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【学生の質問】 AI によってゲーム業界はどう変わりますか?

私は、ゲーム業界でも働いていた経験があるため、学生からよく質問を受けます。
最近受けた質問に、以下の様なものがありました。

AI によってゲーム業界はどう変わりますか?

こういう質問をする学生に、ちょっと注意してほしい点があるので、
この質問への本音を記事にしてみました。



注意点① AI 技術は昔から使われている

現在、AI と呼ばれているものは、主にディープラーニングの技術を用いたプログラムのことを指すと思います。
これらの技術は、10年以上前(2010 年代初頭)から既にゲーム業界では導入が始まっていました。

以下は、ゲーム業界の主要なカンファレンスである CEDEC 2015 および GTC 2015 の記事です。

メディアの騒ぎだけを見ていると、最近急に変化が始まったかのように見えますが、そんなことはないわけです。

【教訓】
メディアが騒ぎ始めたら、10 年は遡って状況変化を見てみよう。

逆に言えば、メディアが騒ぎ始めたら、それは業界に深く浸透した後であり、変化の山場は過ぎている可能性もあります。

注意点② 変化のなかった時代はない

メディアの騒ぎだけを見ると、
「今まで業界には変化がなく、これから急激な変化が始まる」
かのように見えますが、そんなことはありません。

ひと昔前には「クラウド技術が世界を変える」などと言われていましたし、その前には「VR が世界を変える」「IoT が世界を変える」なども言われていました。

素材提供:Pixabay

つまり、変化は常に起きていて、業界は常に変化に対応しているというのが実情です。

個人的に変化の大きかった 90後半~00年代初頭

これは私の個人的な感想ですが、今よりもこの頃の変化の方が激しかった印象があります。

①2D から 3D への変化
 ⇒ 描画技術の刷新、3DCG の職種が追加
ゲーム機への OS の導入
 ⇒ ゲーム開発が組込からアプリへ
 ⇒ ミドルウェアを使ったマルチプラットフォーム開発へ
インターネットの台頭
 ⇒ ビジネスモデルの変化

ゲームの開発手法やビジネスモデルの変化が立て続けに起き、経済などの外的要因も合わさって(日本のデフレ化、米国の IT バブル)業界が大きく変化しました。
ゲーム企業の合併が相次いだのも、この頃でした。

【教訓】
過去に起きた変化を見て、今後も同様に変化していくことを肝に銘じよう。

現在におていも、AI 以外に注目すべき技術は沢山あります。
メディアが騒いでいる事象だけ見ていると、逆に変化に取り残される危険すらあります。

注意点③ どう変化するか?より大事なこと

結局、未来がどうなるかは分かりません。そして、専門家の予想も大体外れます。
あまり、そのような情報には踊らされないようにしましょう。

では、ゲーム開発者たちはどのように、注目すべき技術を見つけているのでしょうか。

ゲーム開発者は、常に「何か面白いものがないか探している」

これが答えです。

本記事の主題となっている AI に関しても、2001 年出版の
『Game Programming Gems』という書籍(当時のゲームプログラマー御用達の本)に、100 ページ余りを割いて特集されています。

理由は、当時メディアが騒いでいたわけでも、AI が世界を変えるからでもありません。「AI を使って何か面白いものが作れないか?」というゲーム開発者たちの好奇心です。
結局、これが一番大事なのです。

【教訓】
常に身の回りにある技術情報にアンテナを張り、
何か面白いものが作れないか探求し続けよう。

学生たちには、メディアの情報に一喜一憂せず、「面白いものを作る」という気持ちを忘れずに業界を目指してほしいと思います。
業界に変化をもたらすのは、AI 技術ではなく、その探求心だからです。

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