見出し画像

高校生と演劇教育 第8回(最終回)レポート テーマ「高校生と演劇教育にとってこれから必要なこととは?」

いよいよ「高校生と演劇教育オンラインイベント」の最終回を迎えました。第8回のテーマ「高校生と演劇教育にとってこれから必要なこととは?」

今日は最終回ということで、これまでのイベントでどのようなことが語られたのかをふり返り、今後必要なことを考える回でした。そのために今日のイベントの前にこれまでこのnoteに書いてきたレポートを読み返しました(以下、参考までにそのURLを)。

・第1回(5/20)演劇の授業と部活ってどう違うの?(https://note.com/mycoffeetime/n/n0ae52b7e8435
・第2回(6/17) 演劇の授業ってどこから始まったの?(https://note.com/mycoffeetime/n/n57b4f1aee1d1
・第3回(7/1) 演劇の授業では何を学んでいるの?(https://note.com/mycoffeetime/n/n03e0cedfc726
・第4回(8/19) 演劇の授業では何をやっているの?(https://note.com/mycoffeetime/n/n55ba69e5bcf0
・第5回(9/16) そもそもなぜ「高校生が」演劇をやるの?(https://note.com/mycoffeetime/n/n8aebdd7722f9
・第6回(10/21) そもそもなぜ「演劇」なの?(https://note.com/mycoffeetime/n/nc7bd54967593
・第7回(11/18) 高校生と演劇教育のこれから(https://note.com/mycoffeetime/n/n91548aac93f2

うん、おもしろい。対話と創発(参加者同士がお互いに触発し合い新しい何かが生まれている)がありました。これまで参加してくださったみなさまのことを思い出しました。

本日も自己紹介から。といってももう常連さんばかりだったので、近況などを少しお話してもらいました。ありがとうございました!

本日の最初は、私がこのイベントをどうしてやりたいと思ったのか、という企画意図の確認から始めました。毎回お伝えしていた内容ですが、あらためて。

■企画意図
・自身が携わってきた高校における演劇の授業について、多くの人と語り合いたかった。
・高校の授業ができてから40年以上経っているのに、実践がいまだ手探りな状態であることを解消したかった。
・とはいえ、手探りな状態を継続しつつも、これまでの蓄積を、それぞれの活動に生かすためには、どうすればいいのか、考えたかった。
・些細なことでも相談できる高校生と演劇教育に関するネットワークを作りたかった。(大きな望み!)

でした。今振り返っても、やりたかったことはできたなと感じています。しかし、まだまだこれからだな、ということも感じました。

そして、次は各回ふりかえりのための本日の資料を提示しました。


本日の資料

一回ずつのテーマと内容、そしてnoteのレポートから「今後の論点になりそうだった部分の抜粋」を紹介しました。その論点がでてきた文脈も踏まえてお話しました(もちろん、もっと深い内容はたくさんあったので、各回note
をぜひ参照してください)。

その上で、今日の問いかけをしました。


問いかけ

これは、私自身の今後のためということもあります、というお話もしました。何かできないか、でも何をみんなは必要としているだろうか、と。

また、今日は最後ということなので、このイベントに参加した感想も含めてお話していただければと、お願いしました。

まず、これまで全部参加してくださっている演劇の授業を非常勤で担当されている方から、感想をいただきました。

この方は第3回での他の参加者からの言葉に勇気づけらたのが一番印象に残っている、とお話してくださいました。ご自身が非常勤として学校に入っている演劇人という立場で授業をしてきたけど、どこか、学校という枠組みや規範になじもうとやってきた。でも、本当は演劇が持っている規範に捉われない自由さ、奇抜さのようなものを伝えたいと思っていたはず。それができていなかった、そしてそれをしてもいいんだという許しを、その時与えられた気がして、とても印象に残っている、とお話してくださいました。

第3回は演劇の授業の目的・目標がテーマの回でした。その日は演劇科を持つ高校のその学科の現在の目標を提示して、それを元に議論していました。

その目標の文言に並ぶ、こうなってほしい、という教育観が求める正しさ、規範のようなものと、一方で「演劇」が持っている特徴は矛盾しているのでは、という議論に展開したときでした。今回のレジュメにも抜粋しましたが、参加者のみなさんの中で「議論が自然に「演劇ならではの目標」がいいよね、という方向に」なっていきました。

すると、参加していた大学の先生から、

「アートは社会的望ましさに対して自由であって多少イカれてるものだと思います。学校という社会的望ましさの中のカタマリの中にあって、安全で管理されたヤクザな部分が美術や演劇や文学、音楽だと思ってます。」(第3回noteから抜粋)

というご意見が。「ヤクザな部分」というユニークな言葉で表現してくださいましたが、そのある意味奇抜で自由な表現であること、それが演劇の面白さであり良さであるよね、ということをここで再認識できました。

こうした対話の中で、参加者それぞれに印象的なことがあったのだなと思いました。

このお話を受けて、高校大学で演劇教育実践の豊富な参加者の方から、次のようなご意見をいただきました。

いいTT(演劇の非常勤講師と共に授業を担当する正規教員、チームティーチャー)と出会うことって大事ですよね、というご意見でした。

そうなのです。高校で演劇の授業を担当する非常勤講師は、演劇人が多いのが現状です。そうすると正規教員がTTとして入ります。私も公立高校ではずっとその体制でした。このTTは、ある意味その演劇の授業内において「学校的規範」を体現している存在です。規範から逸脱した行動をした生徒がいれば、厳しく注意する先生です。その先生が、演劇的自由さを管理する可能性もあるわけです。

この方は続けて、現在の学校のTT(その学校の教頭先生が担当しているようです)の先生は、自らも学校的規範とは合わないようなシーンも一緒に演じてくれるような先生であると教えてくださいました。

そういうTTの先生だと、生徒も演劇の授業での自由さを感じられて自由になっていくのだと思いました。これが「いいTTと出会う」ことということだなと思いました。

一方で、私の経験もお話しました。私は毎年のようにTTが変わっていました。その中でいいTTの先生も本当にたくさんいましたが、逆に学校的規範を体現している先生もいました。そうなったときに試されるのは、こちら(非常勤講師、演劇人)側の対応だなと経験から思っています。いかにその学校的規範を「演劇」によって和らげるか、それをしかも安全に、波風がたたないように、できるか、そしてその上で生徒たちが自由になれるか、そうしたことに徹底して気をつけたりしていました。

いいTTがいるといいのはもちろん、でもそうじゃない時にどう対応するかは、演劇の授業を担当する講師一人一人が、自分の演劇観や教育観と合わせて考えていく必要があるのかなと思ったりしました。

そうしていると、チャットの方にご意見が届きました。本日参加の現在高校で演劇の授業を担当されている若手演劇人の方からのご意見です。

「これから必要なのは、演劇教育を継続性のあるものにするための全てのことだと思っています。
 受けた生徒への追跡調査、体系化されたカリキュラムのようなフォーマット(クローズドではなくオープンであることが前提)、「分かりやすい」証拠を集めて、続けるための説得材料にする、という軋轢が生まれそうなことが必要に気がしてきました。
 時間と手間が凄まじいことが目に見えます…」

「継続性のあるものにするための全てのこと」。おおお、はげしくそうですね!とうなずいてしまいました。私は継続することの大事さ、は身をもって体験しています(私が以前担当していたある高校の演劇の授業は今はなくなっています。それは担当者がいなくなったからでした。。。)。

ここで書かれている「受けた生徒への追跡調査」。これは研究的には難しいところがありますが、大事ですよね。

すると現在大学で演劇の授業の調査も担っている先生は、現在受講者のデータはある、とのこと。これをどうひろっていくか、自分の任期でできるのか、という不安があると述べていました。

大事な作業ですよね。そしてそれがいかに大変で難しいかは私も一研究者としてわかります。でもやる価値はありそうだと思いました。

「体系化されたカリキュラムのようなフォーマット(クローズドではなくオープンであることが前提)」

そうですね、必要だなと私も思います。私は高校の演劇の教科書を将来作りたいと思っているというお話もさせていただきました。
イベントの中で詳しく取り上げて話せませんでしたが、ここに書かれている「(クローズドではなくオープンであることが前提)」って大事ですよね。それを絶対にやらなければいけない、じゃなくて、こんな感じでどうですか、というカリキュラムという感じでしょうか。そういうものなら私も作りたいと思います。

つづけてチャットの方に補足コメントがのりました。
「いま演劇教育のある場所が、長期間にわたって続いていくことが、まずは重要だと思います」

続けていくこと、本当に大事です。私も続けたいし、各地で奮闘している方を応援したいと思いました。

時間と手間が凄まじい、と書いてくださいましたが、そうですね(笑)。

すると、先ほどの先生からブレイクスルーが。

「実践記録のプラットフォームが欲しいですね」というご意見が。

なるほど!!!!それいいですね!!!!と私も盛り上がりました。そういえば、私は博論を書くに当たって、高校の演劇の授業関係の実践記録は全部は集めたのでした(高校演劇の記録も少々)。その原稿を紙ベースで持っています。プラットフォームできますね!というお話になりました。

「すると、何年も前の自分の実践記録を読むことになるのか、、、」という声が。それは苦痛ですね、とのこと。わかります、私も過去の自分の実践記録は今からするとツッコミたいことが多いですからね、と応答しました。

そこで私はひらめきました!そのプラットフォームでは過去の実践記録とそれを本人が今から分析的に見た文章とを並列で載せたらどうですかね?というアイデアです。

すると「付箋でツッコミをつけるってことですね」というお言葉が。

それいいですね!!!と盛り上がりました。するとチャットからこんな返信が!

「ぷらっとフォーム、めっちゃ欲しいですね…!!!!まだ経験が浅いけど学びたい身としては何がツッコミポイントなのか、わかるとすごくありがたいですよ!」

とのこと!なるほど!そのツッコミが新しい演劇教育の実践家にとっての学びになるのか!!!!と興奮しました。

この件に関しては、私も何かのプラットフォームが欲しいと思っていたので、実現させようと思いました。

最後に、もう一人の参加者の高校での演劇教育実践にたずさわってこられた先生からもご意見いただきました。

自分も、実践の仕方としてこういうのがある、というような方法が網羅されたプラットフォームがあればいいなと思いました、というご意見でした。

私も、このイベントの前に、自分として必要なものってなんだろう、と考えた時に、困った時に頼りになる演劇教育の方法が集約されたHPのようなものがあるといいのかなと思っていました。実践記録のプラットフォームとは思っていなかったのですが、そうした方法がわかることと実践記録も集約されているようなプラットフォームができたらいいのかもと思いました。

ここで少し時間が過ぎていましたが、終了となりました。

最後に、本当に参加してくださったみなさまに感謝しています、とお伝えさせていただいて、今後のご連絡をお待ちください!という言葉で終わりとなりました。

次に必要なことが一つ具体的に見えて、よし来年もがんばろう!と思いました。

このイベントはこれで終わりとなりますが、ここで出会ったみなさんと今後も高校生と演劇教育、あるいは広く日本における演劇教育について、これからも一緒に考えていけましたら幸いです。

本当にありがとうございました!!!!!!!!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?