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火曜日のノート:2018年2月13日

火曜日はちょっと立ち止まる。

振替休日の月曜と、バレンタインデーの水曜の間にはさまれた、何の変哲もない火曜日。サブウェイで日替わりサンドイッチをオーダーしたら、やわらかくくずしたたまごがパンにはさまれる曜日。それは、もちろんとても美味しいけれど、水曜のローストチキンや金曜のBLTの方が、なんだか見ばえがするような気がする。うらやましくないと言ったら、うそになるかな。じつは私は、火曜日生まれなんだ。

「ちょっと、そんなに強く引っ張らないでよ」
「手を繋いでるだけなのに」

プリーツスカートの女の子たちが電車を降りていった。私は頭の中でおもむろにハジキを取り出す。ハ・速さ。ジ・時間。キ・距離。あの頃それはむずかしい例題だった。それは、大人になっても変わらない。人との距離は、あってもなくてもため息が出るから、ハジキの法則は、参考程度に。

三連休は行ってみたかった灯台に4時間かけて行った。深い雪に吸い込まれた足の感触と、砕ける波の音は、もうすっかり過去のもの。

明日はバレンタイン。つまり、あと1時間もしないうちに、ひとつぶずつぴったりとくぼみに収められた宝石みたいなチョコレートを、隠しておいたクロゼットから出す日になる。

それにしても火曜日は、たいてい平穏だ。いいことも悪いことも、まるで私自身の平凡と同じくらい、奇跡的なことは何も起こらない。ソファからしずかないびきが聞こえる。同じ部屋の中で、彼だけひと足先に明日へ行ってしまったのかもしれない。狙いをさだめて撃っても、届くはずのない夢の中で。

私はあとすこしだけ、私の火曜日に立ち止まって。

 


来週はたまごサンドを食べようかな。



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