かな配列「DHSBことのは配列」の紹介

 Datahand型キーボード向けのかな配列がなかったので作りました。
 配列名は「DHSBことのは配列」です。
「DHSB」はDatahandとSvalboardの頭文字から、「ことのは」は右手フィンガークラスターのCキーの並びから取りました。
「ことのは配列」と省略しても構いません。
 Datahand型キーボードを日本語入力特化デバイスに仕立て上げる配列になったんじゃないかと思います。

 Datahandは入手が困難なのでSvalboard用で使うことを想定したかな配列となりますが、レイアウトに手を加えたら他のキーボードにも組み込めるかもしれません。

「Svalboardって何?」という方はこちらをご覧下さい。

 かなの配置に関する解説は別記事にまとめました。
 読まなくても配列の使用に問題ありません。


1.配列の全体図


DHSBことのは配列
DHSBことのは配列ダークモード版

 DHSBことのは配列の全体図です。
 2枚目はダークモードっぽくした画像です。
 内容は1枚目と同じなので好きな方を使ってください。
 空白にはキーを割り当てていません。
 全角半角の切り替えは両手親指のUp(デリートキーとバックスペースキー)の同時押しです。


2. DHSBことのは配列7つの特徴

2-1. 清音・濁音・半濁音・小書きが同置になっているので覚えやすいです。

「覚えやすい」というのは僕の主観なので人によって感じ方は違うと思いますが、とりあえずそういうことにしておいてください。


2-2. 言葉を連想しやすい配置にしています。

 右手側には助詞の大部分と、副詞・助動詞・形式名詞・接続詞の一部が配置されています。
 左手側には残りが配置されています。

  • 右手:「して」「こと」「よう」「られ」「させ」「これ」「それ」「もの」

  • 左手:「ます」「ない」「する」「ある」「ため」「また」「なく」

 このようにパッと見て連接が思い浮かぶように配置したつもりです。
 右手で文章の核となる表現を、左手で動詞や足りない文字を補う、という形になっています。
 ですが、いつもイメージ通りになるわけではありません。
 漢字の入力では交互打鍵のようになることも多いです。


2-3. 拗音・半濁音・記号系・英数以外は1打鍵(長押しも1打鍵とします)で入力できるので、指に負担がかかりにくいです。

 2-1の特徴に絡んでいますが、清音を長押しすると濁音化、一部のかなは長押しで別のかなに変化します。
 下記は一例です。
 ※「ゑ」や「ゐ」は入れていません。

  1. 「こ」を0.15秒長押しで「ご」

  2. 「あ」を0.35秒長押しで「ぁ」

  3. 「、」を0.2秒長押しで「。」

  4. 「の」を0.2秒長押しで「に」

  5. 「変換」を0.35秒長押しで「TAB」

「各指の使用率」の項目でも触れますが、夏目漱石の「こゝろ(こころ)」の冒頭を入力した場合、96%以上を単打で入力できます。
 ほとんどデフォルトレイヤーでタイピングできると言っても過言ではありません。


2-4. 拗音と半濁音はLayer 1への移動が必要ですが慣れると同時打鍵感覚で入力できます。

 別レイヤーに拗音と半濁音を配置しました。
 拗音は「ゃゅょ」の順で縦に並んでいるので覚えやすいと思います。
 こちらのレイヤーでも長押しすることで濁音化できます。
「しゃ」は「じゃ」に、「ひゃ」は「びゃ」なります。
 半濁音は2-1でも書いた通りデフォルトレイヤーの「はひふへほ」と同じ場所です。
 拗音の半濁音「ぴゃぴゅぴょ」は「ひゃひゅひょ」と分けて配置しています。


2-5. 感嘆符、疑問符、カギ括弧、長音符、カーソルキーなどはLayer 2に配置しました。

 このレイヤーの右手側にあるキー群は文章を書くうえで必要不可欠な要素です。
 とはいえ、かなと比べると優先順位は少し下がるため、Layer 1(拗音、半濁音レイヤー)と同じような扱いにしました。
 こちらも慣れると同時打鍵感覚で入力できるようになります。
 左手側はカーソル(矢印キー)とショートカットです。


2-6. 変換、エンターキー、デリートキー、レイヤー移動などは全て親指で行います。

 文章入力は人差し指から小指に任せて、その他の仕事は全てサムクラスターに集約しました。
 特にデリート(DEL)とバックスペース(BSPC)はそれぞれの親指を軽く上げるだけで入力できるので素早く消去することができます。
 変換とエンター(ENT)も親指を軽く曲げるだけで行えます。
 変換長押しでTabになるのは僕がATOK Passportの推測変換を使っているからです。


2-7. 英文用に最適化された配列「MTGAP」を使用しています。

 30キー用のMTGAPを弄ってLayer 3に組み込みました。
 配置が合わなかったら自分好みに変えてください。
 このレイヤーではローマ字を長押しすると数字や記号に切り替わります。
 ちなみにDatahandにはNAS(Numbers and Symbols)モードという数字&記号専用レイヤーがありました。


3. 各指の使用率

 Svalboardは分割型キーボードなので、DHSBことのは配列も左右に分かれています。
 それぞれの手指の使用率は以下のようになっています。

  • 右手59%(人18%、中19%、薬15%、小7%)

  • 左手41%(人13%、中18%、薬8%、小2%)

 この数値は下記ページにある「wikipedia.hiragana-asis.1-3gram」をベースにして算出しました。
 両手サムクラスターの使用率は含んでいません。
 目安として考えてください。

 夏目漱石の「こゝろ(こころ)」の冒頭を入力した場合の使用率を見てみます。
 冒頭の「私」から「せっかく来た私は一人取り残された。」までを全てひらがなにすると全748文字です。
 このうち約96.1%に相当する719文字(句読点込み)を単打で入力できます。
 以下が使用率と内訳です。

  • 右手 66%(総打鍵数476、親29、人127、中131、薬133、小56)

  • 左手 34%(総打鍵数243、親0、人98、中71、薬54、小20)

 ここにレイヤー移動が必要となる拗音、半濁音、カギ括弧が加わります。
 以下がその内訳です。

  • 右手(総打鍵数11、親1、人5、中1、薬1、小3)

  • 左手(総打鍵数21、親15、人1、中0、薬3、小2)

 これらを合計すると、数え間違いがなければ総打鍵数は751、同時押しを1動作(ワンアクション)とするなら735になると思います。
 59対41の割合にはなりませんでしたが、右手で作って左手で補う形にできていると思います。


4. 長押しの設定(Vial)

 長押しにはTap DanceのHoldを使っているので、Vialで設定する際はこんな感じしてください。
 「あ」と「ぁ」の場合はこうなっています。

「あ」と「ぁ」の設定

5. DHSBことのは配列の弱点

5-1. エンジニアの方がよく使うソフトウェアのコマンドやショートカットは組み込まれていません。

 Datahandがエンジニア向きの製品だったことを考えると少しおかしな話かもしれませんが、DHSBことのは配列は日本語の文章入力と作成に特化しているため、特殊なコマンドやショートカットまではカバーしていません。


5-2. 同時押しに近い速度や超高速ロールオーバー(アルペジオ打鍵)で濁音を連続入力すると正確に打てないことがあります。

 例えば「土下座(どげざ)」のように長押しが続く言葉を0.2秒(200ms)未満で一気に入力すると「どげさ」「とげざ」「どけざ」「とげさ」のようになってしまいます。
 Tapping Termを調整して長押しの判定を0.1秒(100ms)未満にすると回避できるんじゃないかと思います。
 僕は超高速で打たないので、タイピング中にこの問題が発生したことは一度もありません。


5-3. キーの配置には僕自身の癖が反映されています。

 誰が使っても違和感がないように配置したつもりです。
 それでも、僕がよく使う言葉、このキーはここにあってほしい、などの願望が盛り込まれています。


5-4. Svalboard自体が特殊なキーボードで値段も高いです。

 Svalboardの紹介記事にも書いていますが、Svalboardは送料抜きで最低12万円くらいします。
 Datahandも十年以上前に生産を終了していて、まともな個体はほとんどなく、完動品にはプレミア価格がついています。
 さらに、Datahand型は通常のキーボードと打ち方が全く違うため、これまでのタイピング経験を活かしにくいと思われます。
 逆に考えると「Datahand型未経験者はDHSBことのは配列を習得しやすい」と言えなくもない……かもしれません……


6. 最後に

 DHSBことのは配列を利用する方はほとんどいないと思いますが、せっかく作ったので公開しました。
 Svalboardを購入した際は是非導入してみてください。
 感想をもらえるとすごく嬉しいです。
 もしもキー配置が合わなかったら手を加えても構いません。
 でも、DHSBことのは配列を改変して発表したり、誰かに紹介したりするときは、必ず僕の名前を添えてくださいね。

 DHSBことのは配列の解説はこちらです。
 別に読まなくても使用する分には何の問題もありません。

おわり。


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