祭りばやしが聞こえる
怒髪天が活動休止を決定したのは96年のこと。99年にバンドを再開するまでのあいだ、ボーカルの増子直純は穴あき包丁の実演販売やリングアナなど、様々な職を経験するのだが、ほんの一時期、友人である大宮イチ(大楽源太)の紹介で露店商の集金係を請け負うことになる。自伝『歩きつづけるかぎり』(音楽と人、2019年)によると、当時の客観的なポジションは暴力団の〈準構成員〉で、もちろん本人の望むところではない。それでも集金袋を手に事務所に顔を出せば、義理人情に厚いトップ格の男がかわいがって