【エッセイ】頑張らない美学
私達は頑張ることが好きだ
だって、幼い頃から「頑張ればできる」って言われ続けてきたから
でも成長していくにつれ
「頑張ってもできない」ことに直面していく
その時、いつも私達は思う
―― 頑張ればできるんだ
と……
そしていつもコツコツと努力を積み上げていく
―― 頑張ればできるんだ
いつか、このトンネルから抜けられる
と……
人間は不思議だ 黒いものを白いと言われて育つと黒いものも白く見える
―― 頑張ればできる
幼い私達にこう教えた大人だって、知っていた
「頑張ってもできないことがある」ことを
だから、頑張らなくもできてしまった人に嫉妬する
粗を探し、最後には
「あの人は努力していないのに成功した。だからいつかは失敗する」
と締め括る
頑張る人は素晴らしい、頑張る人は美しい
醜いアヒルの子だって、最後は白鳥になったじゃないか!
でも、みんな気が付かない
物語の『アヒル』は『白鳥』の子だったってことを……
私達がどんな目的を抱いて進むかは自由だ
それに向かって頑張ることも私達の自由だ
でも、頑張らないことも自由なんじゃないかな?
頑張らなくて目的を達せたならそれに越したことはないと思うのも自由だ
私は無理に頑張ることをやめてみた
妥協したわけではない
日々の生活を流れるように受け止めてみた
そうしたら、新しい喜びや感動が増えた
朝、無事に目覚めたこと…… 人間の人生なんて短い
今日も五体満足で動くことができる
お腹が空くこと…… 人間の人生なんて短い
食事できる回数だって限られている
日光を浴びれば尚更嬉しい
夜、無事に家に帰れたこと…… 人間の人生なんていつ何が起こるかわからない
今日も体を休めることができる
そうやって私の人生は流れるように過ぎていった
周囲は言った
―― 婚活していい人探したほがいいよ。家庭がなければ、老後さみしくなるから
―― 頑張って貯金したほうがいいよ。老後は大変になるから
頑張ることをやめた私にはそれは既に脅迫めいた言葉にしか聞こえなかった
そして今、
あの日と同じように私は朝目覚めている
あの日と同じように日光を浴びる喜びを感じる
あの日と同じように夜、今日を生きたことに満足して体を休める
ただ一つ、あの日と違うことがある
私の傍には一緒にそれを分かち合えるパートナーがいる
おわり
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