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潜在看護師の復職支援ー卒論概要・手法

​1-1.はじめに​​
 近年、日本では医師不足とともに、看護師不足が叫ばれている。
厚生労働省は、平成23年の「医療提供体制の改革に関する意見」(1)の中で、
医師の不足・偏在問題とともに、看護職員(保健師、助産師、看護師及び准看護師)の不足・偏在問題も深刻であるとしている。
看護師が不足した状態で勤務を続けることは、労働の過酷さに拍車をかけ、
看護師の離職を加速させてしまう。
また、少ない人数での看護は患者への安全性も下がるという問題がある。
 そのため、本研究では看護師不足の解消を実現に繋げるべく、
看護師を「現職看護師」、「新卒看護師」、「潜在看護師」の3つに分け、
それぞれにおける現状を知った上で、離職防止策や復職策の考察を行った。

第2章では、現職の看護師に注目した「現職看護師の問題と対策」、
第3章では、卒業してすぐの「新卒看護師の問題と対策」、
第4章では、独自に行った調査である「キャリアプランアンケート調査」、
第5章では、「潜在看護師の問題と対策」、
第6章では、独自に行った調査である「看護師のキャリアインタビュー」、
第7章では、まとめを行う「総合的な考察」について述べた。

(1)厚生労働省(2011):医療提供体制の改革に関する意見.社会保障審議会医療部会

​​Keywords:潜在看護師、キャリア、復職支援 ​


1-2.背景
​ 厚生労働省が5年に1度行っている「看護師需給見通し」(2)によると、
平成23年時点では、看護師の需要が140万4千人であるのに対し、供給は134万8千人にすぎない。
また、平成27年には、需要が150万1千人にのぼる見通しであるものの、
供給は148万6千人に留まる見通しである。​

 また、厚生労働省の「看護職員確保対策について」(3)によると、
2011年時点で新規に看護師資格を取得する者は約4.9万人いながらも、
離職等により約2.4万人減少しているため、毎年増加する人数は限られている。
また、看護師資格を持つものの、一度辞めた後に医療・介護分野に戻っていないなど、現在は看護師として働いていない「潜在看護師」が約71~75万人いると言われている。

 このように、資格がある人でしか出来ない仕事にも拘らず、
辞める人や戻らない人が多いという現状の背景には、
大きく2つの理由があると、日本看護協会の調査(4)から言うことができる。

 まず、結婚・妊娠・出産・子育て・自身の健康・家族の健康・家族の介護といったライフイベントの発生が挙げられる。
これらは、仕事を辞めるきっかけになることであるが、
その他に、勤務時間が長い・超過勤務が多い・夜勤の負担が多い・責任の大きさや医療事故への不安・休暇が取れない、
と言った、職場環境に関する理由が挙げられている。

 また、看護師の受け持ち患者が1人増えると、患者の死亡率が7%上がる(5)と言われており、
看護師数を増やすことは、患者の安全性の面からも大きなメリットがある。

 このような労働環境がある中で、どうすれば看護師不足を解消することができるのか、
対象を3つに分けて考察した。
今後ライフイベント等で離職する可能性のある「現職看護師」、
抱えている問題ごとに入ったばかりで辞めてしまう「新卒看護師」、
今現在働いていない「潜在看護師」について、次章から述べる。

(2)厚生労働省(2010):第七次看護職員需給見通しについて第七次看護職員需給見通しに関する検討会報告書.
(3)厚生労働省(2013):看護職員確保対策について.第33回社会保障審議会医療部会 報告書.
(4)日本看護協会(2007):潜在ならびに定年退職看護職員の就業に関する意向調査報告書.
(5)Aiken, L.H., Clarke, S.P., et al. Hospital nurse staffing and patient mortality, nurse burnout, and job dissatisfaction, JAMA, 288(16), 1987-1993, 2002.


1-3.研究方法 
​ 本研究では、厚生労働省の報告書、日本看護協会の報告書、先行研究レビューとともに、アンケート調査とインタビュー調査を行った。
アンケート調査とインタビュー調査に関する詳細な研究方法については、それぞれの章に記した。

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