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【取材記事】大切な思い出とともに人と服をつなぐ サイズアウトした子供服の新しい手放し方

すくすく成長する子どもたちの服は、あっという間にサイズアウトしてしまいます。しかしその一着一着には忘れ難いストーリーが刻まれていることも。「1歳の誕生日に着た特別な晴れ着」「祖父母からもらった高価な一着」、どれも特別な思い出が詰まっているからこそ、安易に売ったり、譲ったりが難しい側面もあります。しかし、そんな悩みに寄り添ってくれるのが、ユーズド子供服専門の寄付・販売コミュニティプレイスサービスを提供する「Chilsche(チルシェ)」です。買取サービスやフリマサイトなどの既存サービスでは満足できないユーザーに向けて、「思い出」とともに「人をつなぐ」あらたなリユースの形を提案しています。今回は「Chilsche」を運営する合同会社チルシェの矢田真太郎さんに創業経緯やサービスの魅力、今後の展開について伺いました。

【お話を伺った方】

合同会社チルシェ 代表 矢田真太郎(やだ・しんたろう)さん
大学卒業後、通信会社へ入社。システム開発、事業開発に従事。 2013年に不動産会社へ入社し、経営全般に従事。 2022年より合同会社チルシェを起業し、代表として事業を運営。


■思い出のつまった子供服を気持ちよく手放したい

mySDG編集部:まずは創業経緯について教えてください。

矢田さん:以前からいつか友人と起業したいと考えていたので、これまでも色々なビジネスアイデアを考えてきました。実際にその友人と起業したのは少し年月が経ってからのこと。お互いに年を重ねて家庭を持ったことから、自然と社会課題に関心を寄せるようになっていました。そのため、ビジネスを始めるならサービスを通して社会課題を解決できる事業を作りたいという思いから、2021年1月に合同会社チルシェを立ち上げました。今回、サービス第1弾として取り組んでいるのが、サイズアウトした子供服の廃棄問題です。

mySDG編集部:なぜ「子供服」にフォーカスしたのでしょうか?

矢田さん:子供服はどんなに気に入っていても、サイズアウトしたら不要になってしまいます。急激に身体が成長する子どもたちにとって服の着用スパンは短く、サイズアウトするたびに服を処分しなければなりません。そのため子供服を手放す方法として、もう少し上手く、気持ちよく解決できないかという思いから子供服専門のリユース事業を立ち上げました。

mySDG編集部:最近は買取サービスやフリマサイトなど、子供服を手放す方法としてさまざまな選択肢があります。それでも「Chilsche」のサービスを立ち上げたのはなぜでしょう?

矢田さん:当社が行った調査によると、買取サービスやフリマサイト、寄付などの現行のサービスに対して、「思い出を査定されている」「育児に追われ出品発送の時間を捻出することができない」といった感想をお持ちの方が一定数いることがわかりました。

そもそも子供服とは大切な思い出がつまっているものです。祖父母からプレゼントしてもらったり、友人から譲り受けたりした特別な一着だったり。「お金に換えたい」「ただ処分したい」というニーズ以外にも、大切に使ってくれる人のもとへ思い出とともに送り出したいという方もいらっしゃいます。さらに社会貢献の一環として寄付した場合、必要な人のもとへちゃんと届いているのか見えにくい側面も一部あります。そこで現行サービスでは満足できない方に対して、異なる選択肢を提案したいという思いから、手間をかけずに次の人が“喜んで大切に使ってくれること”を実感できるサービスを目指して、「Chilsche」を立ち上げました。

■「1点から無料」で渡せる 服の行き先を見える化した仕組みづくり

mySDG編集部:サービスの特徴を教えてください。

矢田さん:「Chilsche」では、ブランド指定・数量の制限なく「1点から無料」でお渡しいただけます。無料の発送キットにお洋服を入れて送付するだけなので、発送までの手間が大幅にカットできます。

さらに服の行き先が見える化されているのも大きな特徴です。次の方に服が渡ったら通知でお知らせする仕組みを導入して、透明性の高さを追求しています。専用サイトには「コミュニケーション機能」が備えられているので、渡す方は服とお子さんの思い出の写真にコメントを添えて次の方へつなげられたり、受け取った方は元の所有者の方へ感謝のメッセージやスタンプを送ったりすることも可能です。

mySDG編集部:ちなみに当サービスでは独自のエコプログラム「子どもの木プログラム」を立ち上げられたそうですね。背景と具体的な内容を教えてください。

矢田さん:「子どもの木プログラム」とは、お渡しいただいた服や購入された服が一定数に達すると、提携団体から植樹を行ってもらう制度です。具体的には、服をお渡しいただいた方、ご購入いただいた方がサービスサイトに写真を投稿することで、投稿写真1枚につき1ポイントとし、100ポイントごとに1本の植樹を行っています。プログラムを通じて地球温暖化の一役を担い、子どもたちの未来に美しい風景を残したいという思いから考案しました。提携先からは植樹のエビデンスを受領してサイト上に「こどもの木」として表示しています。

■人をつなげ、新しいライフスタイルを提案できるサービスへ

mySDG編集部:今後「Chilsche」を通して、どのようなことを伝えていきたいとお考えですか?

矢田さん:サービスを通して、あらためて「ものを大切にする文化」を広めていけたらと考えています。服に限定する話ではないのですが、やはり新しいものってワクワクするんですよね。でも今は中古のものであっても昔と比べて品質が高いものが増えていますし、活用の幅もかなり広がっています。それに中古ならではの味もありますしね。そういう文化や考え方が広まっていくことで、いわゆる持続可能な消費にもつながっていくと思います。さらに子供服に関していえば、物を大事にするという考え方を子どもたちに教えることにもなります。われわれが行なっている事業は洋服を扱うサービスではありますが、物理的なものだけではなくて、ライフスタイルや考え方に対して新しい価値を提案できたらと考えています。

mySDG編集部:なるほど。ちなみに新しい価値の提供といった点において、具体的にどのような展開をお考えですか?

矢田さん:正直、具体的なことはまだ検討中といったところですが、やはりサービスのコンセプトを考えたときに、「Chilsche」はユーズド子供服専門の寄付・販売コミュニティプレイスを目指しているんですね。子供服の販売ではあるのですが、渡す人と購入する人をつなぐコミュニティや、それ以外にもう少し大きな親子コミュニティを作って、いわゆるECサイトというよりはコミュニティプレスというところを意識して事業を作っていきたいと考えています。例えば対面のイベントを開催したり、コミュニケーション機能を強化したり。ユーザーの方により楽しんで使っていただけるようなメニューを構想中ですので、ぜひ今後の展開をご期待いただければと思います。

mySDG編集部:今回お話しを伺って、日常生活で抱く悩みを解決することが結果的にSDGsにつながっていくのは、すごく重要なことだと思いました。

矢田さん:そうですよね。われわれとしても、ビジネスとSDGsの要素を両輪で回していく必要があると考えているので、どちらかに寄り過ぎないことは意識しています。サービスに関してSDGsを強く打ち出すというよりも、ユーザーの方が意識しないで行動した結果がSDGsにつながるサービスが提供できればいいかなと。社会課題を解決することで、SDGsが自然についてくるというイメージですね。SDGsと聞くとスケールが大きい目標をイメージしますが、マクロの視点を持ちつつも事業としてはミクロに小さく積み重ねていくことを意識して、今後さらにブラッシュアップしたサービスを展開していきたいと考えています。


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