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文化は、生きるために必要?

人生の中で今ほど「不要不急」という言葉を聞く機会はないでしょう。
この2か月ほど、メディアからもSNSからも「不要不急」を見聞きしない日はありません。

今、自分や身の回りの人の健康を守るためには「不要不急」の外出は控えなければなりません。
そうなると、真っ先に「不要不急」とされたのは、音楽やスポーツなどの文化活動。
数々のイベントが中止されて、悲しい気持ちになり、生きる希望・癒しがなくなった…という人も多いと思います。
それだけでなく、経済的な被害を受けている方も多いでしょう。

しかし正しく「不要」「不急」を定義できる人は誰もいないのです。
というよりも、どちらも人それぞれの価値観が反映されるので、正しい「不要不急」はなのだと思います。

こんな状況になってから、人間にとって、文化的な活動や遊びってどれだけ必要なことなんだろう?と考え始め、歴史を読み解くこの本を読んでみました。


※※もちろん、感染防止のために不要不急の外出はするべきでないという前提です※※

人間は社会的な動物として発展してきました。
人間は馬や猫などの他の動物とは違って、生まれてすぐ立つことすらできず、子どもの間は社会の中で守られて育っていきます。

たくさんの子どもを産み育てていくには、人間同士が社会で上手くやっていくことが最重要視されていき、コミュニケーションを取るために言葉を発達させてきました。
この言葉によって、生活に必要な様々な事柄を伝え、大勢の見知らぬ人たち同士の集団で行動できるようになったのです。

しだいに言葉は、話し言葉だけでなく書き言葉が生まれ、集団の中での役職ができ、村ができ、信仰ができて、スポーツができ、税ができ、国ができ…と発展していきます。
これは全て人間が創り上げたもので、人間同士が結束して生きていくためにできました。
これが文化です。

特に近代になってからは、産業革命で働き方が変わったことによって、その文化が影響を及ぼす範囲がとてつもなく広がりました。
国全体、さらに今ではインターネットによって国すら超えて、文化が影響を及ぼしています。
同じアーティストの曲を聴き、同じスポーツを観戦する人たちは、遠い国の人同士でも、同じ文化に触れた同じコミュニティの人だと感じます。


つまり文化は、人間同士が結束し、生きていくために創られた必要不可欠なものだったのです。

文化は不要なものではなくて、食べることや働くことと同様に必要なもの。
ただし今回の感染防止のためには、たくさんの人が物理的に集まることはできません。
そうなると、人が集まりやすい文化は、他の文化に代替できるものから不要とされてしまうのかもしれません。

でも人の価値観はそれぞれ。
ある人にとって不要でも、ある人にとっては不可欠なんです。
物理的に集まることはできないけれど、それぞれが集まらない形で文化に触れられるといいな。


それにしてもこの本、私にとって久しぶりのハードカバーだし、長くて難しいと思いきや、小説を読んでいるようにすらすらと読めました。
タイトル通り、人類の進化から宗教、国家、経済、科学研究…まで一通りを知ることができるので、読む人によって注目ポイントが違って面白いと思います。


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