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ドライブ・マイ・カー 結縁のない父と娘の物語

 ドライブ・マイ・カーをDVDで観た。登場人物がかなり喋るし、劇中に入れ子式でチェーホフの舞台も展開する。しかも舞台は手話を含めた多言語演劇である。邦画だったが、字幕が頼りになる。活字好きには垂涎の作品となるかもしれない。

そんな本作の主人公の俳優兼脚本家の家福(西島秀俊)には過去に2つの悲しい過去を持つ。1つは娘を、もう1つは妻を失くしていることだ。

意気消沈している家福は言葉を発する俳優業をできずにいる。妻を亡くしてから二年後、脚本家として広島に滞在した際に、愛車にドライバーをなかば強制的に付けられる。ドライバーのさつき(三浦透子)とは打ち解けられずにいたが、車の中で会話を重ねるうちに彼女の悲しい過去が明らかになる。北海道で中学生の頃から水商売の母親を乗せて運転していたこと、そして運転時の睡眠がルーティンだった母親に少しでも車が揺れると暴力を受けていたため運転スキルを上げていたこと。

さつきの母親は北海道の雪崩事故に巻き込まれ死亡したのだが、さつき曰く母親を見捨てて家から一人避難し「母親を殺してしまった」という罪悪感にさいなまれていた。


フランス上映のビジュアル
ドライブ・マイ・カー公式Instagramより

一方、家福の妻は娘を亡くしてから虚脱状態になり、俳優を家に連れ込んで不倫を行っていた。妻の不倫の現場に出くわした家福は妻を理解できないまま、くも膜下出血で妻を突然亡くす。


母を亡くしたドライバーのさつきは、家福の娘が生きていれば同じ年の23歳だということもあり二人は血の繋がらない父娘のような関係にな る。

家福はさつきへの理解を通して、俳優業にも力を注げるようになる。

そして時が経ち、韓国で家福の車を走らせるさつきの姿があった。緑内障の家福は車を運転する期間が限られていた。もしかしたら家福
は緑内障がすすんで、ドライバーとしてさつきを雇って韓国に渡ったのかもしれない。

不幸を重ね合わせた人間がわかりあえ、心を豊かにすることが共生社会に繋がることを教えてもらった映画だった。

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