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最終的にガザの運命は誰に託されるのか

 ガザ地区での地上戦がカウントダウンの段階に入った10月17日、イスラエル政府の閣僚会議では、「戦争目的が達成された後に、ガザの運命がどうなるかという問題について、議論しないこと」が確認された、とイスラエル・ハヨム紙が報じた。抄訳をここに紹介する。


 ガザ市民への被害を最小限に抑えるという人道的な配慮に時間と労力が費やされるだろうが、地上戦が始まれば、イスラエル国防軍がハマスを掃討してガザを制圧するのは、時間の問題となるだろう。どのような形であれ、今回の戦争が終結した暁には、新たな問題と直面することになる。ガザ地区は今後誰が管理するのか、それがどのような形態なのか、そしてその中でイスラエルの役割は何なのかという問題である。

 もちろん、まずはテロリストの掃討と人質の救出に全力を尽くすべきという意味でこのような決議がなされたのであろうが、地上作戦の落とし所が見えていないという証左でもある。

4つのシナリオ

 実際、この問題について元閣僚や元国防当局者から聞かれたのは、次の4つのシナリオである。

① ガザ地区を占領し、200万人以上の国民を軍事統治する――イスラエルは過去にもこれを実行したことがあるが、多額の経済的コストがかかる。また国際的な配慮から、この地域での新たな軍事施設の建設は認められない。

② 西岸地区と同様、パレスチナ自治政府が再び統治する――イスラエルが西岸地区とガザ地区との分化を止めることにより、2005年のイスラエル軍ガザ撤退以来、弱体化していたパレスチナ自治政府の統治能力が及べば、2国家共存を模索するための当局の政治的重みが増す。

③ アラブの資金援助のもと、国際部隊がガザ地区を管理する――イランやカタール等がハマスを支援してきたように、アラブ諸国が支援する形でガザを国際的な管理下に置く。こうすれば、イスラエルはガザ再建に関与する必要がなくなる。

④ イスラエルは完全撤退し、国境で新たな軍事組織が出現した場合のみ集中的に対応する――イスラエル政府は、パレスチナの内政には一切関知しない。

 さらにベテランの中東学者モティ・ケダール博士は、5つ目の選択肢を提案している。

⑤ ガザ地区を分割し、各地域に氏族に基づいた民間地方政府を設立する――ガザ地区を3つの州あるいは首長国に分割し、それぞれの地域は広範な統治機構や軍隊を持たず、地元勢力の氏族が統治する。しかし、もし統治問題が未解決のままガザ地区での再選挙を許可するならば、別のイスラム組織が創設されて選挙に立候補し、過半数を獲得することになるだろうとケダール博士は警告する。これでは別の形で再び「ハマス」が出現することになってしまう。

政治家たちの反応

 ネタニヤフ首相は、あらゆる機会で、シナリオ①については「可能性も願望もない」と明言している。では他のどの可能性が濃厚なのか。ある閣僚は本紙に対し、「クマ狩りがまだ終わっていないのに、将来的な問題について決定するつもりはない」と語った。

 イスラエル元高官らも、ガザの将来について議論するのは時期尚早だと主張する。元治安当局者は「ハマスはガザ住民を誘拐したわけではなく、彼らは選挙で選ばれたのだ。イスラエルを攻撃したのはテロリスト部隊ではなく、特殊部隊の大軍だった」と述べ、警鐘を鳴らしている。

 イスラエルにとって現時点での最善のシナリオは、南部戦線を弱体化しようとする別の戦線に巻き込まれることなく、宣言した任務を完遂することである。イスラエルが一定のにらみを利かせ、ガザ地区内の軍備増強を二度と許さない状況になった後、ガザの将来について考えたら良いのである。

 最後に、少なくとも1人の閣僚がすでにガザ地区の近い将来について触れていることに留意すべきだろう。緊急内閣のギドン・サアル無任所大臣は数日前、ニュース12のインタビューで、イスラエルがガザ地区の周囲にさらなる緩衝地帯を設ける必要があるという明確な立場を提示した。「作戦が終了した際には、ガザから領土的な代償を徴収するべきだ。『始めた者が領土を失う』ことを分らせる必要がある」。

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