当世出版・メディア事情② noteをブラウジングして出会ったインフルエンサー
noteには、さまざまな人々が情報を掲載していて、自分の知っている世界とは異なる場所に誘ってくれる。1つのメッセージや作品を読み、その著者の違う投稿にアクセスしたり、関連するテーマで他の著者のページを訪ねることで、新たな情報が得られる。いろいろな意見や作品に接することは、実に楽しい。
「ネットサーフィン」という言葉はすでに死語になっているという見方もあるが、サーフィン(波乗り)は知的好奇心を刺激し、数々の出会いを提供してくれる。
マイクロソフトのソフトウエア Windows95の日本語版が発売された1995年は「日本のインターネット元年」と言われるが、この頃から「ネットサーフィン」という言葉が世の中に浸透した。ネットの海をサーフィンして、情報を探すという意味だ。
ネットサーフィンが死語になろうとしている背景には、検索機能が格段に進歩し、ほしい情報にたどり着きやすくなったことが大きい。ChatGPT(アメリカのOpenAI社が開発したAI(人工知能)によるチャットサービス)を使えば、質問に即座に回答してくれるし、文章を作成し、テキストの翻訳や要約もしてくれる。情報の海を彷徨うことなく、回答に導かれるようになった。
最近ではネットサーフィンに近い行為を、ブラウジングと呼ぶようだ。ブラウズとは閲覧する、ちょっと目を通す、見て回るという意味の英語だ。
偶然の出会いを求めて、note上を歩き回っていると、意外な発見がある。出版社に勤務し、経済誌の記者、編集者をしていたときに作成した一覧表に巡り逢ったのだ。
「世論をつくるマーケティング ブログが変えたクチコミPR」という2009年2月発売号の特集で、インフルエンサーのブログ(簡易型ホームページ)を35のジャンルに分類して紹介したが、一覧表のリストがnoteに掲載されていた。
エンターテインメント、暮らし、趣味、ビジネス・経営の4つの分野に分類し、趣味ではグルメ、ショッピング、旅行、インターネット・コンピュータなどに分けて、35ジャンルで、世論をつくる影響力のある方々のブログを紹介した。
「人気ブログリスト」を掲載された方は、noteでも2万人近いフォロワーを抱えるインフルエンサーで、コンサルタント、講師、ライターなど各方面で活躍されている。
2009年の時点で、インフルエンサーのリストを紹介した週刊誌の特集はなかったと思う。あるPR会社がブログなどで情報発信している人々の重要性、伝播力に驚き、社内用にリストを作成していた。その存在を知り、週刊誌で公開できないかと交渉し、了承を得て掲載したものだ。
リストに載っているブログ、ホームページをすべてチェックして、雑誌に掲載するかどうかを判断し、厳選してリストを作成した。当時は動画を投稿するケースは少なく、ブロガーがインフルエンサーの代表だった。
noteで有力ブロガーのリストを見たとき、感慨深いものがあった。リストに掲載されたことがその後の仕事にもプラスになったようで、インフルエンサーの特集を企画したことは編集者冥利に尽きる。
特集の記事では、企業とインフルエンサーの関わりをケーススタディで紹介している。サントリーがハイボールを世に広めたのも、きっかけはブロガー(インフルエンサー)のクチコミだった。
30人のブロガーを東京・日比谷のバーに招待し、バーテンダーによるハイボールの作り方をレクチャーし、飲み比べを行なうイベントを開催。ブロガーたちの情報発信力の大きさ、イベントの成功が新聞などでも取り上げられ、これがハイボールのテレビコマーシャルの開始につながっていく。
動画がインフルエンサーの主戦場に
その後、SNSが急速に普及する。SNS は、Social Networking Service(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の略で、「社会的なネットワークを築くためのサービス」のこと。
ソーシャルメディアとも呼ばれるが、Twitter(ツイッター、現在はX)、YouTube(ユーチューブ)、Instagram(インスタグラム)、TikTok(ティックトック)、Facebook(フェイスブック)、LINE(ライン)などが代表的なものだ。
インフルエンサーをキャスティングして、商品やサービスのPRをする時代になった現在、インフルエンサーの活躍の場はどうなっているのか。
多くの登録者やフォロワーを抱え、再生回数が多いSNSは、広告の動画を流して収入を得たり、メンバーシップ制にして月額料金を取るなど、収益化を図りやすい構造になっている。そうしたインフルエンサーの頂点にいる人々を紹介しておこう。
東京証券取引所のプライム市場に上場するユーザーローカルは、ビッグデータの解析ツールやAIを駆使した記事作成など業務支援ツールを開発・提供しており、SNSのフォロアーなどの調査も行なっている。
同社は、国内のSNSユーザー2600万人のアカウント、企業Facebookページ120万件、数百億件の投稿データ、5500万枚の写真、220万件の動画データなど、日本トップクラスのソーシャルメディアのビッグデータを保有している。
ユーザーローカルが発表しているデータに基づいて、インフルエンサーの顔ぶれを見てみよう。昨今は動画の影響力が大きい。
YouTube人気ランキングは以下の通り
https://youtube-ranking.userlocal.jp/
チャンネル名 登録者数
1 Junya.じゅんや 30,000,000
2 Sagawa /さがわ 24,800,000
3 ISSEI / いっせい 18,200,000
4 spider-maaaaaaan / スパイダーメーン 13,800,000
5 Kids Line♡キッズライン13,800,000
6 Pokémon Kids TV 12,600,000
7 HikakinTV 11,900,000
8 せんももあいしーCh Sen, Momo, Ai & Shii 11,200,000
9 恋愛 とと 11,200,000
10 はじめしゃちょー(hajime) 10,600,000
11 Boram Tube Play 9,460,000
12 THE FIRST TAKE 8,580,000
13 Fischer's-フィッシャーズ- 8,320,000
14 きまぐれクックKimagure Cook 8,070,000
15 Travel Thirsty 7,960,000
16 Nino's Home 7,700,000
17 タキロン Takilong Kids' Toys 7,580,000
18 SUSHI RAMEN【Riku】 7,430,000
19 SMG4 // Glitch Productions 7,350,000
20 東海オンエア 7,020,000
TikTok人気ランキングを以下に掲載
TikTokの人気ユーザー(TikToker)や芸能人・有名人を調査し、総フォロワー数を掲載。他にも総ハート数(称賛を表わすマーク)や、前日からのフォロワー増加数のランキングもある。
https://tiktok-ranking.userlocal.jp/
総フォロワー数
1 バヤシBayashi 53,400,000人
2 Junya/じゅんや 43,800,000人
3 michaeljackton.official 12,700,000人
4 ウエスP(Mr Uekusa/Wes-P) 12,200,000人
5 しゅん(おおしま兄妹) 11,500,000人
6 straykids_japan 11,300,000人
7 ISSEI/世界の英雄になる男 10,900,000人
8 景井 ひな 10,900,000人
9 Panna 10,100,000人
10 Buzz Magician Shin シン 9,900,000人
11 Saito さいとう 9,900,000人
12 内山さん(Uchiyamasan) 9,600,000人
13 HAYATAKU 9,100,000人
14 コグミkogumi 8,200,000人
15 SHUZO 大平修蔵 俳優 7,500,000人
16 Remitan レミたん 7,000,000人
17 ゆーり (23)yuri 7,000,000人
18 新しい学校のリーダーズ 6,600,000人
19 柴犬コマリ 6,500,000人
20 あさみみちゃん 6,400,000人
Instagram人気ランキングを以下に示す
https://instagram.userlocal.jp/
総フォロワー数
1 Naomi Watanabe 10,010,000
2 中本悠太 YUTA 9,670,000
3 Sakura Miyawaki 9,460,000
4 𝐑𝐎𝐋𝐀🇯🇵🇧🇩🇮🇳 9,140,000
5 i_am_kiko水原希子 7,860,000
6 Nissan 7,320,000
7 Tasty Japan 7,230,000
8 Ars 🎗 6,620,000
9 TOYOTA 6,460,000
10 SHOTARO ショウタロウNCT 6,280,000
11 山﨑賢人 6,140,000
12 藤田ニコル 5,990,000
13 Shohei Ohtani大谷翔平 5,910,000
14 KAZUHA of LE SSERAFIM 5,860,000
15 Totosan 恋愛とと 5,760,000
16 Mackenyu新田真剣佑 5,510,000
17 Honda 5,410,000
18 TWICE JAPAN OFFICIAL 5,290,000
19 Tomohisa Yamashita山下智久 5,250,000
20 森咲智美 Tomomi Morisaki 4,990,000
X(旧Twitter)人気ランキングは以下の通り
フォロワー数
1 BTS JAPAN OFFICIAL 13,781,755
2 前澤友作@MZDAO 10,075,246
3 松本人志 9,354,731
4 ローソン 7,993,064
5 有吉弘行 7,704,430
6 スターバックス コーヒー 7,519,263
7 HIKAKINヒカキン 7,139,120
8 セブン‐イレブン・ジャパン 6,724,118
9 マクドナルド 6,145,925
10 はじめしゃちょー(hajime) 5,412,905
11 三上悠亜 5,213,229
12 ファミリーマート 5,051,662
13 きゃりーぱみゅぱみゅ 4,943,349
14 橋本環奈 4,542,757
15 広瀬すず 4,223,771
16 任天堂 4,178,325
17 ROLA 4,024,311
18 日本経済新聞 電子版 3,891,637
19 NCT_OFFICIAL_JP 3,801,026
20 Fashion Press 3,776,599
他の調査会社やSNS関連企業も、SNSで活躍するインフルエンサーの影響力を調査し公表している。ソーシャルメディアマーケティング事業などを行なうBitStar(ビットスター)は、独自に開発した分析ツール「BitStar Database(ビットスターデータベース)」に基づき、動画クリエイターや動画チャンネルのランキングを発表している。
チャンネル総再生数ランキング(通常動画のみ)
動画再生数ランキング(ショート動画を除く)
新規開設チャンネルランキング
YouTube PR動画ランキング
Instagram PRリールランキング
TikTok PR動画ランキング
TikTok使用楽曲ランキング
2023年7月~9月のデータが2023年10月16日に発表されたが、チャンネル総再生数ランキング(通常動画のみ)のトップ20を以下に掲載する。
チャンネル総再生数 TOP20
1位 1億8270万回 もちまる日記
2位 1億5439万回 FNNプライムオンライン
3位 1億4626万回 東海オンエア
4位 1億0742万回 Fischer’s-フィッシャーズ-
5位 9246万回 HikakinTV
6位 8098万回 TOHO animation チャンネル
7位 7598万回 朝倉未来 Mikuru Asakura
8位 7397万回 TBS NEWS DIG Powered by JNN
9位 7365万回 Junya.じゅんや
10位 7246万回 Snow Man
11位 6827万回 THE FIRST TAKE
12位 6779万回 SPOTVNOW
13位 6681万回 はじめしゃちょー(hajime)
14位 6334万回 (パーソル パ・リーグTV公式)PacificLeagueTV
15位 5941万回 コムドット
16位 5729万回 oricon
17位 5436万回 キヨ。
18位 5425万回 ANNnewsCH
19位 5397万回 JO1
20位 5332万回 Sagawa /さがわ
このデータはYouTubeに投稿された動画で、期間内に多く再生されたチャンネルのランキング。東海オンエア、HikakinTV、Junya.じゅんや、はじめしゃちょー(hajime)、Sagawa /さがわ、はYouTubeの登録者数でもベスト20にランキングしている。
テレビやラジオに出演していなくても、世の中を動かすインフルエンサーが数多く存在している。彼らの伝播力はすごい。それだけに注意しなければならないことがある。影響力を持つことは、権力を持つことを意味する。権力を持った人は、その力を自覚しなければならない。
広告であると明記せずに、消費者に商品やサービスを紹介するステルスマーケティング(ステマ)が問題になっている。芸能人やインフルエンサー、アナウンサーなどが企業の意向に沿って商品やサービスを紹介し、さまざまな利益や恩恵を受けていた。
2023年10月1日から、ステルスマーケティングは景品表示法(景表法)違反となり、広告であるにもかかわらず、それを隠してステルスマーケティング(ステマ)行為をした場合、広告主である企業に罰則が科されることがある。
ステマ規制に違反すると、まず措置命令が出され、投稿内容の編集や削除などを求められるが、措置命令を無視した場合、2年以下の懲役または300万円以下の罰金、またはその両方が科せられる。
インフルエンサーは景品表示法の規制の対象ではないが、動画や紹介記事の中で、広告であると明記して投稿するよう、企業サイドから求められる。インフルエンサーの影響力は世の中の消費や流行、ライフスタイルを牽引しただけではなく、法律の改正にも影響を及ぼしている。
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