見出し画像

【取材記事】エシカルフラワーSHOP「ethica lab」蔵前にオープン。独自製法のドライフラワーで「フラワーロス」削減に取り組む。

株式会社ethica(エシカ)は、「ひとつひとつ、エシカルに」を企業スローガンにロスフラワーを100%使用し、独自の乾燥技術で特別なエシカルフラワーを制作しています。エシカルの定義を「社会」「地球」「人間」の現在と未来に貢献する活動の先にサステナブルな世界が実現されることとし、プロセスとクオリティに妥協することなく、エシカルなビジネス・サービス・プロダクトを生み出しています。今回、東京・蔵前にロスフラワーを扱うエシカルフラワーSHOP「ethica lab」(エシカル・ラボ)をオープン。新店舗のオープンに伴い代表の藪中様に、お話をお伺いしました。

【お話を伺った方】

藪中 桂佑(やぶなか けいすけ)様 
株式会社ethica 代表取締役CEO
新卒でりそな銀行に入社、法人営業・法人ソリューション業務を経験。 2016年 株式会社エス・エム・エスキャリア(現 エス・エム・エス)に参画、医療法人に対し経営・HR支援を行う。
病院事務長・病院人事部長を歴任。 2019年 株式会社MyReferに参画、営業責任者・事業推進責任者・新規事業責任者を歴任。クライアント先でCHRO業務に従事。 2021年 経営・HRコンサルティングを行う株式会社laurus(ラウルス)を設立。経営・HR支援を行う。クライアント先でCOO・CHROを歴任。 2022年 株式会社ethicaを創業、代表取締役CEOに就任。



■SDGsの取り組みが「わかりやすい」事業を立ち上げ、あえて難しい「フラワーロス」削減に挑戦。

mySDG編集部:株式会社ethica(以下、エシカ)創業の経緯からお伺いします。

藪中さん:創業の経緯は大きく2つあります。ひとつは、私は企業様の経営や人材部分でのコンサルティングをする会社の代表もしておりまして、昨今、企業戦略や中長期計画を組み立てる際にSDGsを考えることが必須になっています。
大企業様ですと膨大なアセットをお持ちなので、行っている事業がSDGsにどうつながっているのか、見えにくい部分がありました。それであれば、事業そのものがダイレクトにSDGsに直結していて、わかりやすいスモールビジネスをやってみたいという想いが生まれました。

ふたつめは、私の友人であり、現在のビジネスパートナーが30年以上のフローリスト経験者で、お花で作品を作る職人なんです。その友人から、花業界で昔から問題になっている「フラワーロス」を、花業界全体をまき込むような仕組みで、解決する方法がないのかと相談がありました。この2つがきっかけになり、フラワーロスに取り組むきっかけになりました。

mySDG編集部:すでにコンサルティング業をされている中で、新たにお花業界で起業するということに個人的にご理由はあったのでしょうか?

藪中さん:新たにビジネスをする上で、やはり「実業」をやってみたかったんです。ソフトウェアを用いたビジネスではなく、在庫を抱え、人がものづくりをして、作ったものが目に見え、人に届くという、“リアルビジネス”をやってみたかったんですね。
お花に関してはある意味 “趣向品” になると思いますので、生活の中では食品などより、優先順位が高くはない存在です。必要性という意味で難易度の高いお花業界でのビジネスに興味がありました。

mySDG編集部:あえて、難しい業界の「ロスの削減」に取り組まれたんですね。コンサルティング業とは全く違う分野への挑戦ですね。

藪中さん:エシカの考える“エシカル”とは「社会」「地球」「人間」に対して貢献するプロダクト、サービス、ビジネスを構築することによって、持続可能な世の中を作っていくということとしております。コンサルティング業の株式会社laurus(ラウルス)とは全く別分野になりますね。


■「色」「形状」「つや」が特徴の独自製法で仕上げる「エシカルフラワー」 誕生のきっかけは、趣向品なのに「なま」にミスマッチを感じたことから。

mySDG編集部:プレスリリースに掲載されていた、「ロスフラワー」と「エシカルフラワー」の違いを教えて頂いてもよろしいでしょうか?

藪中さん:「ロスフラワー」というのは商標登録がすでにされているものですので、商標的な意味はあるのですが、弊社の考えるロスフラワーというのは、生産・市場・小売り・消費の4つのサプライチェーンの中で廃棄予定の花になります。そのロスフラワーを原材料として弊社の独自技術でドライフラワーに仕上げたものを「エシカルフラワー」(商標登録申請中)としています。

mySDG編集部:なるほど。「エシカルフラワー」は独自の技術でドライフラワーにしたものとのことですが、通常のドライフラワーとの違いはあるのですか?

藪中さん:通常のドライフラワーは「ハンギング」という「吊るして干す」製法で、通常1〜2週間かけて仕上げます。わかりやすく表現すると、時間をかけてじっくり水分を飛ばすんですね。。それに対し、弊社の「エシカルフラワー」は機械にかけて乾燥させ一瞬で水分を飛ばします。仕上げる時間を極端に短くしたことにより、花の中に含まれる「酸化酵素」による廃色を極力防ぎ、ドライフラワーにすることができます。「色」「形状」「つや」が生花に近いドライフラワーに出来上がります。

mySDG編集部:お写真を拝見すると、通常のドライフラワーと比べ、色も全く違いますし、花弁がとても柔らかそうですね。

藪中さん:おっしゃる通りです。実は、花弁部分の柔らかさは、お客様のご要望に沿って、硬めから柔らかめまで調整することが可能なんです。

mySDG編集部:通常のドライフラワーでは実現できない技術ですね。驚きです。しかし、
なぜ、生花をドライフラワーにしようと思ったのですか?

藪中さん:花は完全な”趣向品”であるのに「なまもの」なんですね。私はそれをシンプルにミスマッチだなと感じたんですね。
買ったら出来るだけ長く使う。お花であれば、ドライフラワーにするというのが、一番持続可能なのではないかなと考えました。

mySDG編集部:面白い観点ですね。ドライにする機械も開発されたのですか?

藪中さん:機械は別の用途で製造された既存の機械を改造して使用しています。

mySDG編集部:独自製法にたどり着くまで、どれくらいの期間がかかったのですか?

藪中さん:実は、思いつきからのスタートなんです。現在、一般的に流通しているドライフラワーは国内産もあるのですが、オーストラリアからの輸入が多く、価格が高めです。製造工程について調べていくと、日本は湿気が多いのでドライフラワーを製造するにはあまり適していない。かつ、自然乾燥ですと面倒な工程もいくつかあります。さらに、密閉空間でない限り、湿気の影響などで出来上がりにムラができる。このようなリスクを考慮すると「自然乾燥ではなく、湿庫乾燥した方がいいんじゃないか?」と考えて機械乾燥を始めたんです。

mySDG編集部:機械乾燥が効率的だと考えたんですね。

藪中さん:そうですね。さらに、通常仕上げに1〜2週間かかるところ、弊社は長くても3時間でドライフラワーになるんです。短い時間のものですと30分で仕上がります。

mySDG編集部:急速ドライ製法ですね!この製法でどのくらいの期間、見た目が維持されるのですか?

藪中さん:色は通常のドライフラワーより長く残ります。プリザーブドフラワーよりは短いですね。マンションに飾っていただくなら1年位持ちます。ただ、環境によるところもありますし、花の種類によって色の持ちは変化しますので、一概には定義できない部分もあります。

mySDG編集部:元々自然のものなので、環境下で影響は受けますよね。しかし、生花であれは1週間程が限度であるところ、数ヶ月間もキレイなまま飾れるのはうれしいですね。

■蔵前に出店したエシカルフラワーShop「ethica lab」(エシカ ラボ)。使用する花は全てフラワーロスの花。

Shop「ethica lab」店内

mySDG編集部:今回、エシカルフラワーShop「ethica lab」(以下、エシカ ラボ)を出店されましたが、「蔵前」にご縁などがあったのでしょうか?

藪中さん:エシカルフラワーのターゲット層は20〜50代くらいの女性で、インテリアとSDGsへの関心の高い方に設定しています。なおかつドライフラワーが好きな方だと、さらに喜ばしい。蔵前はおしゃれなエリアで、カフェでゆったりと時間を過ごすかたや、ご自身で趣味をお持ちの女性が多くいらっしゃいます。ターゲット層を考慮したマーケティングの観点から「蔵前」になりました。

mySDG編集部:店舗で使用する花は全てフラワーロスの花なのですか?

藪中さん:そうです。フラワーロスは「発生」してしまうものなので、決まった分量で仕入れができるものではありません。通常のご注文は、現在あるお花を使いオーダーメイドで承る形になります。

mySDG編集部:現在の日本では、フラワーロスはどれくらいあるのでしょうか?

藪中さん:フラワーロスが一番出てしまうのが、実は生産者さんのところなんですね。このデータは農林水産省も取れてないんです。実際、私のお取引先の生産者さんのところですと、平均で、30〜40%のロスになるんです。農林水産省が出しているデータは小売りの段階で30~40%のロスがあると発表されていますが、実態としては今、小売りの業者さんは大量仕入れの上販売ができない状態で、仕入れ量を極限まで圧縮してロスが出ないようにしています。現状一番ロスが出ているのが生産者さんの市場に出荷できない規格外品のロスが圧倒的に多いんです。

mySDG編集部:それは切り花だけのお話なのでしょうか?鉢花なども同じ状況だとするとエシカ ラボではロスになる鉢花なども取り扱うのですか?

藪中さん:はい。写真にある天井から吊り下げてある葉は、ユーカリなのですが、これも全部生産者さんのところで発生しているロスになります。

mySDG編集部:種類が豊富ですね。ちなみに、海外生産者さんのフラワーロスもあると思うのですが、そちらのお取り扱いはあるのですか?

藪中さん:実は今、輸入商社とロスの取り扱いについて協議中ですので、間もなく海外の取り扱いも増える予定です。

mySDG編集部:海外のロスも引き受けるのですね。素晴らしいです。

フラワーボトル

mySDG編集部:エシカ ラボではお花を使ったアレンジ雑貨も扱っていますね。

藪中さん:はい。ビンの中にドライフラワーが入っている商品は、ピンセットでアレンジをしています。こうした商品はECで販売も可能ではあるのですが、実物を見ていただいたほうが良さがとても伝わりますので、実店舗を出店してから取り扱った商品になります。弊社の場合はプレゼント需要よりもご自身のご趣味としてご購入いただく方が多いですね。

mySDG編集部:さりげなくお花の入った普段使いの雑貨もあっていいですね。

藪中さん:髪を止めるクリップは先日、幼稚園の姉妹が購入してくれました。
雑貨などの種類を豊富に取り扱っているのにも意味があるんです。花の種類によってはドライフラワーにできない場合もありまして、代表的なのがひまわりです。そうした花もお客様に届けるようにしたいとなると、形を変えないと難しいんです。
それで、お花をレジンなどに入れ、ピアスなどのアクセサリーや雑貨に加工することによってお花を活かし、ロスフラワー活用のもうひとつの手段として雑貨などを取り扱っています。


■「正しいことを正しく行う」意味がある持続可能なビジネスを。コンサルティング目線で日本企業へメッセージ。

mySDG編集部:フラワーロスを削減する事業に取り組まれていて、広まって欲しい概念やSDGs活動はどんなことがありますか?

藪中さん:「正しいことを正しく行う」ですかね。企業がブランディングする上でも、企業がビジネスを成立させる上でも、SDGsが非常に重要な要素になってきています。一方で、SDGsを正面から捉えられていないビジネスをしている企業が出てきているのも感じます。そもそも、自社が何をしたかったのかを考えて、しっかりと意味のある事業をしないと、瞬間的に成り立つビジネスにはなるかもしれませんが、持続性がありません。SDGsに対してリテラシーが高い企業が多く出てくることが重要だなと考えています。

mySDG編集部:さすが、コンサルティングを主軸としてされていらっしゃるので、企業様に向けてのメッセージに厚みがありますね。藪中さんご自身で、こうしたエシカルな事業を実際に立ち上げ、コンサルを受ける企業様へご紹介する意図などもあるのでしょうか?

藪中さん:おっしゃる通りで、一般の方にSDGsに取り組んでいることがわかりにくい企業様などは、エシカルフラワーでの空間装飾など、弊社のサービスを使っていただくと、”フラワーロスに対するアンテナが高い”というブランディングになります。現在も企業様との取り組みを行っておりますし、これからもさらに強めていきたいと思っています。

■フラワーロス削減目標は、生産者さんのロス「ゼロ」。新しいプラットフォームをつくり、新しい花業界のサプライチェーンの構築をする。

Shop「ethica lab」外観

mySDG編集部:今後のフラワーロス削減目標はありますでしょうか?

藪中さん:生産者さんのロスは「ゼロ」を目指していきたいと思っていますね。それから、現状の生産者さんは、自分たちの栽培した花が、どういう人に届いて、どういう風に喜ばれているのかはあまり意識されていないんです。
お花のサプライチェーンの中で情報共有プラットフォームなども存在しないので、購買層などの情報もとれていません。こうしたところに、ITの介在余地があると思います。
将来の構想として考えているのは、物流と連携をとって、ロスが出たらすぐに回収できる仕組みを作り、生産者さんに負担をかけることなく、各ステークホルダーに届けることです。こうした新たなサプライチェーンの構築をしていきたいと考えています。

mySDG編集部:新しい仕組み、とてもいいですね。情報共有プラットフォームで消費者さんの喜んでいる声なども見られるようになれたらいいかもしれないですね。

藪中さん:実は、それも視野にいれて開発をしているんです。現在も、フラワーロスの花を卸してくださった生産者さんには「空間装飾に使用しました」など、紙と写真のレポートというアナログ形式でお知らせしているんです。
そうすると、今まで仕事のルーティンとしてされていた規格外の花の廃棄作業から、梱包して出荷してくださる変化へのモチベーションにつながります。

mySDG編集部:なるほど。今後、情報共有プラットフォームが開発・導入されたら、生産者さんの思考変化も、より大きくなるかもしれませんね。

Shop「ethica lab」店内

mySDG編集部:現在、「エシカルフラワー」は店舗のみの販売ですか?

藪中さん:2022年の冬からECサイトで販売を予定しています。フラワーロスの花を使うので、基本的にオーダーメイドでの販売となります。年内にクラウドファンディングの予定もしています。

mySDG編集部:オーダーメイドならば、同じものがふたつとないので特別感が増しますね。最後にエシカルフラワーにご興味のあるかたに、メッセージをお願いします。

藪中さん:花業界はサプライチェーンの、それぞれのステークホルダーの中で情報がブラックボックス化していると思います。本来なら情報の共有をしながら、各ステージで発生する”ロス”をビジネスにつなげる発想を持ったほうがよいのですが、まだそこまではできていないのです。
花業界のSDGs推進のために、弊社は「エシカル」や「ロス」に取り組み、事業を進めているのですが、お客様や企業様、皆さま色々なお考えや意識をお持ちです。弊社が良きと思い進めていることも賛同いただけないこともあるかもしれません。
そのような時は、アドバイスを含めてご意見をいただけるとありがたく思います。弊社はマーケティングに重きをおいておりますので、現在の取り組みに対して、いい意味での賛否のお声をいただけたら、花業界のSDGs推進につなげていけると思います。

mySDG編集部:花業界の未来の姿にとても関心がわきました。本日は貴重なお話をありがとうございました。


この取り組みが参考になりましたら、ぜひいいね・シェア拡散で応援をお願いいたします🙌
mySDGへの取材依頼・お問い合わせは mysdg.media@bajji.life までお気軽にご連絡ください。


この記事が参加している募集

#SDGsへの向き合い方

14,798件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?