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新人弁護士必見?民事期日出頭の実務 第2回「開廷〜期日審理の概要」

前回からの続き。

■バーの中へ

◯◯代理人どうぞ。そう言われ、バー(※)の中に入ります。

※法廷と傍聴席との間の仕切りをバー(bar)といいます。英語のbarには法曹や法曹界という語義があり、米国の法律家団体はAmerican Bar Aassociationといいますし、米国の司法試験はBar Examといいます。法曹資格とは、仕切りの中に入る資格なわけですね。

■あなたの席は、こちら

座るべき席は、原告の場合、裁判官席(法壇)に向かって左側(法壇から見て右側)、被告の場合、同じく向かって右側(法壇から見て左側)です(※)。

※刑事訴訟で「原告」に相当するのは検察官、「被告」に相当するのは被告人ですから、法壇に向かって左が検察官、右が被告人となりそうです。しかし、現実の法廷では逆になっていることがよくあります。これは、身体拘束を受けている被告人が入廷する通路との兼ね合いです。逃亡防止の趣旨で、通路の反対側が被告人席、通路のある側が検察官席となっているのです。なお、被告人席に着くのは弁護人だけで、被告人は法壇の正面又は被告人席の前にある長椅子に座る例が多いです。そのため、被告人席ではなく「弁護人席」と呼ばれます。

補助参加人、共同訴訟参加人及び承継参加人の場合、どちら側に参加しているかによります。独立当事者参加人については、私の記憶があいまいになっていますが、たしか、原告と同じだったと思います(※)。

※経験した例は、被告に対してのみ請求を定立した(原告の請求に対しては棄却を申し立てた)独立当事者参加の例です。未経験ですが、原告に対してのみ請求を定立した独立当事者参加人が、原告と横並びに座るのは気持ち悪いような気がしますね。

■席に着いたら

一礼して座ります。席に着いたらまず、机の上に事件記録を並べます。
前回確認した書証原本は、一式にした上で、書記官に渡しやすいように、原告側であれば机の左側、被告側であれば机の右側に置くとよいでしょう。

記録を出して並べる作業は重要です。慌てる必要はありません。周りの目は一切気にせず、ゆっくりやりましょう。

■裁判官、入廷

やがて、裁判官が専用の扉から入ってきます。着席する前に裁判官が一礼するので、それに合わせて立ち、一礼しましょう。自分より先に裁判官が入廷済みの場合は、一礼してから着席しましょう。

刑事の法廷では「起立!」とか「ご起立ください」と言われますが、民事法廷では言われないことが多いです。

とはいえ、法廷は厳粛な空間です。手続の開始に当たり、礼を尽くしてもやりすぎることはないと思い、私は、起立・礼をするのが美しいと考えています。

■呼上げ

改めて席に着く頃、裁判所書記官が事件の呼上げを行います。具体的には、事件番号と当事者名、事件名を口頭で述べます。

民事訴訟規則62条は「口頭弁論の期日は、事件の呼上げによって開始する」と定めています。呼上げは期日の内外を画する重要な手続です(※)。手続が適法に行われるかどうかを監視することは代理人の重要な職務の一つですから、形式的なこととはいえ、きちんとそれがなされているかを注意深く聞きましょう。

※たとえば、裁判所法71条1項は「法廷における秩序の維持は、裁判長又は開廷をした一人の裁判官がこれを行う」と定めており、期日内であれば裁判長の法廷警察権が発生します。なお、期日外であれば、法廷(となる部屋)の管理は最高裁の「裁判所の庁舎等の管理に関する規程」2条1項により所長に施設管理権があります。

なお、「呼上げ」というと大声で叫ぶような語感があるように思いますが、実際には、普通の話し声くらいです。

■期日の審理

いよいよ審理が始まります。
民事訴訟の期日の内容は、

□主張に関する事項
□証拠に関する事項
□進行に関する事項

の3つに大別され、かつ、この順で行われるのが通常です。

解説する前に、まずは、よくある期日の例(第1回弁論)をみてみましょう。

裁判官「原告は訴状を陳述しますね?」
原告代理人「はい、陳述します」
裁判官「被告の答弁書の陳述を擬制します。証拠の関係ですが、原告代理人は甲号証原本はお持ちですか?」
原告代理人「持参しております」
裁判官「提出してください」
原告代理人(書記官に証拠原本を渡す)
裁判官(書記官から受け取った証拠原本を確認。確認後、書記官に証拠原本を戻す)
原告代理人(書記官から証拠原本を受け取る)
裁判官「甲1から甲5の2まで証拠説明書のとおり取り調べ済みです。進行ですが、被告が反論を予定しているとのことなので、まずはそれを待つということでよいでしょうか?」
原告代理人「はい」
裁判官「次回以降、弁論準備手続で進行したいと思います」
原告代理人「異議ありません」
裁判官「2月8日午後、2月15日午後のご都合はいかがでしょうか」
原告代理人「8日午後2時以降ならお受けできます。15日は差し支えます」
裁判官「それでは、次回は2月8日午後2時30分、弁論準備手続期日とします。当部の書記官室にお越しください。被告の書面提出期限は2月1日とします。本日は以上です」
原告代理人「ありがとうございました(一礼)」

次回は、個々のやりとりについて解説します(続く)。



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