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№36【2分で読める】日々の暮らしにクスっとエッセイ『カイダンを一気に駆け上がった』

真夏の真夜中。
子供たちが寝静まったのをいいことにワタクシ1人、1階で動画を観ていたら、時間の経過とともに妙~な気配がしてきた。


カサカサ、カサカサ。


せっかくの独り時間を邪魔された気分。


もしかしたら居てはならぬ、あのテラテラとした黒いのがいるのかと、様子を伺っていたら、動きがない。


でもそんな日に限って、カーテンの向こう側がなんだか騒がしい。

窓にコツコツと当たる音。
ザザッと何かが通り過ぎる気配。
風が強いようなそうでないような。


「ホントに、黒いヤツなのかな・・・」

と、動画に身が入らなくなったその瞬間


カサカサカサカサ!!!
ものスゴイ音がした。


「ひょー! 黒いヤツにメッチャきくあのスプレーどこ!!」

慌てて、隣の部屋に置いてあったスプレーを手に、部屋に戻ると、こんどは妙な甲高い声が聞こえてきた。


「ケケケ」とも「チチチ」とも聞こえる、不気味な笑い声。


「うそーん。あんただれ~!」

正体は分からんけれど、心底こわい。
スプレーなんかで勝てる気もしない。

さっさと電気消して、カイダンを一気に駆け上がった。


ないわ~!


次の日、ダンナに一部始終を話したら、たぶんあれだと教えてくれた。
念のため動画を探して確認してみたところ、ズバリその通り。

どうやらそれはヤモリ。

「ヤモリって鳴くの? 鳴けるの?」


ワタクシ、そんなこと初めて知った。

ヤモリは、家守。縁起がいいよね?

そんな縁起のいい生き物を、ワタクシウッカリ、スプレーしてしまうところだった。

間一髪、鳴いてくれてありがとう。恐怖しかなかったけど。

そして、真夏の夜、体感温度も下げてくれてありがとう。本当は、凍りつきそうなほどビビったけど。



わざわざ行かなくても、自宅が一瞬、お化け屋敷だった。
もちろん、無料。







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