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酔いどれ男のさま酔い飲み歩記・年末SP~コロナ禍を振り返る①

コロナ禍以前の生活が戻りつつあるが、まだ完全ではない。新型コロナは終息したわけでなく、今はあくまでも「withコロナ」なだけ。でも、飲み歩くのに有形無形の制約がなくなったのはありがたいことだ。

振り返ると、新型コロナが社会問題化した2020年3月から、5類に移行する2023年4月までの約3年間で、外飲みしたのはたった3回。自己抑制していた部分もあるが、ずいぶんと窮屈な思いをしてきたものである。

2024年こそ、本腰を入れた飲み歩きを再開させたい・・・そんな思いをこめつつ、年末スペシャルとして、コロナ禍での外飲みについて記しておこう。


第1話「寂しい酒、盛り上がらない酒」

2020年3月 上諏訪にて一人酒

新型コロナウイルスが社会問題化し始めた頃で、当時は未知だったウイルスが人々を恐怖に陥れていた。私も計画していた九州へのひとり旅を断念させられ「この先、どうなるのだろうか」と不安ばかりが頭をよぎっていたなあ。

繁華街から人が消えたという話を聞き、本当のところはどうなんだろうかと思い、自分の目で確かめるべく、3月末の週末、上諏訪へと出向いたのだ。

上諏訪駅のすぐ近くに笠森小路という狭い路地がある。飲食店が軒を連ねる場所で、いつも酔客で賑わっていた。しかし、今は人っ子一人いない。

一軒の酒場を訪ねた。ママさんが一人で切り盛りをしている小粋な店だが、予想通り客はいない。ビールを注文すると、付き出しにはワサビの葉・茎のおひたしとフキノトウ味噌がかかった冷やっこがお目見え。春先取りの旬のものはうれしい。

自家製つくねをいただきながら、手持ち無沙汰なママさんと語らう。「コロナになって、お客が全然来なくなった」「こんな調子が続くと大変よ」とボヤく。確かに、小一時間店にいたが、誰も来ない。

先行き暗たんとする思いだ。

店を出て繁華街の方に歩いてみる。が、やっぱり人の姿は極端に少ない。週末でこのありさまとは・・・事態の深刻さを痛感せずにはいられなかった。どの店も開店休業状態になっている。飲食業界の先行きが心配だ。

もう一軒、老舗の鮨屋を訪ねた。広いカウンターに先客は2人だけ。先客とは反対側のカウンターの隅に座り、刺身を切ってもらう。女将さんは「出歩く人が全くいませんね」とつぶやく。静かに飲む一人酒は好きだが、静かすぎるのはいかがなものか。

美味い酒や肴を楽しんでいるのに、ちっとも酔わないし、テンションが上がらない。たった2軒で切り上げて上諏訪を後にする。

しばらくして、国が「緊急実態宣言」を発令し、外飲みへの道が閉ざされてしまった。

2021年1月 地元にて友人酒

緊急事態宣言と蔓延防止対策に振り回された2020年が明け、高校時代の友人と再会する機会を設けた。「短時間の昼酒」という限定条件下で飲むことにしたのだ。

訪れたのは和食のチェーン店。日曜日だったので、店内にはそこそこお客がいたのだが、その割には静かだ。というのも、あまり話し声がしないからである。国が「マスク会食」などというナンセンスな呼びかけをしていた頃だったな。

仕切りのあるテーブル席に案内され、まずはビールを注文。つまみは刺身盛り合わせやワカサギの天ぷら。ビールを飲み干した後は日本酒をチビチビと飲む。友人も「家族以外と飲むのは久しぶり」とのこと。いずこも同じ境遇だな。

コロナ禍前とは違い、互いにペースは上がらないものの、久々に会ったので話題は尽きない。酔いが回ってくると、だんだん話し声が大きくなっていたらしい。気がついたら、店員がツカツカと近づいてきたのだ。

「もう少しお静かにしていただけませんか」。

飲んでも騒げない・・・これじゃあ盛り上がることも無いな。店を出た私たちはファミレスで軽くワインを飲み、まだ明るいうちに家路に着くことになった。

これ以降、外飲みの機会はパッタリ消え、2年が過ぎ去ってしまうのだった・・・
(第2話は次週27日に掲載予定です)

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