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脳卒中後の歩行における歩幅非対称性による影響は?


こんにちは!
理学療法士をしているyukiです。
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本日の論文はこちら↓


この論文についてです!
掲載雑誌:Gait & Posture, 2011
Impact Factor:2.349
文字数:5734文字
本noteの参考文献数:24本


脳卒中後の歩行において、麻痺側と非麻痺側における非対称性はよく観察される問題で、臨床でどのように介入していくべきか、悩む方も多いのではないでしょうか?

本日の論文は、脳卒中患者における歩行の非対称性に対する歩行分析を行った研究になります。

脳卒中後の歩行分析を深めて臨床で活用頂けると幸いです。

では、早速目次です!

はじめに

(起承転結)

・脳卒中後片麻痺患者は、健常者に比べて歩行が遅く、快適歩行速度は、機能的状態や生活の質に関係するため、リハビリテーションの結果を測る指標で重要(1)。
・しかし、非麻痺側による代償運動で効果的な快適歩行速度が行えるため、歩行速度だけでは片麻痺側の歩行能力を測る信頼性の高い指標とならない。
・歩幅の非対称性も歩行能力の指標として用いられるが、歩幅の非対称性は歩行速度との関連性が弱く、脳卒中患者が同じ速度で歩いても、歩幅の非対称性が異なる(2-4)。
・このような対象者間のばらつきは,異なる歩行メカニズムに起因するため,歩幅の非対称性は快適歩行速度のデータよりも、基本的な障害や代償メカニズムを表す上で重要。
・歩幅を発生させる重要な要因は前方推進力であり,立脚の前後方向の地面反力(A/P GRF)によって発生し,対側肢のスイング中に体幹を前方に誘導する(5,6)。

(起承転結)

・脳卒中後の歩幅の非対称性は、推進力の非対称性と負の相関がある(3)
・麻痺側立脚時に十分な推進力を得ることができないと、非麻痺側の歩幅が麻痺側に比べ減少する。
・非麻痺側の歩幅が短い場合、足底屈筋群の障害により麻痺側下肢の推進力生成が有意に低下している(3)
・足底屈筋群は、正常歩行において推進力に重要な役割を果たす(7,8)
・片麻痺患者は、しばしば麻痺側の足底屈筋の障害を有していることが多い(9,10)。

その結果、
脳卒中患者の歩幅と歩幅の非対称性

麻痺側下肢の足底屈筋の障害と相関する(4,11)。

先行研究
・麻痺側の股関節屈筋も歩行パフォーマンスに重要(12,13)。しばしば足底屈筋の障害を補う。
・立脚後期に、股関節屈筋が脚を前上方に引き上げることで、踵接地の前に脚をさらに前進させるように作用し(13)、スイングの開始に寄与する(14)。

(起承転結)

歩幅の非対称性はこれまでにも研究されてきたが(3,4,11)、歩行力学的に類似したグループに分類して研究した内容は行われていない。

(起承転結)

本研究の目的脳卒中後片麻痺患者を歩幅の非対称性によってグループ分けし、健常者と比較して立脚中期から立脚後期の関節運動量で測定した歩行バイオメカニクスが類似しているかどうかを調べることを目的とした。

仮説

同速度で歩行する健常者と比較
・左右対称に歩く対象者 → 同じような関節モーメントとなる
・麻痺側の歩幅が長い対象者(非麻痺側と比べて) → 麻痺脚の足底屈筋モーメントが減少
・麻痺側の歩幅が短い対象者(非麻痺側と比べて) → 麻痺脚の股関節屈筋モーメントが減少する


対象と方法

対象者:慢性期脳卒中患者55名(年齢61.2±11.4歳、発症後5.3±5.7年)
対照群として年齢をマッチさせた健常者21名
対象者属性:
1. 脳卒中による片麻痺
2. 著しい下肢痛、四肢拘縮、感覚障害がない方
3. 補助具を使用して10m以上の自立歩行が可能な方
4. 日常生活で歩行を行っている方
5. 心血管障害がない方

除外基準:
1.整形外科的疾患や神経学的疾患がある方
研究手順
・トレッドミル上での歩行を実施。30秒を計3回。0.3秒、0.6秒、0.9秒で実施した。
・安全面への管理としてハーネスが使用された。
・12台のカメラを用いて3次元運動を評価した。
データ解析
・Visual3D(C-Motion, Inc., Germantown, MD)を使用。
・TStとPSwにおける関節運動で、股関節、膝関節、足関節の各関節モーメントを計算した。
・推進力の定量化として各歩行周期の床半力の前後方向(AP)を算出した。
統計解析
PSR(麻痺側の歩幅を麻痺側と非麻痺側の歩幅で合計して割ったもの)により、高位、対称性、低位の各グループにわけた。
高PSR群(非麻痺側の歩幅より麻痺側の歩幅が長い)
対称性PSR群(左右足のバランスが対称である)
低PSR群(非麻痺側の歩幅より麻痺側の歩幅が短い)

・統計解析には、Kruskal-Wallis検定に事後解析を行い、評価した。

結果

55名の対象者のうち、
低PSR群(麻痺側歩幅が短い)が9名
対称性歩行(対称性PSR群)が17名
高PSR群(麻痺側歩幅が長い)が27名
であった。

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