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いちばんわかりやすい「皇室」の話


いろんな意味で「皇室」が話題になっている昨今ですが、皇族にあたる女性の結婚のあり方によっては、「皇室という概念が破壊されたり、支持されなくなるのではないか?」なんて懸念も出ているほどです。

 憲法の上では、現在の皇室は「国民の象徴」とされています。もっと丁寧に読み解くと、日本国憲法の第一条では

”天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。”

とされていますから、

◆ 国民の総意が、天皇制をやめよう!ということになると存続できないの?

◆ 天皇、と書いてあるけれど、皇族・皇室についてはどこまで適用されるの?

といった、付随するさまざまな疑問が生じても、当然かもしれません。



 さて、この記事では、皇室の女性がどのように結婚するのが望ましいかについては、これ以上言及しませんが、「皇室とは何か」ということをざっくりとでも意識したり、理解しておくことは大切だと思います。

 ものすごく平たく考えると、「天皇や皇室というのは、ずーっとずーっと昔からの、この国の王様の一族なのだろうなあ」ということになります。

 その考え方は間違っていないのですが、そうなると「昔からの王様の一族を尊重するのは、まあよいとして、けれど今では、国民に主権があるのだから、その尊重の方法はもっと検討してもよいのでは?」ということになります。


 ただ単純に「昔から王様は偉かったんだ」では、説明がつかない、ということですね。

 そこで、現在の日本国憲法では、「偉かった」ということは、取りあえず横に置いておいて、「国民統合の象徴」という言葉を使って説明しています。


 これは、また平たく言うと、「国がまとまっていること、国民がまとまっていることの象徴=シンボル・アイコン・印として存在しているよ」ということです。

 そして、ついでにその理由付けは「国民の総意があるからだ」と言っているのですね。


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 こうした天皇、皇室の位置づけや考え方は、とてもよく出来ていると思います。

 私はふだん、みなさんのご先祖さまやルーツについて、一緒に調べたり考えたりするサービスを提供していますが、8割くらいの苗字は、かならず、

「天皇家に行き着いたり、はるか昔のその側近に行きついたりする」

と言えます。源氏や平氏、あるいは藤原氏の子孫の方がとても多いのですが、源氏や平氏は「天皇の子孫」だし、藤原氏は「中大兄皇子と中臣鎌足が”大化の改新”を頑張った」から生まれた苗字です。(藤原氏=中臣氏)

 ちなみに「大化」というのは、日本の元号の一番最初ですから、藤原氏は一番最初から天皇家を支えている、ということになります。


 というようなルーツ調べをしていると、平たく考えれば、

「え?じゃあ、僕たち私たちには天皇のDNAが受け継がれているの?」

ということになるわけですが、そこはちょっと難しい問題があります。

 昔の家というのは、「養子」がつきもので、かならずどこかで養子が入っていますから、今の苗字が仮に源氏に相当したとしても、DNAはどこかで違う系統になっていることが99%だと思います。

 そのため、苗字や先祖調べから、「確実にどこかの天皇の子孫だと判明する」ことはほとんどありません。

 なので、「自分の苗字や氏族は、天皇家に繋がるんだ」というお話は、一種のファンタジーと考えることもできます。


(★実際に、日本人のDNAを辿ると、どこかの代の天皇と思われる人物のDNAが大半に含まれている、という説もあります)


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 ところが、そのファンタジーを、何百年も、「そうだと伝えている」のが苗字や氏族なので、「証明はできないけれど、そうした言い伝えを守ってきている伝統がある」のは確かです。

 これは、DNAとして証明するための血統が重要だったのではなく、「物語として受け継ぐ家柄が重要だった」ことを意味します。

 「事実」より「伝承」が重みを持っていた、ということですね。


 こうした歴史は、我々日本人が、「天皇と皇室を尊重せざるを得ない」ことを意味しています。物語の上でも、伝承の上でも、


「『わが一族は、天皇家に繋がるのだ』という伝承を持って、今の土地や地域で立場を認められてきた」


わけですから、天皇家の威光を否定してしまうと、先祖はその土地土地で暮らしてきた「理由、意味づけ」を失ってしまいます。

 なので、当然、先祖調べを追及してゆくと、どこかでは皇室の威光を利用したことを認めざるを得なくなってしまうのですね。


 こうしたことを国民全体でざっくりと理解するには、

「天皇と皇室というのは、日本人の総本家である」

という考え方がわかりやすいと思います。

 みなさんの苗字や氏族でも、「本家や分家」があると思いますが、本家は別に「偉い」わけではないけれど、先祖の本流に近いことは確かです。

 また、一番最初のご先祖を祭る祭祀の継承をしているのは、たいていの場合「本家」ですから、それを行っている家としては、尊重されてもいいと思います。


 天皇家は、日本人の本家に当たるので、今でも数々の宮中祭祀(つまり、お祭り、先祖を祭る儀礼)を行っているということになるでしょう。

(皇室の本来の仕事は、こうしたお祭りを執り行うことです)


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 日本人の大半が、皇室を祖とする物語を伝承しているのには理由があります。それは、日本が島国で、ほとんど他所からの侵略を受けていないからだと思われます。

 地続きの国や民族が広がっている場合、ある国ができても異民族が攻め込んでくれば、元の民族は滅ぼされたり、奴隷にされたりします。インドのカースト制度ではないですが、侵略者と被侵略者の子孫は、別の階層に分けられてしまうことがほとんどです。

 ところが、日本の場合は、外国から異民族がやってくることはあっても、「帰化」という形で日本側の民族に吸収されてしまいます。

 ましてや国内はおなじような経緯を持った民族同士でしたので(アイヌの人たちは除く)、天皇家の支配の下に各地の豪族も丸め込まれていったものと思われます。

 もっと具体的には、天皇家の末端の子女と、地方の豪族が結婚し、姻戚関係を結ぶことで、互いに支配権をうまく活用した形跡があちこちにあるということです。

 だから、ほとんどの苗字は辿ってゆくと、「天皇家やその側近であった」という伝承になるわけですね。

 このように考えてゆくと、私たちが皇室に対して、「日本人らしくあってほしい、本家らしくあってほしい、どこにも恥じないような人たちであってほしい」と願ってしまう理由もなんとなくわかるのではないでしょうか?

 本家の人たちが横暴で、「分家は本家の言うことを聞け」なんて人たちがいれば、分家は揃って本家に立ち向かってしまうかもしれません。(戦国時代などには、そういうことが多々ありました)

 しかし、現代では、皇室は「理想化された象徴」であるからこそ、やっぱりいつまでも

「日本人としての理想化された生き様、暮らし様であってほしい」

と願ってしまうものなのかもしれません。

 このように考えると、皇室を「神さまや権力者のように考える」必要もないし、けれども「親しんだり敬愛すること」は不自然ではない、ということが素直に受け止められるのではないでしょうか?

(おしまい)


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