見出し画像

ねずみを飼う心得、こんなに面倒でもまだ飼うの?

はじめまして。

このノートを開いたあなたは正にねずみを飼っている、または飼うことに興味を持っている、という方ではないでしょうか?

ねずみを飼いたいなー、飼ってみたからこれから楽しみだなーというみなさん、新たなねずみ生活に心踊らせていると思いますがしかしまず残念なお知らせをしなければなりません。それはねずみという生き物は非常に、非常に!!大変に面倒な生き物だということです。

私が最初の子を飼ったのは、とても簡単な理由、ねずみを飼ってみたい。それだけでした。

その時の私はまるで知るよしもなかったのです。この先何年にも渡ってねずみに支配された人生になることを!

プロローグ: Melとの出会い、そしてねずみと生きる人生の始まり

私が彼女と出会ったのは、アメリカ、テキサス州の小さなペットチェーン店でした。ふらりと来たその店をひやかしながら、店内をうろうろしていると、大きな水槽型のケージの中にねずみを発見しました。

山盛りにされているねずみの一番上に突っ伏し、ケージの角に顔を入れ、世の中の何にも興味なさそうにただただ寝続けている、一匹だけ白い、なんか変なねずみ、それが彼女でした

そんな彼女はどこにも馴染めない私とどこか似ている気がして、特別なねずみだと思ったのでした。その日はそのまま帰り、ペットを飼うのは大変だし、本当に飼うつもりはなかったのだけれど、友人に飼っちゃいなよ、と煽りに煽られ、再度訪れた店内で、気がつけば彼女はケーキを入れるような紙箱の中に入れられ、私にお持ち帰りされていました。なんという浅はかさ。これから繰り広げられる生活をその時は想像もできなかったのです。

帰ってきてまず私は彼女の異変に気がつきます。鳴いている...?ねずみって鳴くの?クプクプと変な音をたまに立てている。普段は聞こえないけど夜寝静まる頃にケージから聞こえて来る、何の音??
何を食べるのかとか寿命とかそんな情報しか知らなかったおばかな私は早速ググってみます、するとねずみというのはとても病気がちらしいということを知ったのです。

大変なこと(1) :ねずみと生きることは、喘息持ちの子供を持っているようなものである

別途noteにて今後詳しく書くけれど、まず難しい話は抜きにして簡単に言ってしまうと、ラットのほとんどが、とあるウイルスを持って産まれてくるので、免疫が落ちる度にそのウイルスにやられて、症状が出てしまう、なのでラットの一生(2-3年)はそのウイルスと戦い続けることになります。それはまるで喘息持ちの子供を持っているような感じです。今日は寒くないかな、くしゃみしてる?音してない?大丈夫?ちゃんと食べなさいよ、ほら、ちゃんとあったかくして、また発作になったら大変、ひどくなったら入院になるんだから、みたいな生活なのです。とにかく毎日が、今日は大丈夫?の繰り返し。

なんでこんな短い人生をそんな生き方をしなければならなかったのよ、神様なんかがいたらなじりたくなります。可哀想だけれど、残念ながら、これがラットの宿命なのです。

大変なこと(2) :ねずみと生きるということは、貢いでも貢いでもまだ金のかかる小娘を愛人に囲っているようなものである

とにかくお金がかかるよ!ということはねずみを飼う上で一番最初にに知っておくべきことでしょう。ねずみを見たら、それはグッチのバックを持ったお姉ちゃんだと思いましょう。初回ウン千円で飲み放題の店で出会った彼女だからと言って、彼女を囲いたい、と思うなら貴方、お金がないなんてことは通用しないでしょう?ねずみも同じことです。ねずみ自体は1匹500円-3000円程度で簡単に買えてしまうけれども、これから先、亡くなるまで面倒を見てあげるとなるとお金がかかるのです。1回病院を受診するだけで7千円-2万くらいはかかります。私はアメリカで暮らしているので日本での具体的な金額はわからないけれど、日本でも同じくらいかかるんじゃないかな。幸いなことに、melは健康に3年近く生きることが出来たけれど歳を取り出来た腫瘍の手術には7万程度かかりました。

ねずみを飼う上でいくら準備しておけばいいかの目安になれば。melの生涯にかかったお金をざっくりと。

【月の野菜/果物/おやつ】 月々1-2千円 
【餌代 生涯分】計1万
【ケージ お家用/病院用の小さいもの】計1万 
【玩具/水ボトル/ハンモックやベットなど】計1万 
【自分で用意したお薬】計3万
【病院代 最初の受診/お薬】計2万
【病院代 最後の受診/お薬】計2万
【腫瘍の手術】7万

おおよそ20万、といったところだと思います。ただこれは元気に過ごしてくれたmelの場合、もしあなたのねずみがもっと病弱であった場合にはもっとお金がかかることになりますし、もしあなたが5-6匹のねずみを飼っていたとしたら計100万近くかかることも有り得る、ということです。ねずみの飼育はご計画的に!です。

大変なこと(3) :ねずみと生きるということは、全てのものを破壊されるということである

melちゃんは何とも賢く、素晴らしいねずみであったので、いくつかのコードを齧り、電子機器をだめにし、アパートの壁や絨毯をだめにした以外には良い子にしていました。melのすごいところは、一回だめだよ、と言われるともう二度としないところでした。ねずみってこんなに賢いの?とビビってしまうくらい物分かりがよく、ご飯を催促してきた時に、待っててね、といってキッチンへ立つと、同じ場所でじーっと15分くらいは待つような天才児でした。残念ながら今いる三姉妹はそんなことはなく、だめだよというとなぜか喜んで尻尾をフリフリ、歯をカチカチ鳴らして幸せそうにしているし、名前を呼んでもガン無視です。なので個体によるのだけれども、ラットの知能は犬と同程度と言われています。

あの手この手を使って隙間という隙間に入り込み、逃げ出し、全てを破壊するようなうちの三姉妹タイプの賢い子か、それとも言葉を覚え、言うことを理解するmelタイプの賢い子か、どんな子をお迎えするのかは神のみぞ知る処ですが、とにかくねずみは素早く賢く、なんでも齧ってしまう習性がある、ということを念頭に置いておいてください。

大変なこと(4) :ねずみと生きるということは、ねずみのおしっこにまみれて生きていくということである

ねずみを飼ってみて、話と違う!と一番なったのはおしっこについて。私が飼ったねずみはみんな女の子。飼い方のサイトには、雄のねずみは縄張り意識のためにおしっこをする、雌はそんなでもない、と書いてある。嘘つきである。どの子もおしっこをしこたまする。勿論、ジャーっという本域のおしっこもそこらかしこでするけれど、小さな雨粒のような ”ドロップ" をひたすら落下させて歩いていく。一歩ごとに3ドロップくらいしてるんじゃないかというくらいする。尿を通して情報を交換し、ねずみ同士でコミュニケーションを取っているので、多頭飼いをしていると特に。私もたまに嗅いでみるけど何の情報も得られない。でもねずみ達はいつもあそこを舐め合ってキャーキャー言っているのでそれが大事な会話のひとつなのでしょう。

私は幸い、アメリカの乾いた場所に住んでいて、湿気があまりないのでにおいがしずらいのですが、たまに雨が降ったり、汗をかいて起きた時などに、モワッと独特なねずみのおしっこの香りに包まれます。日本は湿気大国ですから、においはすると思われます。けれどもねずみのいる部屋でお香を焚いたり、ファブリーズを吹きかけまわったり、アロマを焚いたりなんてことはできませんから、常に床を掃除したり、寝具やクッションは洗濯可能なものに変えるなどの工夫が必要になります。

大変なこと(5) :ねずみと生きるということは、1日のうち、最低2-3時間はねずみに捧げるということである、すなわち恋愛も旅行も制限されるかもしれないということである

私の朝は(大抵夕方だけれども)、ねずみにおはようを言い、ケージを軽く掃除し、うんちっちを捨て、トイレを洗い、投薬があるなら投薬をし、洗顔などできるよう置いてある水壺を洗い、新鮮な水に変え、新鮮な野菜と果物を用意し、食事はあっためてよねという希望にも応えることから始まります。

そして体調は万全か、一匹一匹抱っこして耳をすませたり、マッサージして周り、気がつけば1時間半くらい経っている....というのが毎日です。

私はできるだけ短い人生を楽しんで欲しい、と思って放牧時間を長めにしてあり、私が部屋を離れない時には丸一日放し飼いにしているので、極端ではあるのですが、毎日最低でも1-2時間は部屋んぽ(私は放牧と呼ぶ)をさせてあげるのが理想的だと思います。となると、ご飯をあげたり諸々をしていると、優に2-3時間はねずみに費やすことになります。

それだけではありません。わからないことがある度に、目がしばしばになり潰れるくらいパソコンに齧り付き何時間もリサーチをすることになりますし、週に1度はケージの掃除をするでしょうし、埃はねずみに良くないのでお部屋の掃除もまめにしなくてはなりません。そして次から次へとやってくるおしっこにまみれた彼らのベットやハンモックやブランケットの洗濯の山に苦しめられることでしょう!

ねずみは非常にアクティブで社交的な動物です。あなたが忙しい生活を送っているのであれば、飼うことを今一度考え直してみるべきかも。それでも飼いたいのであれば、あなたに依存せずともねずみが楽しい毎日を送れるように、大きなケージを用意し、多頭飼いをしてあげてください。

またねずみはお留守番可能、と書かれているサイトなどを目にするのだけれど、ねずみ同士が喧嘩することは良くあるし、いちいち仲裁に入ったりしなければならないので、ストレスの溜まる狭いケージの中にカリカリ餌だけを入れて数日放置、なんていうのはおすすめしません

またねずみは動物実験に使われる生き物、それはつまり病気などの進行が早く、観察にもってこい、だということです。ねずみが一度体調を崩してしまうとそれはそれはあっという間にどんどん悪くなっていってしまいます。なんか変だな、と思った瞬間には投薬が必要になります。2日も投薬が遅れれば命取りになることも。つまり旅行なんてそう簡単に出来なくなりますし、彼の家にお泊まりー、そのまま次の日もデートー、なんてことも出来なくなります。基本的にイエイ!てな生活を送りたいという場合にはねずみはおすすめできないかも。私が今アメリカにいる理由はただひとつ、ねずみがいて身動きが取れないという理由のみです。三姉妹が亡くなってしまったら(考えたくもないけれど) その時やっと日本に帰ったり、旅行したり、色々なことができるのです。

大変なこと(6) :ねずみと生きるということは、短い命、そして軽んじられる命に直面し、考え苦しみ悲しみ、もう元のお気楽な人生には戻れないということである

ねずみは退治するもの、病原菌を持った汚いもの、噛まれて死ぬ人もいる、など、とにかくねずみに対する悪いイメージはついて回ります。勿論稀にそういったケースも発生するし、人間の生活はいつでも動物の犠牲の上に成り立っているのである程度は仕方ないのだけれど。

自分が愛してやまないねずみは、動物実験に使われる主な動物であり、蛇の餌として糞尿塗れで劣悪な環境の中、病気で死んでも知らない、というような感じで売られており、家に出れば残酷な方法で駆除されるような生き物なのだという事実に、ねずみと出会う前の私とは比べ物にならないくらいに悲しみを覚えることが増えました。

どうしてこの小さな生き物は、犬や猫のように大事にされ、可愛がってもらえないのだろう、なぜ医者ですらねずみのことを何も知らないのだろう、なぜ自分の愛する家族を えーよくそんなもの飼えるねーw なんて言われなきゃならないんだろう、そんな怒りと憤りを感じる瞬間がたくさんあります。

また、先ほどもいいましたように、ねずみの一生は2-3年と非常に短いです。3年生きたら、人間でいう90才まで生きた、長生きした、くらいの感覚です。なのでペットロスという意味で非常に辛い思いをするかもしれません。長く飼っていたペットを亡くしてしまうのも勿論悲しいのですが、短命のねずみにはそれともまた違う、深い後悔を伴った悲しみがあります。

melが亡くなって半年以上経つ今も、写真を見返せないくらい悲しいし、生きている間にもっとああしてあげれば良かった、と後悔で胸が押しつぶされそうになります。最初の一匹目で、ねずみの知識がなかった私はたくさんの間違いを犯し、一生懸命あれこれ調べてきたけれど、それでもまだ知らないことはたくさんあります。

Twitterを通じ、久しぶりに日本との関わりを持ちながら、日本ではまだ浸透していないねずみの飼い方について、アメリカに住み、英語を使用しているからこそできる情報提供があるかもしれない、と書いてみました。

発言をするって面倒だし、どちらかと言えば他人なんかしらんよ、と生きていくタイプの人間だし、何か言えば揚げ足を取られるのでうんざりするのだけど、動物に関してはそれでも自分の考えを発言し、正しい知識を交換し合い、有意義な会話を交わすことがとても大切だと思っています。

私たちは自分たちの無知さと身勝手さで逃げられない動物を苦しめてしまうことがあります。小さくお手軽な値段のねずみ、可愛いからと飼ってしまう前にもう一度、短い人生を精一杯幸せにしてあげることができるのか、あなたの生活に合った生き物なのかを考えてみてください。

少しでも、melへのごめんねとたくさんの後悔を、他のねずみの幸せのために役立てていければなと思っています。

これから詳しく色々なことを書いていこうと思いますので、何卒よろしくお願いします。
よかったらスキとフォローもお願いします。

この記事が参加している募集

#我が家のペット自慢

15,639件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?