研究)「潜在看護師の復職支援」 6.看護師のキャリアインタビュー 結果その3

​6.看護師のキャリアインタビュー
​6-3.結果
6-3-4.既に行われている復職支援策

調査により明らかになった復職のための3ステップには、それぞれ既に対策が行われている。

第1ステップ「困難感の払拭」には、自治体や病院主催の研修が行われている。

第2ステップ「復職のための最低条件」には、短時間勤務や日勤のみの勤務など雇用形態の充実が図られている。

第3ステップ「周囲からの理解」については、職場でのライフ・ワーク・バランス理解促進を目的にした「Are You Happy?」の制作が日本看護協会によって、行われている。


6-3-5.復職支援策と潜在看護師とのミスマッチ

先に述べたように、潜在看護師が復職に至るための支援策というものは存在しているものの、それぞれにミスマッチが発生しているということが、調査から明らかになった。

第1ステップ「困難感の払拭」における自治体や病院主催の研修については、
『病院によってやっているところとそうでないところがある(A)』、『(研修の)間口が狭いイメージがある(E)』、
『(自分の病院で復職支援研修を行っているが)敷居が高く、参加者が少ない(G)、(H)』という発言があった。


自治体や看護協会主催の研修は、「ナースバンクへの登録が必須、週○時間以上働ける」など、
条件が決まっている。また、病院主催や民間の研修は、研修と雇用がセットになっていると考えられるものが多い。
「困難感の払拭」のためには、いきなり仕事を探すというよりは、今の医療がどうなっているのか、
採血などの技術が自分には残っているのかといったことを知り、ブランクが有っても、現場に戻れるのかどうかを確かめに行くという意味合いが強い。
そのような潜在看護師にとって、現状の研修のあり方はハードルが高く感じられているのである。

その反面、いきなり仕事と捉えやすい、子育てをしながら働きたいクリニック等には、復職研修がないという実情がある。
そのため、研修を行っていても参加者が少なかったり、復職研修の存在を知っていても、
敷居が高いと感じて参加を見送る人が多かったりするというミスマッチが発生している。


第2ステップ「復職のための最低条件」については、希望に合う職場が有りながら、その情報が潜在看護師に届いていないことが問題であると明らかになった。
看護師の就業場所を探す術としては、日本看護協会が運営する「ナースバンク」が代表的であるが、実際には、
『(ナースバンクでは)希望のものを紹介されない(A)』、 『(家の近くで探していたので)新聞の折り込みでたまたま見つけた(B)、(E)』、
『家の近くで探したく、新聞や病院・施設自体に求人が出ているから、ナースバンクに行くまでもない(B)』、
『ハローワークで見つけた(C、D)』という発言があった。

これらの発言から、育児をしながらの職場探しでは、ナースバンクにある全国規模の情報ではなく、
「自宅のそば」の情報が求められているという実情も明らかとなった。


第3ステップ「周囲の理解」に対しては、『家族が(私が)働くことに積極的ではなく、
しばらく働けなかった(E)』、『子育てをしていない上司だったので、理解があるか心配だった(F)』という発言があり、
日本看護協会がライフ・ワーク・バランスの推進を訴えているにも拘らず、医療現場にはそれがあまり伝わっていないということが明らかとなった。


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