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桜と実家の風呂のこと

連休らしく実家で過ごしている。

遠路はるばる帰省を果たしたかのような物言いだが、隣の区である。いつでも来られるのだが、連休を連休らしくするために帰ってきた。

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実家の楽しみといえば朝食と風呂と酒(貰い物であろう、ちょっとよい酒)だ。つまり、昼間は暇の極みである。

焼きホッケと具沢山の味噌汁、漬物、塩辛という、血圧爆上げの塩分過多な実家朝食を平らげ、早くも手持ち無沙汰となった。散歩でもしよう。

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我が実家はザ・住宅街のど真ん中にある。したがって、散歩といっても家々の間を縫うように進むだけだ。伏目がちに、ポケットに手を突っ込んで歩く。さながら空き巣の下見である。

天気がよい。
洗車に勤しむおっさん、BBQに忙しいファミリーをちらほら見かけた。連休の魔法で、人々の暮らしが日常というフレームを少しハミ出している。素敵なことだ。

満開の桜もちらほら見かけた。公園の片隅、塀に囲まれた庭、路傍。
まごうことなき春。私は花で季節を感じる程度に歳を取った。素敵なことだ。

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円山公園を染める数百本の桜もよいが、自分の場所でひとり咲く、住宅街の桜たちもまたよい。

白樺並木に堂々と咲く桜。樹木界初のレジスタンスである。

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1時間ほどで実家へ戻った。
やはりやることはない。Twitter(と意地でも呼ぶ)のTLを眺める。

「有名サウナープロデュースのサウナがオープンしたので、早速行ってきました🧖‍♀️🛀控え目にいって最&高💯😂🤣」

「丸井でやってる伊勢丹サウナ館でサウナハット3つも買っちゃった 笑笑」

よい。もちろんよい。全然よい。

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円山公園の桜はよい。もちろんよい。全然よい。

でも私は、住宅街で寂しくも力強く咲いている桜の方が好きだ。

シンパシーか。天邪鬼な性分のせいか。あるいは、好きに理由はいらないとかいう。

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実家の風呂で色々考えた。

湯上がりには、貰い物のちょっとよい酒をと思っていたが、冷蔵庫に転がっていた安い缶ハイボールにした。

これでよい。いや、これがよいのだ。

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