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ぴたん

昨日緊張して眠れない時間に、
布団に入り、ぼーっとしていたら、
屋根をつたって落ちる、雨だれの ぴたん という音が、
質感を伴って鮮明に、耳に入って来た。

クオリア。

ちょうどその時。

明日、あなたにとって文学とは何ですか、と聞かれた時にどうしようと思い、返答を考えていて、ひらめいた。


文学は、雨だれに似ている。
物語の書きだしは、雨だれのまさに落ちんとする瞬間に似ている。

雨粒が雫を成し、自らの重さに耐えかねて、落ちる。
これは文学の動機に似ている。

プロセスは、雨だれが、重力に引かれて落ちていく様子であり、
ぴたん という音は、読了後の余韻に似ている。

さらに、小さな雨だれは、誰も気づかぬうちに、大地の表面を微細に穿つ。

これはその本がもたらす、ささやかなインパクトに似ている。

大地の表面は、読み手の心。
数ミクロンであっても、心に読んだ痕跡を残す。

読めば読むほど、心の地表は削られる。
ぴたん、ぴたん

ぴたん、は地面に干渉する時、波紋をもたらす。
その震動は、自己を超えて、外部の世界にも波及する。

そうして、自己の心は形作られて行く。
他者との関係性も、形作られていく。




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