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Bruce Springsteen 『The Wild, The Innocent & The E Street Shuffle』

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🎧 Bruce Springsteen 『The Wild, The Innocent & The E Street Shuffle』

"The BOSS"ことBruce Springsteenが1973年にリリースした2ndアルバム。

出会い

1980年にリリースされた5thアルバム『The River』をサウンドストリートで聴いた。DJの渋谷陽一さんが歌詞を説明してからタイトル曲の「The River」をかけてくれた。兄とドライブで行った川で知り合った女の子と恋に落ち、10代で彼女が妊娠し質素な結婚式をあげた二人がその後不況で苦しい生活を送るという、田舎で育った私には聴いててつらくなるような悲しい歌だったのを覚えている。その中で印象に残った一節。

Is a dream a lie if it don't come true
Or is it something worse
かなわなかった夢は嘘なのか
それとももっとひどい事なのか。

今の私には刺さる一節だが当時の印象は"辛気臭い歌を唄うロッカー”だった。

勝手なイメージ

このアルバムの次にリリースされた『Born To Run』でスターとなり『The River』の後にリリースされた『Born In The USA』『Nebraska』で人気を不動のものとしたBruce Springsteen。私の勝手なイメージは、アメリカ南部あたりのRedneck(白人貧困層)の代弁者だったが、いまや大統領選、戦争、テロ事件など政治的なメッセージも発信しアメリカ国民の代弁者のイメージだ。

アメリカ

カンザス出身の友人に聞くと日本はどこに行くのも近くていいらしい。車で行く近いと思う範囲は片道4時間とも言っていた。日本の約30倍の面積に約3倍の人口しか住んでいないアメリカ。街から外に出ることもなく一生を終える人がいる国の人が作る映画や音楽が、ちょっと電車に乗ればどこへでも行ける日本人の私に理解できるのだろうかと思ってしまう。Pearl Jamの曲「Elderly Woman Behind The Counter In A Small Town」(小さな街のカウンターの裏にいる年配の女性)の一節

I changed by not changing at all
Small town predicts my fate
Perhaps that's what no one wants to see
I just wanna scream hello
何ひとつ変わらない事で私は変わってしまった
小さな街が私の運命を見通してるの
たぶんそれは誰も見たくもないもの
私はただハロー(ここにいるよ)と叫びたいの

このアルバム

ニューヨークにほど近いニュージャージー州にある海岸沿いの小さな町の出身。本人曰くこのアルバムは「半分の曲はニュージャージー州と、俺達の街角の周りについての曲で、残りの半分はニューヨークに関する俺のロマンティックな幻想さ」とコメントしている。『Born To Run』以前のアルバムを聴いた事がない方は、このアルバムを聞くと少し驚くかもしれない。ロックンロールはもちろんファンク、R&B、ジャズなど現在のBruce Springsteenのイメージとは少し異なる曲(曲調)や長尺の曲もある。

"辛気臭い歌を唄うロッカー”のBruceはいない。ひげモジャでニットの帽子を被った彼は都会育ちのかっこいいシンガーだ。48年前と現在の彼を比べる事はナンセンスだが、見た目や年齢の違いだけではなく今よりも音楽を楽しんでいるように聞こえるのは気のせいだろうか。このアルバムを聴いていると、The Bossというたいそうな肩書を背負わされた現在のご本人は気楽に音楽を楽しむ事が出来てないんじゃないかと時々気の毒に思う。


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