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【小説】Earth Flare 1-2

「・・・さしっ!まさしって!なぁ!」誰かが匡の体を揺らしていた。朝なのだろうか。憂鬱だ。有声音で大きな声だったがしかし,どこか弱い。
 目を開けると眩しかった。自分は教室にいる。窓の外を見ると,日は高く上っていた。南中の位置から西に二十度ほど傾いている。朝ではなかった。居眠りをしていたのだろうか。
 何故か,教室の生徒全員が机の上に,それは伏しているというよりただ前のめりになったり,机の横で椅子から転げ落ちて倒れたりしている。自分は寝ぼけているのだろうか,非常に奇妙な光景なのに,しかしすごく落ち着いていると匡は思った。
 匡が右を振り向くと,紫珠がいた。悲しみ,不安,恐怖,どれが正しいのかわからなかったが,匡が今まで見たことのない表情をして,静かに匡を見つめていた。
「どうしたん?」匡は聞いた。
 弱く風が吹いていた。紫珠の目の上までかかった前髪が流れる。風は,心地いい。幼い頃,匡はよく考えた。風は地球のどこで,どうやってできて,どこへとんでゆくのか。どこから吹いてきたのが,今自分を通って,これからどこまでゆくのか。
 匡の目を見つめる紫珠の黒い目から,涙がぽろぽろと落ちた。「わからへん…。みんな死んでる。」
「・・・え?」何が死んでいるのだろう。匡はわからなかった。
 紫珠は泣いていた。静かだ。そう思った。風はやんでいる。通り過ぎたのだろうか。それとも消えたのだろうか。
 みんな教室で死んでいた。黒いままの目で死んでいた。でも彼らは何も認識していない。目は開いているのに。

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