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闇情報コロッケ

 俺はとある商店街の片隅にあるコロッケ屋の店主だ。昔は闇社会では知らない者がいない程の殺し屋だったんだが、足を洗うつもりでコロッケ屋を始めた。

 元々料理は得意だったんで、コロッケの味に自信はあるんだが、店はなかなか繁盛しない。さらに、闇社会での俺の影響が強すぎたためか、今でも昔なじみが俺を頼って色々相談に来やがる。

 俺は仕方無しにそいつらから得た情報をコロッケに忍ばせて売る情報屋を始めた。今の俺の職業は一部の昔なじみしか知らないし、まさかコロッケに闇情報が入っているなんて誰も思わないだろう。我ながら、素晴らしいアイディアだ。

 「こんにちは」「へい、らっしゃい!」「特製コロッケ5つ」「あいよ!」
今のスーツ姿の好青年は竜刃会の若頭だ。
「すみません。こちらの野菜コロッケを3つ下さるかしら?」「へい、少々お待ちを!」
さっきの優雅なご婦人は腕利きの麻薬ブローカーだ。

 「おじちゃーん、ミートコロッケちょうだい!」「お、ゆいちゃん。今学校の帰りかい?」「うん。部活でヘトヘト。お腹空いちゃって、家まで我慢できないの」
彼女はウチの唯一の常連。毎日遅くまでハンドボール部の練習をがんばっている。
「そうかい。今日もお疲れ様! ほら、コロッケ1つおまけしてあげるよ」「わーい。おじちゃん、ありがとう!」
あれ、ない!? まさか・・・・・・。うっかり間違えて国家レベルの機密情報が入ったコロッケを渡してしまったようだ。
「ゆいちゃーん、待ってぇぇー! そのコロッケはダメなのぉぉぉ。」

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