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新人弁護士必見?民事期日出頭の実務 第1回「開廷まで」

今回から何回かにわたって、弁護士が民事訴訟の期日に出頭するときの所作のあり方や心構え、留意点等々について書いてみます。訴訟中心の弁護士として約10年、私なりに考えながら「こんなふうにするのがいいんじゃないかな」と工夫してきた到達点ですので、特に新人弁護士やこれから弁護士になる司法修習生の方に参考にしていただきたいな、と思います。ベテランの先生からのご指摘やご批判を恐れているわけではありません()

■開廷表をチェック

時間に余裕をもって裁判所に到着し、法廷前で待機します。開廷予定時刻のできれば10分前、遅くとも5分前には着いておくべきです。

まずは、法廷前に貼り出されている開廷表をチェックし、予定の事件がちゃんと載っているかを確認します(万が一載ってなければ、正しい法廷を確認するため担当部に電話します。)。

あわせて、担当裁判官の氏名を控えておきましょう。後でも述べますが、裁判官がどんな人かに関心を持つ依頼者は多いですし、自分の事件(自分が依頼者から預かっている事件)を誰が裁くのかを知ることは必要かつ有益です。

■手続の予定を確認

待機している間に、その日に予定されている手続を確認しておきます。たとえば、原告代理人として第1回口頭弁論期日に出頭する場合、

□訴状陳述
□答弁書擬制陳述
□甲1から甲5の2まで取調べ
□今後の進行につき協議
□次回期日指定

といったようになります。

これはそのまま依頼者への報告にも使えます。なので、頭の中で整理するだけでなく、リーガルパッドや手帳に書いたり、PCならWordなどの文書作成ソフトに入力しておくのがおすすめです。

書証原本の取調べが予定されている場合は、原本を取り出しやすいように準備しておきます。この時点で手に持ってもいいですが、落として散らかるとひどいことになるのでおすすめしません。

■法廷に入ったら、まずは出頭カード

定刻が近づいてくると、ドアのロックが解除され、「開廷中」のランプが灯ります。さあ、法廷の中に入りましょう。

法廷に入ると、裁判所書記官がいます。名刺を渡す必要はありません。軽く会釈したり、一言「こんにちは」と挨拶したりするのがちょうどいいと思います。

入ってまずすべきことは、出頭カードへの署名です。代理人氏名が印字されている場合、自分のところに○を付けます。出頭予定のない代理人も印字されていることがありますが、私はこれを二重線で消すようにしています。

出頭しない人の名前を書いてはいけません。出頭しない人の名前に○を付けてもいけません。当たり前のことですが、以前問題になったことがあります。

民事訴訟では、同一時刻、同一法廷で複数の事件の口頭弁論が予定されていることがよくあります(※)。このような場合、出頭者が揃った順に審理を行うのが通例です。

なので、原被告双方の出頭者が揃ったら、出頭カードを書記官に渡しましょう。「揃いました」と添えるといい感じです。

(※)最近は、コロナ禍で法廷内の人数を減らすためなのか、同一時刻に複数の事件を指定するという運用は減り、5分刻みで指定するという運用が増えています。

複数の代理人で出頭予定で、自分が早く着いた場合、二つの対応があります。

一つは、「署名せずに待っておく」です。もう一つは、「◯◯代理人も出頭予定です、などと書記官に断っておく」です。こうしておけば、揃わないうちに審理が始められてしまうということはないはずです。後に来る人が困らないように、自分だけ署名して書記官に提出するのはやめましょう。

第1回口頭弁論で被告欠席予定の場合、原告代理人が出頭すれば出頭者が揃ったことになります。なので、「被告欠席予定です」などと告げながら書記官に出頭カードを渡すとよいでしょう。

■傍聴席で待機

出頭カードに署名した後は、傍聴席で呼ばれるのを待ちます。当事者席にいきなり座っていけません。傍聴席ではスマホを見ていても事実上大丈夫(※)ですが、電話はやめましょう。飲食もダメです。

(※)刑事の法廷ではかなり厳しく携帯、スマホをしまうように言われますが、民事の法廷では厳しく言われません。なぜなのかはわかりません。

待っている間に他の事件の審理が行われるようなら、担当裁判官のキャラクターの把握に努めましょう。厳格な感じ、柔軟な感じ、当事者の主張立証に対する突っ込み、話し方などなど、裁判官により千差万別です。依頼者は「裁判官はどんな人ですか?」と興味を持つ方も多いので、自分なりに説明できるようにしておくと役立つかもしれません。

「◯◯代理人どうぞー」

お、呼ばれましたね。バーの中に入っていきましょう。(続く


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