていた。
ニキは私と話しながら作業がしたかったようで、たまにスペイン語で話しかけてきてくれたのだが、いかんせん私は赤ちゃんレベルなもんですぐに分からなくなり、会話も続かない。気まずいが仕方がない。
しかも、ニキのために冷房をガンガンにかけていたので、寒い。
リビングが冬。真冬。私はちょっと暖かいスウェットに着替え、靴下をはき、長袖のパーカーを着て過ごしていた。
夫から、ときどき作業の様子を写真に撮ってと頼まれていたので、タイルを割っているニキを見やると、なんと足を投げ出して座っている。そのまま前を向いて、右手でガンガンとタイルを砕いている。
この感じ…テディベアだ。テディベアが真顔(テディベア顔)でタイルを砕いている。

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視線の先には私。
こんなテディベアスタイルで作業する人見たことないんですけど。
すると、今度は寝転がって作業しはじめた!寝ながら作業をキメるとは、すごい。異世界。もう笑えて仕方がない。でも、ニキはテディベア顔で作業しており、ときおり(頻繁に)休みながらも頑張ってくれている。
突然はじまった、この「笑ってはいけないメキシカンニキ」に、私は1人で悶絶していた。
ニキは昼食も取ったのか取らなかったのか分からないほど、頑張って作業してくれたけど、この調子じゃ永久に終わらないのでは?という成果を残し、17:30に帰っていった。
「明日また朝早くから来るね」と曖昧な約束をして。
朝早くからって、何時だよw
ちなみに、トイレ業者は12時に来た。

次の日、テディは9:30にやって来た。
さすがにテディも、このままじゃ永遠に終わらないと思ったのか、今日はアミーゴ(お友達)を連れてきて、2人で作業開始。
もちろん、テディベアニキが2人になっておもしろさも倍増。
だが、このアミーゴ、なんと音楽をかけはじめたのだ。
ありえる?私、すぐ横にいるんですけどw
確かに、メキシコの作業員さんたちは、(ときどき爆音で)音楽をかけながら工事をしたり、作業をしたりしている。それは知ってる。でも、それって屋外だからなんじゃないの?屋内でも同じだったの?w
たぶん、私が「音楽やめて」って言ったら止めてくれると思うんだけど、それで仕事がはかどるならまぁいいか、と私もすぐに順応してしまった。
でも、日本ならありえないよね?笑
施主の隣で断りもなく音楽かけながら作業するとか、クレーム案件だよねw

そんなこんなで修繕工事は約10日間続き、床は無事、平坦になりました。
毎日テディ時々アミーゴというラインナップで、作業は完了。
堂々としておかないとダメだよって言われたけど、私はやっぱり遠慮してしまって、テディがいなくなった隙をねらってお昼ごはんをチンしたりしていたので、なかなか気の休まらない極寒の日々だった。
9時に来たり、11時に来たりするニキたちに振り回されっぱなしだった10日間。でも最終日には、テディとの日々も今日で終わりか、とちょっとさみしくなってしまった。ありがとう、テディ。ちゃんと名前くらい聞けばよかったな。

ちなみに、夫の話では、メキシコ人(他の欧米人も?)は骨格的にしゃがむ体勢を取るのが難しいらしい。いわゆるヤンキー座りができるのは、日本人ヤンキーだけなんだって。だから、座り作業は、必然的に立て膝や寝そべり、あるいはテディベアスタイルになってしまうらしい。
日本で、もし寝ながら作業してる外国人労働者の人を見かけたら、サボってるんじゃなくて、骨格的にそういう仕様になってるんだと思ってくださればと思います。
ま、基本的に養生してくれないし、家中埃だらけで掃除すんの大変だったけど、私としては貴重な経験ができたので、万事結果オーライだな。

さらに、後からこっちに住む日本人のお友達に聞いたんだけど、「音を立ててタイルが突然盛り上がってくる」現象はあるあるらしい。だから、原因について何も言ってくれなかったのか!と妙に納得してしまった。「キッチンだけで済んでよかったですね」というお友達の言葉にゾッとしたよね。
もうどこも隆起してきませんように。
そもそも「隆起」って、理科の教科書でしか見ない言葉だよねwww

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