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№24【2分で読める】日々の暮らしにクスっとエッセイ『ビックリさせない流派』

ある日、ダンナと昔話をしていると
「会社での電話のコール回数」が話題になった。


経理出身のワタクシ。

当時の職場の上司よりこんな指示があった。
「まいまい君。コール音は2回聞いてから電話を取るように。早すぎると相手がビックリするし、逆にお待たせしすぎるのもよくないよ」

ほお。
相手がビックリするとな。
その2回のコール音の間に電話の向こうの人は、声の調子を整えたり、電話の要件を整理していることかしら?

なるほど、おもしろい。

その後、ワタクシ『ビックリさせない流派』を10年以上続けることになった。


ところが転職した職場で。
いつものように2回コール音をスルーしようとしていたら、社長にこう聞かれた。

「まいまい君はコール音がするといつも電話に手をかけて、待っているんだな。すぐに取らないのかい?」

小さな会社の社長で、社員がすることを細かくみてはおもしろがるタイプ。よくこんな風に質問をされていた。

そこで、以前にならった「ビックリさせない流派」の説明をすると、とても興味を持ってくれた。

「俺は商社出身の人間だから、誰よりも早く電話を取って自分のお客さんを掴む、そう考えるんだ」

へ~。そうなんだ。

ここは売上のノルマもなく、1分1秒を争うほどの重要な情報をやり取りするところではない。でも、社長の方針だったらと思い念のために確認した。

「では、次からコール音をさせないよう取りましょうか? 電話の向こうの方、全員ビックリすると思いますけど?」

結局、ワタクシの好きにさせてもらえることになった。


そこにワタクシのスマホが鳴り始めた。


「あれ? ワタクシのスマホだよね?」

モタモタ確認をしている間に、ジャンジャン鳴り続けている。

「えっと、通話ボタンボタン」

押すところを迷っている間に、さらに時間が経過。


「はいはーい。まいまいです」
と電話を取ったときにはすっかり、スマホは切れていた。

また、やってしまった。

今やコール中に取れたらよくない? すごくない? と思うワタクシ。

何回コールしたらとる。
そんなこだわりの固定電話のお作法が、懐かしく、そして神技にすら感じてきた。




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